今回の、ロシア・北朝鮮の事実上の軍事同盟化(軍事同盟とは見ることができないという主張もありますが)において、韓国メディアは「中国はこまっている」「中国としては嬉しくない展開」という見解にすごくすごく(2回)集中しています。確かにそれはそのとおりですが、それでも中国としては陣営、いわば『側』としての立場があるので、公式に「両国の正当な主権行使」ということにしています。韓国では、どちらかというと、『中国を動かしてロシア・北朝鮮同盟を弱体化させよう』という動きも出ていますが、実際はその逆でしょう。中国は韓国を動かして日米韓協力を弱体化させようとしているわけでして。ロ・北の件で多少困ることはあるとしても、優先順位というものがありますから。
各自が「状況の一部」であるという認識。これが陣営またはチームの構成において、もっとも重要ではないでしょうか。しかし、韓国のほぼすべてのメディアにおいて、ロシア、中国、北朝鮮など地政学的なリスクにかかわる話が出てくると、いつも(海外メディアの引用などで経緯や事実だけ述べる記事以外は)真っ先に出てくるのが「日本が得をした」という主張です。いわゆる「普通の国」化ができるようになるから、日本は喜んでいる、というのです。今回もノーカットニュース(CBS)が、北朝鮮・ロシアの軍事同盟について同じ記事を載せたので、紹介します。ちなみに、北朝鮮や中国(米中対立など)関連でも、同じ趣旨の記事が無数に出ていました。読者の皆さんもご覧になったことがあるでしょう。以下、<<~>>が引用部分です。
<<・・北朝鮮とロシアが軍事同盟に準拠する水準で関係を格上げし、全方位的に波紋が起きているが、日本の執権勢力にはむしろ機会の要因となっている。国別に見てみると、明確だ。まず、ロシアは米国の一極体制に反旗を持って大胆に現状変更を図っているが、成功の可否は不透明だ。北朝鮮との準同盟は、どちらかというとロシアが守勢だ。ウクライナ事態などによる国際的な立場の問題と、各国からの各種措置をなんとかするためのものだからだ。かつて超強大国だったロシアが北朝鮮と手を握った事自体が、る西欧的基準から見てもそうだ。、中国は困惑した状況だ。一次的には北朝鮮を戦略的足場とする域内影響力が弱くなると予想される。同時に、北・中・ロの結束と照らされ、米国など西方の圧迫が強くなるのを懸念してはいるが、だからといって北朝鮮・ロシアとあまり距離を置くこともできない・・
・・北朝鮮としては、実効性に疑問は残るが、とにかく文書としてロシアの安全保障の約束を受けた。何より核保有国の地位を既定事実化する基礎を設けたという点で満足しているだろう。しかし、ロシアの未来自体がそれほど楽観的でもなく、北朝鮮関係の持続可能性や中国との関係の再調整の有無など、北朝鮮にとってはリスク要因もある。米国の立場は、どんなシナリオ展開も、それほどわるいとは思えない。中国という大きな相手である中、北・中・ロ関係がどのように変わっても米国の既存戦略には大きな影響がない。もし中国がロシアと距離を置くならば、弱体化させるという面で良いことであり、日米韓三角協力が緩む心配もない。いわゆる新冷戦の名分を強化できるからだ。
問題は、私たちだ。世界覇権競争の正中央に位置し、文字通り「グローバル中枢国家」になった(※もともとはユン大統領のスローガンです)。私たちとあまり関係ない話のように聞こえたウクライナ事態は、今や韓国と北朝鮮それぞれの武器供給能力にかかっていると思われる。米国、中国、ロシアなど強大国政治にさらに関わったわけだ・・・・一方、日本は域内情勢で問題が多い中、「普通国家」に急加速するこの上ないチャンスを得たと見ることができる。日本執権勢力が集団自衛権行事に対する「解釈改憲」(2014年7月)や基地攻撃能力などを含む「安全保障関連3大文書」改正(2022年12月)などを通じて、軍事大国化を図ってきたのは周知の事実だ。
クリストファー・ジョンストン元米国国家安全保障会議(NSC)東アジア局長は24日、VOAインタビューで北朝鮮とロシアの密着について「金正恩とプーチンが、新しい日本を可能にしている」とし「日本が自らを防御するためにより多く準備が必要だという認識を強くするだろう」と指摘した。ここに、日本は米国およびヨーロッパとの先端武器共同開発で、今やっと足場のできた「K防衛産業」の立場をゆるがしている。ラム・イマニュアル駐日米国大使は21日、フィナンシャルタイムズ(FT)インタビューで、中国に対する抑止力とウクライナのための軍事備蓄のためにも日米両国が最先端の武器共同生産を加速しなければならないと明らかにした。国内の防衛産業関係者も「日本には底力がある」としながら「(これまで海外輸出が制限されてきた日本製武器に対する)防衛産業輸出が可能になれば、われわれとしては大変な状況になるしかない」と話した(ノーカットニュース)・・>>
このように、『チーム』という考えはまったくなく、ただ「まきこまれた」という認識だけの主張です。「強大国の政治に関わりたくない」という趣旨の文章が出た直後に、防衛産業輸出の心配をするのが、まさにその現れでしょう。防衛産業というものを「量販店においてある家電」のようなものだとでも思っているのでしょうか。
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