時給94円の世界・・韓国の「ペジ(ダンボールなど)拾い」高齢者問題

19日、66歳以上人口貧困率関連データを紹介しました。OECD調査で40%を超えているのは韓国(40.4%)だけで、2位のエストニア(34.6%)ともかなりの開きがありました。ノルウェイなど福祉政策をメインで展開する国々があるので、OECD平均は14.2%です。そうでない国はどうしても高くなりますが、それでもアメリカが22.8%、日本が20.2%などで、30%を超える国はそう多くありません。この件について聞くたびに、やはり真っ先に思い出すのが、ペジ(廃紙、ダンボールや古紙など)をを拾う高齢者たちのことです。

旧ブログのときからこの老人貧困問題を取り上げてきました。「敬老を最大の美徳とする」という表面的な社会風潮。そして、ペジ拾いの高齢者を毎日のように目にしているこの現実とのギャップ。これは、本件だけでなく、ブログテーマ全てにかかわるものだと思われたからです。一昨日OECDデータを紹介してから、「そういえば、ペジ拾いたち関連で何か最新ニュースはないのだろうか」と少し調べてみました。すると、2022年3月のものですが、KBS(シリーズ記事その1)が実際にペジ拾いの人たちを取材したシリーズ記事があったので、それらの中から気になる内容をいくつかピックアップしてみます。

 

もっとも興味深かったのは、「統計が無い」ということです。<<・・まず、取材に参考する資料を探してみた。ところが、これといって資料がなかった。これまで政府レベルの実態調査がたった一回もなかったのだ。民間研究でも、全国単位の研究調査は無かった。本件に関わる高齢者が何人存在するのか、誰も知らなかった・・>>、と。2017年韓国老人人材開発院は保健福祉部と韓国保健社会研究院の「老人実態調査」を分析、全国のペジ拾い高齢者が約6万6000人だと推定していますが、2021年には急に「少なすぎるので推定値を発表しない」としている、とのことでして。市民団体側の発表だと175万人まで出ています。KBSは1万5000人という予想値を出しましたが、「これも推定値にすぎず、生計型、すなわち1日でもペジを拾わないと生活できない人たちに限られた推定になる」としています。

 

ペジ拾い高齢者たちにリヤカーをプレゼントするなど「美談」を広報する自治体もあるけど、いざその担当者に聞いてみても、管轄している区の中にペジ拾い高齢者が何人いるのか知らなかった、とのことでして。数がわからないのに、リヤカーを与える対象はどうやって選定したのでしょうか。記事は、<<・・6万から175万まであるのは、全国単位の調査が行われたことがないためだ。高齢者たちが街でペジを拾う風景が日常になってから数十年経つのに、どれだけの数なのかを誰も知らなかったのだ。これでは、彼らのための政策や制度を作ることもできない・・>>、としてきしています。

 

取材チームはペジ拾い高齢者たちにお願いして(応じてくれる人は多くなかったそうですが)リヤカーにGPSを設置、直接インタビューするなどで彼らの生活を取材しました。その結果のまとめが、こちらです。<<・・1ヶ月にわたるGPS取材が全て終わった。高齢者たちが6日間歩いた累積距離は合計743km。ソウルと釜山を往復できる数値だ。高齢者1人当たり、1日平均13kmを移動した。彼らが6日間働いた時間はすべて677時間。1日平均11時間20分ずつ働いた。ペジ拾い高齢者は、一般人の予想を超える高強度の労働を遂行していた・・

・・高齢者10人が6日間受けとったお金は、64万2000ウォンだった。1人当たりの時給は、約948ウォンになる。2022年度の最低賃金は9,160ウォン(※当時、文政権が最低賃金を大幅に引き上げ、いろいろ問題が発生していました)の10分の1水準だ・・・・私たちの社会に存在しているのに、同時に存在しない人たち。果たして彼らがこの生活から抜け出せる道はあるのだろうか、いや、この生活でもいつまで続けることができるのだろうか(KBS)・・>> KBSのこの記事は、ドキュメンタリー版【 ttps://www.youtube.com/watch?v=f2Ggk815zl4 】もあります。

 

 

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