韓国、中国とFTA拡大へ協議を始める・・一部メディア「米中どちらかを選ぶのは、弱いものがやることだ」

ちょっと前(6月3日)の記事になりますが、中韓FTA「2段階」関連をエントリーしてみます。この前の日中韓首脳会談のときに中韓首脳会談の議題だったとされる、韓・中FTAの拡大、いわゆる「FTA2段階」というもので、しばらく協議が中断されていましたが、首脳会談にてその再開に合意しました(6月から協議を始めるとしていましたので、予定通りならいまどこかでやっているはずです)。早くも複数のメディアが「中国人観光客が増える」「ゲーム産業が中国へ進出できる」などと多くの記事を出しました。ソウル新聞などは「わたしたちはもう、米国と中国のどちらかの選択をしないといけない弱い国ではない」としながら、例の「私たちはすごいから、大丈夫」という主張を展開しています。

ただ、「8年間も中断されていたFTA2段階協議がこうもあっさり再開されたのは、中国が、米国との対立を『自由貿易』という名でなんとかするためのもの』(メディアによって書き方は異なりますが)としながら、それより日本主導のCPTPPのほうが重要であるとの主張もあります。文化日報などがそうです。保守側とされるメディアは、書き方は先のソウル新聞などに比べると落ち着いていますが、どちらかというと好意的な方の記事が多い気がします(全部読んでみたわけではありませんが)。以下、2つの記事から、それぞれの主張を<<~>>で引用してみます。

 

<<・・5月27日に開かれた日中韓首脳会議で三国は「朝鮮半島と北東アジアの平和・安定・繁栄が共同利益であり共同責任」という共同宣言を採択した。「3国協力の制度化」と「高い水準の3国自由貿易協定(FTA)交渉再開」にも合意した。また韓国と中国はFTA2段階交渉を再開、文化・観光・法律分野の開放拡大を推進することにした・・・・私達は、今までのように米国と中国の間で選択をしないといけない弱い国ではない。私たち自ら選択してしまうのは愚かなことだ。強大国に囲まれ、大陸と海洋勢力との接点にある韓国の外交政策は、政治的理念よりも実利を優先する中立的政策でなければならない・・

・・今は難しいだろうが、長期的には対米依存外交から抜け出して、米中間勢力均衡を朝鮮半島周辺で成し遂げる段階にまで発展させていかなければならない。さらに、米中の仲裁人の役割もできるようにならないといけない・・・・2段階サービス交渉開始を宣言した韓中FTAの重点分野が「文化・観光・法律」と言及されたのは惜しまれる部分だ。韓国としては、すでに他のFTAで開放された分野を中国にも開放しようとする程度に留まっているからだ。教育や医療などの基礎サービス分野もさらに含め、その波及効果を他のFTAにも拡散させていかなければならない(ソウル新聞)・・>>

 

<<・・韓中FTAは開放レベルが低い協定だ。中国が米国の同盟国である韓国を引きよせて結んだFTAという側面が強い。それでも、お米などの品目をめぐっては議論が激しかった。朴槿恵元大統領の回顧録「暗闇を抜けて未来へ」によると、2014年アジア欧州首脳会議(ASEM)の時、李克強中国首相が農産物開放を圧迫すると、朴元大統領は「それでは妥結が難しい」とした。交渉は、習近平主席が「韓国の要求を受け入れろ」と指針を下した後に妥結した・・・・韓国が中国とFTA交渉に力を注いでいたとき、バラク・オバマ米政権は環太平洋経済連携協定(TPP)に集中していた。朴槿恵政権は韓中FTA発効後「FTAはもう十分だ」と自慢し、TPPの地政学的意味を見落としていた。

以後、トランプ政権がTPP脱退後、日本が包括的・漸進的環太平洋経済同伴者協定(CPTPP)として推進する際、文在寅政権はこれをちゃんと見ようとしなかった。貿易で食べていく国だけど、G1、G2とそれぞれFTAをしたという自足感におぼれて、アジア・太平洋地域のメガFTAには目を閉じた。朴元大統領は韓中FTAを国政成果として掲げているが、それからサード事態の際にはなにもできなかった。中国は協定や規範より共産党の「見えない手」を前面に出している国だ。韓中FTA2段階交渉をしても、それは変わらない。中国はFTAという枠組みでアプローチできる国ではない・・

 

・・特に、米国が先端技術の輸出関連措置を堅固に積み重ねる時点で、中国とFTAに力を注ぐというのは、国政の優先順位を逸脱させる決定だ。キムテヒョ国家安保室1次長はブリーフィングで「6月から韓中FTA 2段階交渉をする」としたが、今はそんな時ではない。ユン政権は、まずCPTPPから加入しなければならない。欧州連合を脱退したイギリスは、新通常環境に対応するために昨年加入した。中国もCPTPP加入申請をした状態だ。ユン政権が中国とのFTAだけこだわってCPTPPに入らないなら、朴政権の誤判を繰り返すだけだ。それでも、朴元大統領は米中協力時代に「米中両側からラブコールを受ける」としていたが、今は米中覇権競争時代である(文化日報)・・>>

ソウル新聞の主張が強烈ですが・・実はこれ、書き方は異なっても結構多くのメディアに共通しています。「弱いから選択するしかない」は、「強いと全部もらえる」という考えの現れ方の一つです。選択というものにもいろいろありますが、それを「ある状況下での、一員としての責務」と考えると、「強い人は責務から自由になれる」という間違った考え方の現れだとも言えるでしょう。文化日報の主張は、「まずCPTPP加入申請をしてから(まだしていません)」、といったところでしょうか。ちなみに、個人的な意見ですが、強いから選択せずにすむとかそういうのではなく、『自分の意志で選択できる人こそ、強い』のではないでしょうか。

 

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