韓国金融専門家「(1997年~2000年あたりの)国際通貨基金の『4つの勧告』、守られていない」

以下、ちょっと長いですが、ご理解の程を。1997年~2000年あたり、国際通貨基金は韓国にアドバイスした「4つの核心勧告」が、守られていないという指摘がありました。確実に見える事例だけで3つはある、と。共に民主党出身の元国会議員イ・ヨンウ氏が寄稿したものですが、他の記事からは見つけられない内容もあるし、筆者の専門が金融(韓国投資信託運用CIOなど)だったこともあるので、今日取り上げてみます。ハンギョレ新聞(18日)の記事です。最近また、大企業の流動性問題を報じる記事が増えてきました。その関連記事を辿っていたら、この記事が見つかりました(ソース記事は特定企業に関するものではありませんが、関連記事に出ていました)。

増えたと言っても、少数ではありますが・・たとえば、ロッテグループが、もはやロッテ建設を助けるための資金もままならなくなったとか、そんな話です。建設社だけで債券を販売することになったけど、これが初めてのことで、いままではもっと信用度の高い同グループ内の会社が保証していたそうです。去年あたりには、「系列会社からいっぱい借りたからもう大丈夫」という展開になっていました。半導体が好調のSKもそうで、バッテリー関連の「SKオン」というところがいろいろあって、バッテリーとはまったく関係のない系列会社と会社合併するなどで資金を確保している、とのことです。グループ全体からすると、流動性問題が指摘されても仕方ない、などなど。それでは、本題としてハンギョレ新聞の記事に行ってみましょう。

 

記事は、ウォーレン・バフェット氏の「プールの水がひけば、水着を着てない人がわかる」という言葉(※「潮が引いて水着をきてない人がわかるようになる」、リスク発生時にはいいかげんな運用がすぐにバレるなどの意味)を引用しながら、国際通貨基金が韓国に勧告した4つの内容を取り上げています。当時の問題は融資資金、すなわち資産の不良債権化だったこともあり、国際通貨基金の処方もこれを正確に認識するように促すものだった、としながら。それは、「金融機関の融資・投資資産に対する(※客観的な)時価評価」、「金融機関資産に対するリスクの適切な反映」、「ある系列会社のリスクが大企業集団の他の系列会社に転移することを防止するための、系列会社間の保証を減らす、または各社が自力で経営できるようにすること」、「顧客資産と会社資産の厳格な分離により、顧客資産を活用した会社または関連会社の支援を行わないこと」。さらっとこわいことがいろいろ書いてあります。以下、「これらが守られていない」とし、記事は3つの事例を出しています。証券会社関連、本ブログでもよく取り上げるPF関連、そして「購買専用カード」という存在です。ここからは<<~>>で引用してみます。

 

<<・・(※その1)金利上昇期になり、債券型ラップ(Wrap Account)や債券型信託商品の評価がマイナスになった。レゴランド事態で市場金利が高まった2022年11月当時、これら商品で発生した評価損失は約4兆ウォンと推定された。この損失が誰のものであるか、証券会社と顧客の争いが発生した。原則として損益は顧客の分である。しかし、20余りの証券会社が100兆ウォンを超える短期運用資金市場で競争する状況で、証券会社はこの原則から抜け出した。顧客の買い戻し要求に他のラップ・信託商品の債券を任意に取引する『自転車操業』で返却対応したのだ・・

 

・・(※その2)プロジェクトファイナンシング(Project Financing)は、各事業場別に特殊目的法人(SPC)を作り、これを一つの会社とみなし、事業を進めた。この『施行社』は全体事業規模の10-20%の資金だけ投入し、残りは銀行など金融会社からローンで借りたり、債券を発行した。ローンまたは債券の担保は、(※あとで)分譲などを通じて入ってくるキャッシュフローだ。ここで注目されるのは債券発行による資金調達だ。SPCの発行債権は、一般的に信用度が低いため、『施工社』である建設会社がその債権に対する支給保証に乗り出す。支払保証には証券会社も参加したりする。でも、高金利環境でこのような構造が成立しなくなった。分譲事業の収益性が下がり、分譲前提のキャッシュフローをもとにしたプロジェクトファイナンシングのいたるところから問題が起きた。特に、先に述べた「支払保証」が大きい。銀行、証券会社など金融会社が支給保証をした場合、PF事業のリスクが金融会社に及ぶ。施工会社である建設会社が支給保証した場合、建設会社にリスクが及ぶ。太栄建設はすでにワークアウトに突入しており、ロッテ建設はホテルロッテ、ロッテ物産などグループ関係会社の支援でやっと耐えている・・

 

・・3番目のシーンは、(※同グループ内の)系列会社へ資金を援助のための、「購買専用カード」の利用実績からも見えてくる。与信金融協会の資料を見ると、カード会社9社の5月の累積購買専用カード一括払い利用額は15兆8841億ウォンだ。1年前より11.8%増えた。購買専用カードとは、企業間の、取引で納品業者と購買業者の間で手形やウェサン(※掛け売り)取引において、その代金決済のためのカードだ。通常、企業がカード会社に債券発行を依頼し、満期日に代金を払う仕組みになっている・・・・(※たとえば)建設会社は、最近、資金調達費用が大きく膨れ上がっている。債務比率もて上がるばかり、その分、信用等級が下がる(※金融機関からお金を借りるさいに金利などが上がる、またはローンが組めなくなる)懸念があるわけだ。そんなときに購買専用カードを利用すれば、会計上では「未払金」として処理されるため、債務比率も上がらなくなる。購買専用カードは、財務状況を隠すための道具とされているわけだ(ハンギョレ新聞)・・>>

筆者はこれらを「見慣れたもの(珍しいことではない)」としながら、国際通貨基金の勧告は守られていない、あの教訓をもう忘れたのか、と指摘しています。まぁ、どちらかというと、このように国際通貨基金の指摘が的確だったとする意見より、国際通貨基金のやり方(『救い方』)は問題だったという主張のほうが多い気もしますが。

 

 

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