『親の日(5月8日)』、韓国各メディアが高齢者貧困問題を集中報道

韓国では5月8日を「オボイナル(親の日)」とします。今回、5月に墓参りに行ってきたのも、できればこの日に合わせたかったからです。結局、ピタッと合わせることはできませんでしたが。この日を前後して、複数のメディアが高齢者の貧困問題を取り上げています。やっと政府がペジ(『廃紙』、古紙やダンボールなどのこと)拾い高齢者の実態を調査、発表したこともあり(旧ブログの頃から本件を書いてきた私としては、いままで政府レベルの調査が一度もなかったことの方が驚きですが)、一般的に高齢者貧困とされる人たちの可処分所得などに関するデータもあったので、久しぶりに取り上げてみます。

OECD最新データ(2021年データ、一部2020年)66歳以上貧困率40%を超えているのは韓国(40.4%)だけです。2009年から同じニュースが確認できます。次に高い(2位)国はエストニア(34.6%)で、かなり差があります。ちなみに、アメリカが22.8%、日本が20.2%、などです。OECD平均は14.2%と非常に低いですが、これは、OECD加入国に福祉政策メインの国が多いからです。たとえば、ノルウェイは66歳以上人口の貧困率が3%台です。SBS(2023年12月19日)によると、「76歳以上を範囲にすると、50%を超えている」とのことでして。いくら高齢者に「簡単なお仕事」をばらまいて雇用率を上げても、結局はこのレベルです。

 

で、ここからはOECDではなく韓国内のデータですが、彼ら貧困とされる高齢者は、どれくらいの可処分所得があるのか。江原道民日報というローカルメディアが(データは全国のものです)この件を取り上げました。保健福祉部が「社会保障行政データで分析した韓国貧困老人の特性」について分析した内容とのことですが、「高齢者の半分ほどが貧困状態に置かれている」、「貧困高齢者の収入から、税金や医療保険料などの項目を除いた、すなわち食料品の購入や消費、貯蓄できる可処分所得は、年平均804万ウォンに過ぎなかった」、「しかも、その殆どは福祉政策によるもので、実際に自分で働いて得た収入は135万ウォンだけだった」、とのことでして。以下、<<~>>で引用してみます。

<<・・可処分所得は年間平均804万ウォンに過ぎませんでした。 また、貧困高齢者10人のうち6人が女性で、男性より20%p多かったです・・・・また、貧困高齢者の可処分所得804万ウォンの出所を把握した結果、ほとんどは年金・社会保障金のように福祉次元で与えられた収入であり、働いて稼いだ市場所得は135万ウォンに過ぎませんでした。高齢者の貧困問題は、各地域の雇用の確保と雇用の質と直結していることを示しています(江原道民日報)・・>>

 

次は、ペジ拾いたちに関する話です。先も書きましたがやっと政府レベルの実態調査がありましたが、結果は「ペジを拾う65歳以上の高齢者は4万2000人で、平均1週間に6日、1日5.4時間拾って月15万9000ウォンを稼いだ」、ということです(アジア経済)。一部の市民団体が「175万人」と発表したデータなどに比べるとかなり少ないですが。一応、引用してみます。 <<・・保健福祉部は今年「ペジ収集老人実態調査」を初めて実施した・・・・65歳以上の高齢者は4万2000人で・・・・月15万9000ウォンを稼いだ。時間当たり所得で計ると1226ウォンで、今年時間当たり最低賃金(9620ウォン)の12.7%に過ぎない。ペジを拾う理由は「生計費準備」が53.8%で最も多く、「お金が必要だから(29.3%)」が後に続いた(アジア経済)・・>>

 

記事は、例の「簡単な仕事バラマキ」を増やすことを肯定的に書いていますが・・どれだけ「就業者」を増やしても、その雇用の「質」が問題でして。韓国は日本と同じくらい「働く66歳以上」が多い国です。これもOECDデータですが、OECD平均の場合、「66歳以上人口の平均可処分所得を、全人口平均可処分所得と比べると、88.0%でした」となっています。しかし、韓国の場合は66歳以上人口可処分所得は全体の68.0%にしかなりません。76歳以上だと、58.6%(OECDワースト)日本の66歳以上人口可処分所得は85.2%、米国は93.2%。76歳以上だと、日本78.0%、米国83.8%でした。「働く高齢者」は日本並みに多いけど、それで手に入る収入はずっと少ないという意味になります。 多分、これからも、親の日または敬老に関する日がくれば、似たような記事が増えるでしょう。労働者の日、秋夕やソルには、賃金未払いが増えたという記事が増えるでしょう。なぜかそんな気がします。

 

 

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