22日にも部分的に取り上げたことがありますが、韓国財界順位6位とされるロッテの流動性リスクに関する噂が流れ、大きな話題になりました。他の大企業に比べるとロッテは資産及び現金に余裕があるほうで、噂そのものは事実ではないとするのがロッテは側だけでなく金融専門家たちの主な見解です。しかし、この噂だけでロッテグループ系列会社の株価が5~10%も動きました。また、その直後、ロッテケミカルという会社関連でまた問題が報じられ、例の噂が「すべて」ではないものの、「部分的には」合ってるのではないか、そんな見解も出ています。いままではロッテの「キャッシュ・カウ(金のなる木)」とされてきたロッテケミカルですが、石油化学分野の沈滞とともに、いまは赤字が累積されています。
すでに10年前から、中国側の台頭により、石油化学分野で問題が指摘されてきました。半導体や自動車などが有名ですが、実が石油化学分野も、韓国も主力輸出分野です。5月29日に取り上げたことがあるので、参考にしてください。その石油化学分野の不振から、ロッテケミカルも影響を受けたわけです。最近話題なのは、そのロッテケミカルの公募社債(約2兆450億ウォン)で「期限の利益喪失事由」が発生したことです。同社債の発行契約には、3カ年累積EBITDA/利息費用5倍以上を維持しなければならないという財務約定が締結されていたけど、これを守ることが出来なかったわけです。アイニュース24などによると、6月31日にもみずほ銀行などから調達した長期借入金2兆2595億ウォンに対してもEBITDA/利子費用5倍の財務約定が守れず、当該借入金については7月31日、財務約定未充足に対する請求猶予(Waiver)を受けた、とも。
そんな中、ロッテグループは、韓国最高層ビルで6兆ウォン近くの価値があるというロッテワールドタワーを担保として出すと発表しました。ロッテケミカルの社債の約定を変更してもらうため、というのが一般的な見解です。ニューシース、SBS、引用はしていませんが中央日報など大手まで含めて多くのメディアが記事を出しています。「強気の対策で、これで信用度が上がる」との見解もありますが、「そこまでするほど、状況が思わしくないのか?」という見解もあります。SBSの記事は、題が「流動性問題ないといったロッテ、~を担保に」です。22日にこの件について書いたときにも同じ内容を書きましたが、今すぐにロッテ側になにか問題が起きるとは思えません(各企業の流動性にリスクが無いという意味ではありませんが、今回の件では)。ただ、企業・市場への信用に明らかな問題があり、財閥グループといえども、財界順位6位とされるグループでも、そこから自由にはなれないという現状を、象徴的に見せているとも言えるでしょう。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・ロッテケミカルは、長年続いている不況の中で財務問題が避けられなかった。短時間で業況回復を期待できそうにない状況で、事業比重の見直し、スペシャルティ(高付加価値)素材事業比重拡大などでポートフォリオを新たに調整するという計画だ。28日、業界によると、ロッテケミカルが2013年9月から昨年3月まで最近10年間発行した会社債14個で期限利益喪失(EOD)原因事由が発生した。期限利益の喪失は、ある状況で債権者が債務者に貸した貸出金を満期日の前に早期に回収する権利を意味する(※要するに、外から見ると、『早期回収されると払える資金が無いのか?』とも思える状況です)。ロッテケミカルは9月30日基準、契約上維持しなければならない財務比率のうち3カ年累積利子補償比率(EBITDA/Interest Expense)5倍以上維持という項目を満たすことができなかった・・
・・石油化学業界の全般的な不況で実績不振と営業損失の拡大が続いて、現金流動性が弱くなったのが背景だ。ロッテケミカルは2021年に1兆5000億ウォンの営業利益を出したが、その後は連続で赤字を記録している。2022年7626億ウォン、昨年3477億ウォンの赤字を出した。今年も3分までの累積営業損失が6600億ウォンで、市場では今年の赤字規模が7000億ウォンを大きく超えると見ている。イルジンマテリアルズ(現ロッテエネルギーマテリアルズ)を買収し、インドネシアラインプロジェクトに数兆ウォンを投入するなど、積極的な投資に出たのがブーメランになったという分析も出ている(ニューシース)・・>>
<<・・ロッテが、グループの象徴であり、国内のランドマークビルでもあるロッテワールドタワーを銀行に担保として渡しました。流動性危機を払拭させるために、「心臓」まで担保として提示したわけです・・・・ロッテは、核心資産であるソウル蚕室のワールドタワーを銀行側に担保として提供すると明らかにしました・・・・ロッテ側は今回の担保提供が「グループの流動性に問題がなく、ロッテケミカルの社債問題を迅速に整理するという意志」と説明しました。ロッテグループの二つの軸は、流通と化学事業ですが、両事業ともに実績不振を経験している中で、特に大きな問題はロッテケミカルです。収益性を一定比率以上維持するという社債特約を守ることができず「期限利益喪失」、簡単に言って貸出金をすぐに返済するという督促を受ける可能性もある状況です。これにロッテは異例的に139兆ウォンの総資産現況を公開して「私たち資金状況には問題などない」と火消しに走っています(SBS)・・>>
つい1~2年前、PF(プロジェクトファイナンス)関連でロッテ建設関連で同じ噂がありました。今回もそうですが、当時も系列会社同士で売ったり貸したりして、なんとかなったと聞いています(ロッテワールドタワーはロッテケミカルの資産ではなくロッテ物産の資産なので、他の系列会社の資産を使ったことになります)。他に、「上位271社(上位500社のうち、非金融会社、そして7~9月報告書提出済みの企業)」のうち52社が、営業利益で利子も払えない状態または営業損失だというデータも出ています。利子補償倍率1未満、ということになります。この倍率、全体で見ると去年より良くなった(高くなった)ものの、去年半導体不況で追いこまれていたSKハイニックスやサムスン電子など多くの営業利益が今年大幅に増えたことを考えると、それ以外の企業の利子補償倍率はむしろ低下した、とも。去年、詳しくは2年前あたりから、経済関連ニュースが本当に無数に出ていましたが・・その去年よりも低下したとなると、ちょっと驚きです。あのときもゾンビ企業とか限界企業とか、結構話題でしたが。
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