漢字教育の必要性。本ブログでも何度も取り上げているし、韓国メディアもよく取り上げる内容ですが、この件『も』、なにか進展があるわけではありません。10月8日にも紹介しましたが、もはや世代間のコミュニケーション問題になっています。漢字でできている単語、すべて「韓国語」ですが、それが世代間で意味が通じなくなっています。10月8日に紹介した事例だと、中学校3年生が「シュド(首都)」の意味がわからない、とのことでして。学校のテストで「日本の首都はどこなのか」という問題が出たとします。もし学生が「東京」だとわかっていても、「首都」がなにかわからないから、問題を解くことができません。ここまで来ると、もう翻訳アプリでも必要でしょう。
そんな中、ダングック大学キム・ウォンジュン教授が、「漢字は、結局は自分を守るために必要なもの」という見解を述べました。11月14日デジタルタイムズです。韓国語では漢字語(漢字でできた韓国語)が70%で、法律用語の90%が漢字でできているのに、これを知らなくてどうする、というのです。ある「屈指の企業」の社員が、中国側との契約書の「六」「九」などの差がわからず、任意に解釈し、結局は少なくない損失につながったこともある、とのことでして(詳しくは書かれていませんが、他の部分はどう読んだのでしょうか)。
また、この件について、韓国語をこよなく愛することで有名な(韓国語だけを使うことで韓国語を早く学べる施設を作ったりしました)ブリティッシュコロンビア大学の言語学者ロス・キング氏が、韓国で漢字教育がなくなったことについて、意見を述べました。アジア経済(1日)です。ロスキング氏は、それを「ハングルだけを求めるカルトによるもの」で、「言語ではなく、文字民族主義」と表現しました。ハングルも漢字語(漢字でできた韓国語)も「韓国語」という言語なのに、漢字という文字に対しては「他人のもの」としか考えていない、というのです。以下、合わせて<<~>>で引用します。
<<・・「ある屈指の企業でのことですが、中国から契約内容がEメールで送信されてきました。韓国側の担当者が、文書で最も基礎的な数字、六と七、九に該当する漢字の違いがちゃんとわからず、任意に解釈することがあったそうです。よりによって持ち分に関する内容で、少なくない損失があったとのことです」・・・・キム・ウォンジュン教授は、文を読んで理解する能力が弱くなったとし、対策が必要だと言った。キム教授は「かなりの学歴もはずの社員が文解力(※読解力、内容を理解する能力)でこのような影響を受けたほどですから、学校での教育現場の現実はどうなのでしょうか」とし「根本的な対策が必要です」と話した・・
・・キム教授は解決法の一つとして、漢字教育を挙げた。彼は「サフル(※3日)という固有語を4(サ)日(イル)だ理解したり、「今日」と「金曜日」を混同し、年中無休の意味が何なのかわからない学生は、もう珍しくもありません」とし「韓国語文学科でも漢文科目をほとんど学ばないから、文解力が下がるしかありません」と明らかにした・・・・キム教授は「法に関する用語の90%が漢字です。不動産取引をするのに、買受人、売渡人、賃借人、賃貸人、残金、債務不履行、売買契約などの概念を理解できるとも思えない。どうやって契約書を理解できるというのですか」とし「結局、自分に返ってきます」と話した・・・・韓国語の70%が漢字語であり、学年が上がるほど難しい概念や用語が漢字語になっているだけに、基本的な漢字語は学校で積極的に教えなければならないという声は、説得力ある(デジタルタイムズ)・・>>
<<・・キング教授は「20年間、漢字教育が韓国語教育長から完全に消えてしまった」と悲しい心を明らかにした。キング教授は「韓国の最も目立つ点は何かと言えば、言語民族主義がとても強い国です。それが、実は言語ではなく『文字』民族主義だ」とし「つまり、ハングルに対する崇拝現象です」と主張した。特にキング教授は、韓国で漢字を遠ざける傾向も現れたと見ている。彼は「100年間、漢字という文字体系と漢文という言語をあまりにも『他人』化して、これは私たちのものではないとしている。これはよくないことだ」とし「本当に韓国語を上手く勉強するには、漢字を勉強しなければならない。もう少し教養のある韓国語を使うには漢字を勉強しなければならない」と強調した(アジア経済)・・>>
本当に漢字を学ばなかった『だけ』が理由なのかは、なんとも言えません。ただ、「文解力」がそれ『だけ』によるものかな、というのはちょっと意見が分かれています。8日にも紹介した内容ですが、国民日報の記事(10月7日)によると、「2+3=5のような問題は解ける学生でも、『りんご2個とバナナ3個を合わせれば5個になります』のような文章の問題は解けない」、「文章が少しでも長いと、読むことをあきらめる」という話も出ています。今回はちょっと引用してみます。こういうものまで含めて考えると、もっと複合的なものではないでしょうか。「漢字は『他人』のもの」という考えが大きな影響を及ぼしているのは、間違いないでしょうけど。
<<・・小学6年生の担任を務めているある教師は「言語能力評価で、ほとんどの子が3年生以下のレベルだった」とし「深刻さを悟って、読書を強調するようになった」と話した。また別の教師は「2+3=5のような問題は解ける学生でも、『りんご2個とバナナ3個をすべて合わせれば5個』のような、文章でできた問題は解けない」とし「文章が少しでも長いと感じられれば、読むことをあきらめてしまう」と伝えた・・・・教員総会は、「学生が他人の助けなしに教科書を理解できず、テストを受けることも困難な現実は、本当に深刻だ」とし「文解力の低下は、学習能力を下げるだけでなく、対人関係と、今後成人になった後の社会生活にも影響を及ぼすだろう」と指摘した(国民日報)・・>>
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。