また「天動説」を取り上げる主張が出てきました。世界が私たちを中心に回っているわけではないという趣旨の主張です。4月18日に本ブログでもほぼ同じ趣旨の主張を「長ネギ」関連も含めて紹介したことがありますが、今回はまた別の人によるものです。左派政権のときにこのような主張が出たことなら何度かありますが、仮にも保守とされる政権でこんな話がここまで出てくるのは、ちょっとめずらしい気もします。今回は東亜日報系列「新東亜」寄稿文で、米国のシンクタンク「外交政策研究所(The Foreign Policy Research Institute、FPRI)」でユーラシア・フェローとして活動中のホン・テファ氏によるものです。長いので、さっそく<<~>>で引用してみます。
<<・・「朝鮮半島問題は、米国の選挙の核心案件である」という考えは、韓国が世界の中心だとする前提が必要になる。天動説とでも言おうか。最近もこのような考えを基にした主張が出ている。韓国が米・中の間でバランスを取る外交を通じて、両側から実利を得ることができるという見解が、その代表的なものである。韓国が米中対立を制御でき、米国も中国もそんな韓国の外交を容認するだろう、という主張も見られる。国際情勢に基づく主張というよりは、なにかの『信じる』の領域に近い・・
・・私たちの天動説は、南北関係中心の外交政策で明らかになる。いままでの政権は、対北政策を他のすべての外交問題より優先視した。ある程度は当然の現象だとも言える。1990年代以降、朝鮮半島周辺の情勢と国際情勢は急変した。米中関係も、日本の域内での立ち位置も、ロシアと西側の関係も構造的に変化した。しかし北朝鮮だけはいつも私たちに安保の核心問題として残っていた。政権ごとのアプローチは異なるけど、対北政策が韓国外交の核心だった理由だ・・・・問題は、その中に閉じ込められ、世界を広く見ることができなくなったという点だ。文在寅政権が発足した2017年は、米中対立が本格化し始めた時期だ。しかしその後の5年間、韓国外交は南北協力と対北制裁解除に焦点を当てた。激動する地政学の時代に、自らを限られた視野の中に閉じ込めたのだ・・
・・韓国は、各地域を区分して見る傾向がある。中東の問題は中東のことであり、ヨーロッパの問題はヨーロッパの安全保障に過ぎないという見方が強い。2020年のホルムズ海峡で危機が高まった時、政治家たちは、私たちはできるだけ避けて通らなければならないと主張した。ウクライナ辞退が勃発した時は、欧州の安保は私たちとは無関係だ、なので、南・北・ロシアが共にガス管の建設を推進し続けなければならないと言っていた。台湾リスクが私たちとどんな関係があるのか、という主張もためらいなく出てくる。しかし、各地域の情勢と安全保障は繋がっている。
特に台湾をめぐっての緊張は、韓国に直接影響を与える。国内物流量の40%以上が台湾海峡を通過する。ブルームバーグ通信は台湾の有事の際、韓国国内総生産(GDP)が23%減ると予想した。昨年には米国が台湾有事に駐韓米軍旅団級部隊の派兵を韓国政府に提案したという報道も出た。単に「関連がある」レベルではなく、まさにすべてがかかっている問題なのだ。それでも、多くの政界家たちはこの問題を見ようとしない。なぜ、外の問題にあえて関与して、中国との関係をそこなうのか、という論理だ・・
・・強大国は、地域戦略を連携した大戦略を持っている。米国は同時多発的国際安全保障問題に対応し、各地域同盟国の役割を強調する。日本は東アフリカと東南アジアのインフラ投資を日本版「インド・太平洋戦略」の軸の一つとした。北東アジアに集中する代わりに、各地域間の連携ポイントに着目し、一つの大戦略を設けたのだ・・・・オーストラリア、日本、アメリカでの外交に関する議論(※各国は、単に同盟だから支持するだけではなく、特定地域だけではなく各地域の問題を繋げて考えているという話)は、その国が合理的であり、能力があるときに行われるものだ。「世界は私を中心に回るものではなく、数多くの変数の相互作用が起こる」という現実を受け入れてこそ、可能なものだ。
しかし、国内政治は一つの成熟した合理的な個体として働いていない。外交に関連した議論さえ、漠然と「ロシアを刺激しないで」「ウクライナ事態はアメリカのためだ」などのスローガンが見られる。台湾に関する議論は、見つけること自体が難しい。「中国と台湾の両方とうまくやればいいじゃないか」「台湾問題に介入しなければ、影響を受けることもない」のような天動説が流行しているだけだ・・・・日本、オーストラリア、フィリピンなど域内米国の同盟国はこの危険を見落とさない。 日本は米国との安全保障同盟をアップグレードするとみられる。米軍太平洋艦隊に連結された米軍合同タスクフォースを創設し、対日本支援構造を強化する案が取り上げられているという。台湾有事を備え、両国間の調律を強化するということだ。韓国もインド太平洋地域で同様の立場にある国々と緊密に動かさなければならない(新東亜)・・>>
寄稿文で指摘しているのは文政権ですが、起承転結からして「いま(ユン政権)」の問題を書いているのは明らかです。ユン大統領の就任時から、本ブログは「ユン政権は、『朝鮮半島問題で強く出るから、中国関連においては例外を認めてほしい』と主張するだろうけど、日米など自由民主主義陣営において、北朝鮮問題と中国問題は同じ『側』の問題として繋がっている」という趣旨を書いてきました。この寄稿文、(引用していない部分も含めて)内容全体に同意するわけではありませんが、朝鮮半島問題と世界情勢について書いた部分が、どことなくそれと似ている気もします。
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