文在寅政権で特に盛り上がっていましたが、「最低賃金が高いというのは、いいことではないか」という話。あまり目にすることのない単語ですが、「実質最低賃金」において、韓国はすでに日本、米国などを超えているという記事がありました。記事で言う実質最低賃金というのは「最低賃金だけでなく、事実上雇用側が支払う金額」すなわち社会保険関連とか、職員に与える何かの手当などを含めての概念です。あまりよく出てくる単語ではありませんが。ソース記事の毎日経済(12日)によると、この実質賃金の場合、韓国9.5ドル、日本8.5ドル、米国7.3ドルなどで、韓国はかなり高く設定されている、とのことでして。
しかし、その結果、最低賃金未満の労働者が300万人を超えるという事態になりました。専門家は、「これが何を意味するのかというと、いまの最低賃金が、実際の経済の発展度よりずっと高く設定されているということです」と指摘します。単に雇用側の問題だけでなく(もちろんそれもありますが)、最低賃金未満でもその職業を選ぶしかない人が多い、そんな意味である、と。賃金の金額順に、賃金労働者全員にザーッと並んでいただいた場合、人の数からしてちょうど真ん中の人(たとえば100人だと50人目の人、韓国で言う『下位50%』)の人の賃金を、韓国では中位賃金と言います。
OECDの場合、最低賃金はこの中位賃金の40~50%あたりで設定されるとのことです。ドイツやオーストラリアのように高く設定されている国もあるけど、全体的で見ると40~50%で、たとえばベルギー40.9%、日本45.6%、アイスランド47.5%、ドイツ52.6%などです。韓国は、60.9%です。国の政策次第だとは思いますが、最低賃金という言葉の意味からして、どうも違和感があります。実際、OECDの最低賃金以下(※韓国では最低賃金『未満』での集計が一般的ですが、このOECDデータは『以下』で集計されたものです)データによると、最低賃金制度がある25カ国の中で、最低賃金以下労働者がもっとも多いのはメキシコ(25%)で、その次が韓国(19.8%)でした。ちゃんと制度が機能している国としては、ベルギー0.9%、米国1.4%、オーストラリア1.7%、日本2.0%、チェコ3.1%などです(アジア経済、2023年4月2日)。制度がちゃんと機能していないのが、22位フランス(12%)、23位スロベニア(15.2%)、24位韓国、25位メキシコ。以下、毎日経済の記事から<<~>>で引用してみます。
<<・・急騰した最低賃金が国内賃金労働者中間水準が受ける賃金の60%を超えることが分かった。最低賃金に連動する求職給与(※失業給付の一種で、明らかに再就業努力をしている人に支給されます)支給も月1兆ウォンに達すると予想される。急速に上がる最低賃金が、国内雇用市場だけでなく政府の財政にも影響を及ぼしているのだ。12日、雇用労働部によると、2022年の国内賃金労働者の中位賃金に比べて最低賃金は60.9%だ。2012年42.9%から、まさに急上昇したのだ・・・・その国全体の労働者が受ける賃金水準に比べて最低賃金が高すぎるという意味だ。経済開発協力機構(OECD)ベルギー(40.9%)、日本(45.6%)、アイルランド(47.5%)、ドイツ(52.6%)、オーストラリア(53.6%)など主要国は40~50%台に留まっている。実際、国内最低賃金は急上昇した。2022年基準韓国の実質最低賃金(9.5ドル)水準は加盟国35カ国のうち9位水準だった。韓国より最低賃金が高い国は、ルクセンブルク(13.6ドル)、オーストラリア(13.6ドル)、ドイツ(13.6ドル)、ニュージーランド(13.2ドル)などだ。特に韓国の最低賃金は日本(8.5ドル)や米国(7.3ドル)よりも高かった。
また最低賃金に連動する求職給与支給額が来年には平均月1兆ウォンに達すると分析された。求職者が受ける求職給与額が増えると、『短い期間だけ勤務した後、求職給与を受ける』を繰り返す道徳的な問題が発生する誘因も大きくなる。これは、ただでさえ余力がない雇用保険基金にも負担になるだろう・・・・専門家は、最低賃金を急激に上げる前に、実際の労働者が最低賃金の恩恵を受けることができるように改善が必要だと主張した。カンソンジン高麗大経済学科教授は「現在最低賃金以下の賃金で働く人が300万人」とし「最低賃金以下を受けながらまで働くという労働者が多いというのは、まだ韓国の経済発展水準が最低賃金に及ばないという意味」と指摘した(毎日経済)・・>>
引用部分の最後、教授は「以下」としていますが、300万人は「未満」です。詳しくは301万1000人で、5月16日統計庁データを分析して経営者総連合会が出した報告書がソースです。こっち方面(?)では結構有名な数値なので、教授のミスというより、記事になる過程でのミスではないだろうか、と思われます。300万人だと確か賃金労働者の13~14%ですが、『以下』で集計したOECDデータなどでは19%超えていますので。さて、ここでまた取り上げないといけないのが、賃金未払いデータです。日本の「労働政策研究・研修機構」のオ・ハクス特任研究委員が毎日労働新聞(2024年3月7日)というメディアに寄稿した内容によると、「昨年、韓国の賃金未払いが1兆7845億ウォンで、最高額を記録した。日本の場合、2021年度の賃金未払いは約516億ウォン(52億円)で、単純計算で韓国の2.89%に過ぎない。日本の賃金労働者は6114万人で、韓国2145万人の2.85倍に達する。労働者数まで勘案すれば、韓国の賃金未払いは日本の約100倍(正確には98.6倍)だ」としています。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。