本ブログでは取り上げていませんが、先月末頃、2024年1月の出生児数が結構話題になっていました。韓国では、1月~3月(韓国で言う「1分期」)に出生児が集中します。特に、1月にもっとも多いと言われています。幼い頃は、数ヶ月でも身体能力が結構伸びるので、小学校で良い点数が取れる(可能性がある)からです。しかし、2024年1月の出生児数は2万1442人で、2023年1月(2万3230人)に比べて7.7%も減少しました。このままだと、今年の合計出生率は0.6人台(予想では0.68人)になる可能性が高い、というかほぼ確実だと言えるでしょう。
そんな中、「マウント」など核心とも言えるいくつかのワードとともに、韓国の少子化問題を「個人的な経験」とともに書いた記事がありました。JBPressの記事(ヤフー版)で、韓国に住むライターさんの記事です。もちろん日本語記事ですので、引用部分以外にも興味をお持ちの方は御覧ください。記事は、マウント競争しないとどうにもならない状態になっているとしながら、それは「前の前の世代からそうだった」、としています。過剰な競争を、お金にモノを言わせて、親が自分の子にさせてきたから。そして、10年ぐらい前から、その子供の世代も結婚して、自分の子供を育てることになり、他人が羨むくらい莫大なお金がなければ幸せになれないと思いこんでしまっている、とも。
しかし、「一部の資産家や、インフルエンサー的に成功した人のような子育て」ができる人はそういません。だから、「それなら、出産はあきらめよう」と思ってしまう、と。記者さんはこれを「信じられない話であるが、事実」としています。実情はこうです」としています。実例として、こういう話が紹介されています。「夫の同級生は、30歳を過ぎてやっと公務員試験に合格して社会人になった。韓国の男性は1年6か月兵役の義務があるので、どうしても自立が遅くなる。その同級生が結婚したのは38歳で、今は小学生の子供が一人いる。主人が言うには『あいつは公務員だったから、お金がなくてもギリギリ結婚できた。今は公務員でも親にお金がなかったら結婚は難しいだろう』」。
記事はこのことを、「格付けゲームがリアル世界になった国である」としています。近くにいる『誰か』より、いい職業に就き、高い車に乗り、外見が良い相手と結婚する、その競争がすべてある、と。それはあってはならないことだと分かっている人でも、その競争をやめたら、その場で『失敗した』ということになってしまうから、ただただ続けるしかありません。特に個人的に印象的だったのは、「幼いころからそのように教育されているので、やめられないのである」、という一行です。実はこれ、私も同じことを原稿に書いたばかりです。「『そういう』社会で生まれ育ったから、一般的には『そうなる』のは当然ではないか』と。
記事を読んで、関連した話として思い出したのが、ソウル大学保健大学院ジョヨンテ教授(人口学)の「完璧な親シンドローム」です(2021年7月3日CBSラジオ)。子を生むことが、その子になにかすごくわるいことをしてしまうような気がする、だから、『ボクが考えた最高のお父さん』のようになって、それから結婚するまたは子を作ろうとするけど、それがうまくいくはずがない、という内容です。教授は、番組進行者の「私が聞いた話ですが、子を産むことが、『自分の子に、こんな世の中を生きるようにするなんてできない』とのことでした(が、これについてどう思われますか)」という質問に、こう答えています。引用して、そのまま終わりにしたいと思います。
「心理的にこういうのもあります。青年たちは、自分自身が完璧な親でなければならないと、『完璧な親 シンドローム』なんです。結婚、そして結婚してから子に与えるものに対する期待値があまりにも高いわけです。おかしくもないでしょう。教育水準とか高いですから。だから、自分自身が完璧な親になれるまで、ただ待ちます。その時点ですでに結婚できる可能性も、子を産む可能性も低くなります。その完璧な親になれる人は、そういませんから。結局は、親が助けてくれないと、そんな存在にはなれません・・・・結果的には、完璧な親シンドロームで期待値ばかり高くなり過ぎで、親が私に相応の分を与えてくれないと、結婚も子を産むこともできなくなる、そんな状態になります。さすがに、これはちょっと・・」
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>です。若い人たちと高齢の人たち、女性と男性、「私たち」と「それ以外」、こっちとあっち、私と他人、豊かな人たちとそうでない人たち、様々な形で出来上がった社会の壁、「分断」に関する話で、特に合計出生率関連の話が多めになっています。・準新刊<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。「韓国人として生まれた」より「日本人として生きる」を上位の概念にしたのはなぜか。なぜ名前を変えなかったのか。一つ一つ、自分なりの持論を綴りました。 ・既刊<韓国の借金経済(扶桑社新書)>、<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>も発売中です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。