やはりというかなんというか、少しずつ、『見えて』きました。16日に本ブログで取り上げたことがありますが、韓国建設業界施工能力16位とされる泰栄(TAEYOUNG)建設が、今朝、企業構造改善作業「ワークアウト」を申請しました。480億ウォンのPF(プロジェクト・ファイナンス)債務を満期延長できなかったからです。昨日から朝鮮日報などが報じていましたが、泰栄側は「様々な可能性について考えている」としていました。ワークアウトとは韓国の法定外再生制度の一つで、金融機関と企業が財務構造改善などを協議することです。
記事によっては泰栄建設を中堅とも大手とも書いていますが・・泰栄『グループ』は、系列会社を売却するなど、この件にグループ全体の力を注いでいました。泰栄建設だけというより、グループ全体の問題とも言えるでしょう。WIKI情報ですが、泰栄グループは資産基準で韓国財界40位です(相互出資制限大企業において2023年4月23日時点)。財界40位のグループが総力を注いだのに、建設会社がPF債務に耐えられなかったこと。もっとも注目すべきはここかもしれません。また、今回の件で、他の建設大手と金融機関に影響が出るのはほぼ間違いないでしょう。
これからは満期延長などにおいてさらに慎重になるでしょうし、それが業界全般に広がるのは言うまでもありません。まだ泰栄建設のような具体的な動きがあるわけではありませんが(系列社を売却して資金確保する企業なら多いですが)、ロッテ建設、現代建設、コーロン建設、新世界建設のリスクも指摘されています。まだワークアウト申請前のものですが、デジタルタイムズは、「泰栄建設がワークアウトを申請する場合、建設業界全般への影響が避けられない見通しだ。泰栄建設以外にもPF偶発債務リスクがあるとされる企業が相当な数あるうえ、不動産市場の低迷が当分持続する見通しであり、建設業界全般にリスクが拡散する可能性がある」としながら、いくつかの建設会社を挙げています。
9月末基準国土交通部施工能力評価上位16の建設会社の合算PF保証規模は28兆3000億ウォンです。施行会社(プロジェクト総括会社)の資本に余裕があるとなんとかなりますが、殆どの場合はそうではないので、建設会社が債務を保証します。その保証の規模と自己資本の比率が、ロッテ建設(212.7%)、現代建設(121.9%)などなど、とのことでして。上位16社のPFは、60%が1年以内に満期である、とも。1月頃に韓国不動産関連ニュースでかなり話題になった案件ですが(本ブログでも1月に取り上げたことがあります)、「ちょっとした都市規模」と言われた「オリンピックパーク・フォレオン」団地、一般的に「遁村住公の再開発」とされていたマンション団地があります。
思ったほど売れなくて関連企業すべてたおれるのではないかと言われていましたが、その団地の建設会社がロッテ建設です。以下、聯合ニュースの関連記事を一つ引用します(「次はどこだ・・」という題です)が、特にコーロン建設(コーロングローバル)と新世界建設あたりのリスクが高い、とのこと。これらも結構大手です。別ソースまで合わせると、ロッテ建設、コーロン建設、新世界建設、GS建設、トンブ建設など、大手企業も資金流動性があやしいとされています・・繰り返しになりますがまだ具体的な動きが出ているわけではないので、様子見といったところでしょうか。以下、聯合ニュースの関連記事を<<~>>で引用して、そのまま終わりにしたいと思います。
<<・・施工順位16位の泰栄建設が不動産プロジェクトファイナンシング(PF)による流動性問題を解決できず、28日、ワークアウトを申請し、建設業界に危機感が広がっている。不動産景気の悪化による分譲市場の低迷で全体的に23兆ウォンに迫る不動産PF偶発債務が現実化し、他の建設会社も連鎖的に危機を経験するのではないかという懸念が高まっている。実際、不動産PF問題で流動性に問題が生じる可能性があると論じられる建設会社が少なくない状態だ。さらに、泰栄建設のワークアウトにより、資本調達市場が不安になる可能性も業界を緊張させる要素だ・・
・・2020年以降ずっと13~17位だった泰栄建設がワークアウトを申請したのは、結局は不動産PFによる債務問題のためだ。建設業の場合、8月末基準PF偶発債務は22兆8000千億ウォンだ。 韓国企業評価の有効等級を保有した21の建設会社を対象に9月に集計した結果だ。問題は、本格的な調整局面に入った不動産市場が来年も下落傾向を続けると見込まれるという点だ。市場状況が改善されなければ、不動産PF偶発債務で他の建設会社も流動性リスクを経験するしかない。実際、コーロン・グローバル、新世界建設などもPF偶発債務によるリスクの可能性が取り上げられている。
韓国企業評価は9月発表した報告書で、コーロングローバルの(8月末基準)未着工PF偶発債務規模は6121億ウォンに達し、保有現金性資産は2377億ウォンに過ぎず、PFリスクが現実化する場合、自己現金による対応が難しいと明らかにした。新世界建設の(※PF偶発債務と自己資本の)負債比率は467.9%で、泰栄建設とともに負債比率が400%を上回る・・・・ある建設業界関係者は、「泰栄建設といえば(資金力が)堅実な企業だと評価されていた。最近になって突然、流動性リスクの話が出てきた」とし、「泰栄がワークアウトを申請するほどなら、事情が似ている他の建設会社も申請するしかないのでは」と話した(聯合ニュース)・・>>
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