韓国メディアの定説「我らが国民に変えられないものはない」についての私見・・単に政治環境が不安定なだけでは

最近、朝鮮日報が尹大統領の問題点を指摘する記事・社説を相次いで掲載しています。いくつか読んでみましたが、ユン大統領を「59分大統領」と呼ぶ人も多い、とのことでして。これは、「会議が1時間だと、自分で59分間話す」という意味だそうです。いわば、朴槿恵大統領の頃から、韓国メディアによく出てくる「疎通」関連の指摘です。相手の話も聞いてほしい、と。今回の江西区庁長選挙(日本ではほとんど報じられていませんが、韓国では与党の反応も含めて連日大きなニュースになっています)も、ユン大統領がまわりの人たちの話、すなわち「負ける可能性」についての話を聞かず、必要以上に『ユン大統領対イジェミョン野党代表』という図式を作り上げてしまった、などなどの批判もありました。

朝鮮日報としては、このままだと来年の総選挙でもまけるという危機感によるものでしょう。ただ、その中に一つ、こちらはヨンナム大学政治学教授のコラム(朝鮮日報18日)ですが、「私たちの国民は傲慢な者を許さない。どんな人だろうと、権力の座から引きずり下ろす」という内容です。李承晩も朴正煕もそうだった、ということですが・・果たしてそうなのでしょうか。朴正煕大統領は部下の銃弾に倒れましたし、李承晩の場合は不正選挙のやり過ぎで得票率90%超えてしまった(操作を命じられた部下たちが、忠誠を示すためにやりすぎてしまったという話もあります)のが原因でした。記事には書いてありませんが、朴槿恵氏の「ろうそく革命」もそうだったのでしょうか。いろいろ違和感があったので、ちょっと突っ込んでみたいと思います。まず、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・まず大統領の国政スタイルが問題だ。マスコミはもちろん与党・野党、一般国民も同じだ。具体的には、傲慢と不通(※疎通しない)だ。ユン大統領は受け入れないだろうけど、大統領の師匠とも言えるソンサンヒョン前ソウル大教授も「国政方向転換」として「謙遜で自分を下げ包容すること」を助言した。特に人事が問題だ。国民は人事で政治を判断する。人事だけで民心が集まることもある。ところがこれまで長官候補者だけで5人が落馬した。大統領は責任を取ろうとせず、最後まで押し通そうとした。所信と信念も重要だが、大統領は国民の目の高さから見なければならない。私たちの国民は傲慢を最も許さない。傲慢だと感じた瞬間、誰でも権力の座から引きずり下ろす。国父李承晩、貧困を追い払った朴正煕元大統領さえ許さなかった。

民生に対する鈍感さもそうだ。経済は本当に難しい。年所得の70%以上を債務返済に使う人が約300万人で、7人のうち1人だ。単純な経済指標を超えて、庶民が感じる生活物価は深刻だ。秋夕での話題も物価がトップだった。ところが、尹大統領は今年に入ってもまだ理念を強調している。「一番重要なのが理念」であり、「理念がないと実用もない」という。国家アイデンティティを立て直すという意味だ。しかし庶民は毎日の生活に忙しい。国政の基本は経済だ。民生も、安保も経済だ。民主化後の選挙問題の70%以上は経済問題だった。食べて生きるだけで与党を支持し、そうでないと審判した。とてもシンプルだ(朝鮮日報)・・>>

 

経済関連はともかく、まず、コラムで言う『引きずり下ろす』が、選挙結果によるものなら、それはそれで構いません。でも、李承晩、朴正煕氏の話が出てくるあたり、選挙の話には見えません(二人とも選挙によって去った人物ではありません)。「もっと周りの話を聞け」という指摘も分かりますが、じゃ周りに合わせればうまくいくのでしょうか。国民が選んだ大統領のはずです。しかも、傲慢かどうかというより、右か左かで決まるのが現状ではないでしょうか。経済などで揺れる一部の浮動票以外は。『あの人は傲慢(?)だ』として社会全体が盛り上がったことは確かに何度もあります。民主化デモのときもそうでしたし、朴槿恵大統領弾劾のときもそうでした。

 

でも、その結果は左派思想の政治掌握、法律的基準がはっきりしない「感情」によるもの、しかも「群集心理」による部分が大きい、ただの騒ぎとしての側面もありました。そもそも、傲慢だとする基準がよく分かりません。どこの法に「~と~は傲慢である」と書いてあるのでしょうか。いつからか、韓国メディアでは「韓国人に変えられないことはない」「日本人は『しょうがない』と思う」という比較が定説のようになりました。このコラムもまた、「変えられないものはない」という見方から出てきたものかもしれません。

余談ですが、一時広報フレーズに使われていた単語『ダイナミック』がこの表現の始発点ではないだろうか、と私は見ています。実はこれ、政権交代(金大中)の後から出てきたフレーズですので。しかし、次の選挙で自分が『傲慢でない』と思う人に票を入れればそれで済む話ではないでしょうか。その簡単なことができないから、こんなコラムで「追い出された」「銃弾で倒れた」大統領の話が何かの警告のように出てくるのではないでしょうか。国民だって、投票による「人事(大統領選挙)」に責任があるのは同じなのです。

 

 

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