韓国の「5大主力輸出品目」、石油化学が大ピンチ・・中国の技術発展、供給過剰など

最近、韓国の経済・金融関連で「構造的」という言葉をよく目にします。対中輸出、半導体、家計債務、電気料金など、様々な分野で同じ表現が出てきます。新型コロナ、ウクライナ事態など「変数」によるものではなく、構造的に変わってきたものが、少しずつ現れているというのです。対中輸出や半導体などでは、中国の技術発展による変化、国際情勢の変化などにおいて、構造的な変化が起きていて、それはもう下には戻らない、という内容です。そして、韓国経済(4月18日5月10日)など複数のメディアによると、韓国の主力輸出品目である「石油化学」においても、また同じ指摘が出るようになりました。

ディズプレイなどはもうほとんど中国がシェアを取っているので今見るとちょっと微妙な部分もありますが、韓国の15大主力輸出品目は次のようです。半導体、無線通信、ディズプレイ、石油化学、一般機械、石油製品、コンピューター、自動車、車部品、家電、繊維、二次電池、バイオヘルス、船舶、鉄鋼。もちろん時期によって異なりますが、今年(4月まで)の月別データを見てみると、半導体を100にすると自動車60~70、一般機械40~50、石油製品と石油化学が40~50、鉄鋼が30といったレベルです(適当ですみません)。

 

特に半導体、石油製品、石油化学、鉄鋼、自動車、一般機械、船舶は、5大輸出品目とされています(名称は「5大」ですが、7つです)。あまり記事にはなりませんが、韓国の石油化学関連は、いままで輸出主力品目として、長い間活況でした。しかし、それがまた「構造的な」変化を見せている、とのことでして。不動産関連(特にPF)が大企業の財務・流動性に大きな影響を及ぼしている中、石油化学もまた、グループ全体の問題になっている、とも。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・LG化学、ロッテケミカル、大韓油化などナフサ分解設備(NCC)を根幹とする国内石油化学産業がすべてピンチに追い込まれている。中国が石油化学設備を増設し、自国内で安い価格で石油化学製品を自給し始めている。10年前から聞こえてきた、「中国発供給過剰」という指摘を気にしなかった結果であるわけだ。いままでも、原油価格が高騰すると石油化学産業の収益性が下がって周期的に困難を経験してきたが、今回は次元が異なる問題という危機感が漂っている。中国の技術発展による構造的問題は、国内産業全般で構造調整がなされなければ、特別な解決策がないためだ。政府レベルでビッグディールなど主要石油化学企業の整理が必要になったという話が出てくるのも、そういう理由からだ(韓国経済4月18日)・・>>

 

<<・・SK・LG・ロッテなど国内を代表する大企業の財務構造がますます思わしくない形になっている。石油化学をはじめとする核心事業部門の実績が問題で、バッテリーなど新事業のために調達した借入金の負担も増えた結果だ。内需の割合が高い新世界・CJグループの信用も、やはり揺れているという評価だ。ナイス信用評価は9日、ソウル汝矣島韓国取引所で開かれた「2024クレジットセミナー」でグループ別の信用リスクを分析した・・・・SKグループの借入金が120兆ウォンに迫るなど、財務構造に対する懸念が大きくなったと評価した。SKグループの合算借入金規模は2019年61兆ウォン台から2023年117兆ウォン台に急増した。純借入金規模も同期間44兆ウォン台から81兆ウォン台に増えた・・

・・ナイス信用評価関係者は「SKハイニックスが昨年赤字を記録、バッテリー・石油化学部門の赤字が積み重なり、借入金が増えた」とし・・・・LGグループの合算純借入金金規模は同期間18兆4000億ウォンから36兆9000億ウォンに2倍ほど増えた。石油化学(LG化学)とディスプレイ(LGディスプレイ)部門が同時に不振な影響が作用した・・・・ロッテグループの事情も似ている。核心系列会社であるロッテケミカル(※石油化学)が赤字を続けている・・・・「底がない」とされているロッテ建設の偶発債務も負担だ。昨年末基準ロッテ建設の偶発債務は5兆4000億ウォン台に達した(韓国経済5月10日)・・>>

 

韓国メディアの記事で言う「純借入金」とは、企業の借入金から、その企業の現金・現金性資産(現金同等物、Cash equivalents)を引いた金額を意味します。石油化学業界最大手とされるLG化学の場合、その純借入金が15兆4000億ウォンになっていますが、2000年にはこれが7兆ウォン台だった、とのことでして。LG化学はバッテリー分野にも投資しているので、そのためのものなら別にいいですが、それ以外に売上や営業利益も大幅に減少しています(この部分はアジア経済5月28日の記事より)。特に純借入金の増加が速すぎで、本当にこれでいいのか、という内容の記事です。

構造的な変化というのは、いままでのように「周期によってなんとかなる」という現象が「無い」という意味ではありません。周期による好況・不況の変化はあるでしょう。構造的な変化とは、そうですね、ゲームに喩えますと・・「HPがどれだけ残っているのか、どれだけ減ったのか、回復アイテムをどれだけ持っているのか」ではありません。構造的な変化とは、「HPの最大値がどんどん下がっていく」に近いと言えます。アイテムを使っても、その最大値までしか回復できません。レベルを上げれば最大値も増えるでしょうけど、もうある程度の経験値ではレベルも上がらなくなっています。そんなところ、でしょうか。

 

 

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