日中韓首脳会談ですが、本エントリーを書いている時間帯ではまだ「会談が始まった」という記事しかなくて、関連してはいるものの別の件になりました。一つ前のエントリーと同じく、「イベントそのものが最大の意味である」という結論になりそうな気もしますが。もしなにか書く分量の内容があったら、明日取り上げることにします。今回は、ハンギョレ新聞の分析記事(その1、その2)ですが、「一つの中国という表現には単語一つが重要な意味を持つのに、中国政府の発表によると、ユン大統領が普通なら韓国政府として言わないはずの単語を話したことになっている」というのです。
一つ前のエントリーでもお伝えしましたが、中韓首脳会談関連の政府発表において、韓国政府は台湾問題が議題になったとは発表していません。しかし、中国側はその内容を発表し、「ユン大統領が『一つの中国原則を堅持する』と明言した」と報じています。韓国政府は「基本的な立場を述べただけ」としています。「言ってない」「確認できる内容はない」とせずに素直に認めたのは評価できるかもしれませんが、そこはともかくして、基本的な立場というのはその通りかもしれません。一つの中国というのは、日本も米国も事実上認めているものです。しかし、日米の場合、そして韓国政府もまた、「原則」や「堅持」とは言いません。
本当にそう言ったならそれはそれで問題で、言ってないのに中国政府は意図的にそう発表したなら、それはまた問題、というのが記事の趣旨です。今までの韓国政府、及び日本・米国政府は、一つの中国というものを『原則』ではなく『政策』と呼んできました。原則というのはそのまま認めざるを得ない不変のものという意味合いになりますが、政策だと変更可能だし、『中国の』政策という見方もできるからです。また、それについて、堅持とは言わず、『理解』『尊重』という表現を使ってきました。記事によると、『力による現状変更に反対する』というのも、その上で可能になるもの(原則を堅持するとしてしまうと、『現状』を変えてはならないという主張が説得力を失ってしまう)である、という話も出ています。ちなみに、日本も韓国も、中国との外交関係樹立の共同声明などにおいて、一つの中国というのは中国が表明しているものであり、それを「尊重」「理解」するとしています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・中国側の発表文に出てきた「一つの中国原則」という表現が議論を起こしている。中国外交部は26日夜公開した発表文で、ユン大統領が「韓国は1つの中国原則を堅持し、このような立場は変わらなかった」とし「今まで通り、揺れることなく韓中関係の発展に努めていく」と話した、と 伝えた。韓国政府は中国と台湾の関係について「一つの中国を尊重する立場」を基本に維持している。「立場」と、(※今回中国側の発表から出てきた)「原則」は微妙だが大きな違いがある。中国式表現である「原則」は・・・・中国がどのような手段を使っても統一を実現するという意味を含んでいる・・・・ロシアをはじめ中国に近い国家は「原則を遵守する」と公式的に言及する・・・・これとは異なり、韓国の「立場」は、一つの中国を尊重するという意味に限定される。韓中修交共同声明にも・・・・「~という中国の立場を尊重する」というふうにまとめられている。これにより中国の「力による現状変更の試み」には同意しない。米国も「一つの中国『政策』」も同様の立場だ。
中国側発表文通りならば、尹大統領が既存の尊重・立場を変え、中国の要求どおりに「原則」として支持したという意味になる。これに対して外交部は27日、「韓国政府は1992年の韓中修交以来、一つの中国尊重立場を維持してきており、今回の会談でもそのような趣旨の発言があった」とし、「これと共に韓国側は台湾海峡の平和と安定が朝鮮半島は もちろん、北東アジアの平和と繁栄にも重要だという点を強調した」と明らかにした。中国側の発表とは違いがあるが、協力を強調している状況で、韓国が中国側にこれに対して抗議する可能性は低いと見える(ハンギョレ新聞その1)・・>>
<<・・李強中国国務院首相が26日、ユン大統領、岸田日本首相とそれぞれ会談した後に出した発表文で、「一つの中国」政策と関連して異なる表現を盛り込んで注目される・・・・(※既存の)韓国と米国政府などは、一つの中国政策を受け入れたものの、これを「原則」と呼ぶことなく「政策」と呼ぶ。またこれを堅持するという表現は使わず、中国側の立場を認めるという意味で「尊重する」という表現を主に使う。先月2日の米中首脳電話会談でも、中国外交部が出した資料には、「バイデン大統領が1つの中国『政策』を固守する」と話した、と出ている・・
・・(※韓国ユン大統領には「原則」「堅持」とした中国側の発表だが、しかし)中国国務院が李首相と岸田日本首相との会談結果をまとめネットに公開した資料には、一つの中国という表現は登場しない。 代わりに、岸田首相が「日本は1972年の、台湾問題に関する日中共同声明で決定された立場を堅持しており、これは全く変わらなかった」と述べた、としている。岸田首相が一つの中国という言葉を発言しなかった可能性がある(ハンギョレ新聞記事その2)・・>>
記事は最後に1972年日中共同声明を取り上げて「事実上、日本も認めている」としています。確かにそういう路線の話だったのは分かりますが、読んでみると、各表現は現在のスタンスと変わっていません。外務省のHPによると、「三」にて、一つの中国関連を表明するのは「中国政府が」表明するとしていて、『日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する』となっています。個人的に、一つ前のエントリーで「原則」と書いたときから違和感がありましたが・・記事でも指摘しているとおり、いまのところ韓国側からなにかの措置(外交ルートでの抗議など)を取る話は出ていません。タイミング的に、微妙だけで大きな、そんな話ですし、ちゃんと言ったほうがいいと思いますが(本当にそう言ったかもしれませんけど)。確か、文大統領もそんな表現を使ったことがあるような記憶がありますが・・ちょっと未確認です。
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