韓国で大きな話題になっている「医師スト」、2000年代になってからもう5回目。「政府は医師に勝てない」という発言も

まだ解決の糸口が見えてこない、韓国の「医師スト」。医科大学の増員(2000人)案で、主に専攻医(研修医)が辞職、医療現場から離れてしまった本ブログではあまり集中的には取り上げず、どちらかというと社会の認識の話を紹介したりしました。医師が診療現場を意図的に離れるというのは何があっても同意できませんが、政府もまた、なんで事前にもっと話し合いをしなかったのか、初期から『業務開始命令(特定団体が業務を再開するよう命令できる制度)』、医師免許停止を言い出したのは果たして良い対策だったのか、いろいろ疑問が残ります。関連した各記事の中でも、個人的に2月25日に紹介したCBSの記事(家門が栄える)がもっとも的を射ていると思っていますので、未読の方はどうぞ。

そんな中、医師会会長出身の医師が、「政府は決して医師に勝てない」と発言して、これもまた話題になっています。もう完全に勝ち負けの話になっているのもそうですが、の記事によると、実際、ソウル新聞のシリーズ記事よると、大きな案件だけ調べてみても、いままで医師側が「9戦無敗」だそうでして。記事に明記されているのは8回なので、本ブログの題は8にしました(現在のもので9戦でしょうか)。医師ストという現象だけでも、日本はもちろん世界的に「不思議現象」扱いなのに、それがいままで何度もあったとはどういうことか、記事内容を簡単にまとめ・部分引用してみました。ちなみに、なんと新型コロナ禍のときも、同じ動きがありました。以下、<<~>>が引用部分です。

 

まず、記事最後の部分にまとめられている1955年~1989年の部分ですが、記事に書いてない内容も少し書き加えて、まとめ直してみます。1955年、併合時代に作られた「特定地域でのみ診療できる医師」、寒地医師の正規免許発給に反対するための集団行動がありました。これは、医師の正規免許をもっていない人でも、医師がいない僻地に限って、一定範囲内の診療ができるようにしていたものですが、1955年、それを正規医師にしようという話がありました。結局正規医師にするという話はなくなりましたが、制度そのものは1986年まで続きました。1962年には、「医師免許税」への反対。

1966年には、公務員を保健所の所長にできるという内容の法改正案反対。このときは、関連法律が破棄されました。1971年、インターン・レジデント処遇改善要求。1989年には医療費用調整などです。韓国で全国民医療保険が始まったのがこの1989年からです。当時、医療関連の医療保険部分が安すぎるという内容でした。記事によると、「すべて医師の勝利で終わった」、とのことです。ここからは引用してみます。

 

<<・・2000年、医薬分業ストライキの主役も研修医だった。診療と処方は医師が、医薬品調剤は薬剤師が引き受けるようにした薬事法改正案が1999年12月国会を通過、病院での薬処方が不可能になると、医師団体は翌年、5回集団行動を行った。医師の反発にも、政府は2000年8月に医薬分業を強行した。しかし、医師たちのために、「医科大学定員10%減縮」を受け入れた。医大定員は2003年に3253人、2004~2005年に3097人と徐々に減少、2006年に3058人に凍結した。

研修医、開院医たちは2014年、朴槿恵政権が推進した遠隔医療に反発し、同年3月に集団休診を強行した。遠隔医療は今でいう「非対面診療」のことだ。医師団体は、遠隔医療を施行すれば、誤診で患者の安全を脅かす可能性があると主張した(※当時はなかったことになりましたが、それから4年後、新型コロナ禍などで部分的に可能になりました)・・・・2020年、新型コロナ禍の状況でも、研修医の80%が医大増援に反発して集中治療室と救急室を空にした。「社会的距離置き(※ソーシャル・ディスタンス)」措置を3段階に上げるかどうかの議論が出ているほど、当時は新型コロナが深刻だった。当時、文在寅政権が発表した医大定員拡大案は、年400人ずつ、10年間で4000人を増やすというもので、今より規模は小さかった(ソウル新聞)・・>>

 

ある意味、韓国の医療システムが持つもっとも弱い部分かもしれません。余談ですが、韓国の総合病院(大学病院)の診療は、研修医(インターン、レジデント)が30~40%を担当しています。日本など他の国は10%~20%です。なんでこんなに多いのかというと、「大型病院が、週80時間、研修医を働かせ、時給1万5200ウォンの安い労働力に依存して病院を運営しているから」です(ソウル新聞の別記事より)。「2021年保健医療人材実態調査」によると、上級総合病院全体医師の37.8%が研修医です。研修医の場合、特別法により週80時間も仕事を「させる」ことができ、年俸も平均7000万ウォンで、高いっちゃ高いですが、専門医の場合は「法律上の勤労時間が相対的に短く、年2億~3億ウォンを与えなければならない」ので、病院は研修医を増やしているわけです。

 

 

おかげさまで、新刊「韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)」が発売中です(2023年12月21日、アマゾン発売日)。詳しくは、下記のお知らせをお読みください。ありがとうございます
・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>です。若い人たちと高齢の人たち、女性と男性、「私たち」と「それ以外」、こっちとあっち、私と他人、豊かな人たちとそうでない人たち、様々な形で出来上がった社会の壁、「分断」に関する話で、特に合計出生率関連の話が多めになっています。・新刊<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。「韓国人として生まれた」より「日本人として生きる」を上位の概念にしたのはなぜか。なぜ名前を変えなかったのか。一つ一つ、自分なりの持論を綴りました。 ・刊<韓国の借金経済(扶桑社新書)>、<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。