北朝鮮が、韓国との間に『国境』を設定し、要塞化すると発表しました。今までも便宜上国境と言える状態でしたが、北朝鮮も韓国も「朝鮮半島に国は一つ(正式政府は一つしかない)」というスタンスでしたので、南北共にいままで国境という呼び方はしませんでした。多くのメディアが、いままでも国境があったように報じながら「国境の要塞化」と報じていますが、いままで南北の間に国境はありませんでした。実際はありましたけど、国境だけど国境じゃない、ということになっていたわけです。一部の日本、韓国のメディアが「北朝鮮が『国境を設定し、すべての道路などを遮断し要塞化するとした』」と報じていますが、こちらのほうが、表現として的確だと言えるでしょう。
で、『実際には』何がどう、どこまで変わるのかはなんとも言えませんが、北朝鮮がこれまでのシステムを根本的に変えようとしているのは事実です。すでに1年前から「南北はそれぞれ別の国」という表現を使っていたので、そのときから準備してきたのでしょう。韓国日報は社説で、北朝鮮は「これこそ偶発的な衝突を防ぐためのもの」としているものの、実際はDMZ(南北の間の非武装地帯)の無力化を意図したものではないのか、としています。DMZではいかなる軍事的行動も許可されていませんが、要塞化されてしまうと、ただでさえちゃんと把握できないでいる北側の動きが、さらにわからなくなってしまうからです。また、他には、「象徴的な措置」という指摘もあります。韓国側との「繋がり」というイメージがあったからです。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・北朝鮮軍が昨日、国連軍司令部に「(北朝鮮の)南国境一帯に堅固な防御築城物で要塞化する工事を進める」と通知した。北側はブリーフィングを通じても「私たち共和国の主権行使領域と大韓民国領土を徹底的に分離させるための実質的な軍事措置」とし「南国境を永久遮断、封鎖するのは戦争抑制と共和国安全守護のための自衛的措置」と主張し・・・・南側につながった道路や鉄道も完全に遮断した。韓国合同参謀本部は「これによって発生するすべての責任は北朝鮮にある」とした。北側の意図を非武装地帯(DMZ)無力化と見ているわけだ・・・・表面的な主張とは異なり、北朝鮮軍兵力の近接配置やDMZ無力化につながる懸念が提起される。停戦協定は、240kmの軍事境界線に沿って南北にそれぞれ2kmずつDMZを置いて、いかなる軍事的行為をしないように規定している。現在、軍事境界線北側地域の軍事動向は捉えられていないが、韓国軍当局は北側動向と意図を綿密に把握しなければならないだろう。北朝鮮の如何なる現象変更行為は停戦協定違反であるだけでなく、軍事的衝突リスクだけ高めることになるだろう(韓国日報)・・>>
で、本題からずれるような、そうでもないような、そんな内容ですが・・ふっと、文在寅政権のとき、いわゆる平和ムードで盛り上がっていたとき、南北を繋げること、特に鉄道連結のことで、いろいろ懐かしいことを思い出してしまいました。当時、南北鉄道連結で新しいシルクロードができるとか、鉄道でユーラシアまで行くことができるようになるとか、そのプロジェクトに日本を参加させる代わりに日韓海底トンネルの費用を日本が負担するようにするとか、本当に様々な話が盛り上がりました。そして、この南北鉄道連結の話は、いつも「日中韓経済圏を一つに」という話とセットになっていました。
いまもまた、表現はちょっと変わったけど、基本的には変わっていません。いま中国、そして韓国も日中韓FTAを主張していますが、これも同じです。鉄道連結は物理的なもの(北朝鮮の関連インフラ改善などに大規模投資が入ることになる)で、今のユン政権は自由貿易、FTAなどを手段としているだけで(北のことはあまり考えていない)、日中韓の経済圏を一つに、という趣旨は同じです。そういえば、個人的に面白いと思ったのが、今年1月21日の毎日経済の記事です。「日中韓合わせての人口が、世界人口比で20%台を割り込んだ。急いで協力しないといけないときだ」という内容でした。そんなに人口が気になるなら、インドあたりと仲良くすればいいのでは。このように、韓国側は、今政権になってからも、「日中韓経済圏の統一」関連の主張が続いています。この前政府が発表した「通商政策ロードマップ(FTAや自由貿易を広げていくという内容)」もまたその類です。
で、本当に・・あのときの「連結」盛り上がりはなんだったのでしょうか。今回、遮断とか要塞とかの話が出たので、どうしても繋げて考えてしまいます。というか、開城工業団地や金剛山観光関連のインフラ、あれ韓国の資産も結構あったはずなのに、あれについてはどうなるのでしょうか。当時も、チョコパイがどうとかで、かなり「和気あいあい」を強調する記事が結構出ていましたが。それに、なにより最大の問題は、「ひょっとすると、次の政権でまた似たような展開が見られるかもしれない」という点でしょう。
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