韓国の家計債務、元利均等返済ではなく、毎月「利子だけ」支払う「満期一括償還方式」はどれくらいあるのか

韓国の家計債務の特徴の一つに、「満期が来るまで利子だけ返済する人が多い」ことがあります。すなわち満期一括償還方式のことで、韓国では「満期一時償還」と言います。2022年秋あたりから、家計債務の返済に所得の多くを使う人たちが話題になりました。家計債務のある世帯の場合、平均DSRが約40%家計債務がある世帯の場合、平均で所得の40%を債務の返済に使っている)とのことでして。家を購入した人たちの場合は60%という、とんでもない数値がいろいろと出てきました。でも、個人的に、もしそれが元利均等返済方式(元金も返済し続ける)なら、それでもまだいい方ではないだろうか、と思っています。

もともとは『ローンでマンションを買っておくと、そのマンションは値上がりするに決まっているから、後で売って、ローンを返し、他に住む家も買う(などなど)』を前提にしての動きなので、わざわざ元利均等返済にする必要がないという考えが強いわけです。普通、『請約(マンションを購入できる権利のことで、普通は抽選)』にあたると、急にその人は消費を増やすと言われています。そのマンションもローンで買うわけですが、まるで老後がすべて保障されたような考えのもと、むしろ消費を増やす・・そういういパターンにおいても、満期一括償還のほうが望ましい、そう思われているのかもしれません。

 

前から、この問題は指摘されてきました。特に信用ローン(担保なしで組んだローン)において、満期一括償還が多くて問題だ、と。いまはどれくらいの家計債務が満期一括償還方式なのか、ちょっと気になりました。結論から書きますと、もちろん確認できる範囲内でのことでしょうけど、京郷新聞の2023年7月17日の記事によると、満期一括償還方式は家計債務全体の53.7%です。「普段は返済しないが満期時に一度に返す満期一括返済方式のローンが多すぎるのも指摘された。2022年9月基準、全体の家計債務の半分を超える53.7%が満期一括償還方式だ」、と。記事にあるグラフを見てみると、2016年に46.7%だったので、増えています。2021年(54.1%)から2022年9月(53.7%)には少し下がっていますが、これはこの頃からローン審査が強化されたからでしょうか。

 

2018年データが引用されていますが、満期延長において、住宅担保ローンの満期延長率は58%、信用ローン(担保なし)は87%だった、という記述もあります。見方にもよりますが、満期が来てもちゃんと返せない人が多いという意味です。気のせいかもしれませんが、27日にお伝えした「エバーグリーン」化がここでも行われているのかもしれません。記事は韓国銀行の報告書を引用、「信用ローンの場合、償還するよりは満期到来時に再延長している」、「信用ローンを保有した借主は、定期的に『借り換え』のリスクがある(延長できない可能性がある)」 としています。12年前、まだ家計債務が1000兆ウォンを超えてなかった頃の「イーデイリー」の記事によると、当時の家計債務の約半分は信用ローンで、その9割は満期一括償還方式だった、とのことでして。

 

これは第1金融圏だけのデータですが、第2金融圏(貯蓄銀行など)、第3金融圏(貸金業者)は金利は高いけどローンのハードルは低いので、もっと多いかもしれません。いまは新規貸出にものすごく慎重になっていると聞きますが、12年前ならそんなこともなかったでしょう。さすがに今は元利均等返済方式の人たちが増えたと思いますが(政府がそういう誘導政策を行ったと聞いています)・・「信用ローンに限っての、満期一括償還方式比率」が最近どうなっているのかは確認できませんでした。

ただ、信用ローンとは範囲が異なりますが、傳貰(ジョンセ、家を借りるシステム)保証金に関する内容は確認できました。傳貰保証金は契約期間(普通は2年)が終わると返してもらう前提なので、満期一括償還で借りる人が多いです。京郷新聞の別の記事(2023年11月9日)によると、傳貰保証金用のローンだと用途が確認できるローンの場合、73%が満期一括償還方式です。言い換えれば、大家さんが保証金をちゃんと返してくれないと、どうやって満期一括償還するのでしょうか。先の「傳貰用だと確認できる」だけでも、160兆ウォンを超えています(第1金融圏だけ)。全体としては、800兆ウォンとも1000兆ウォンとも言われていますが、『個人間の取引』とされ、公式集計はまだありません。

 

 

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