もう「他のニュースがポータルサイトのトップページに来ない」勢いだった尹錫悦(ユンソンニョル)大統領弾劾案、及びその否決(表決不成立による廃案)。野党側は勢いに乗っていて、毎週同じ案上程するという話まで出ています。国民日報が「韓国ギャラップ」社に依頼して行った世論調査では、ユン大統領の支持率は11%でした。「60代以上(60代と70代)以外では、すべての年齢層で1桁だった、とのことです。その影響をどうすればいいのか、与党「国民の力」ハンドンフン代表とハンドクス国務総理は記者会見を開き、「ユン大統領が国政運営ができないため、残りの任期中にでも職から退くべきだというのが多数の国民の判断であり、退陣する前でも大統領は外交を含む国政には関与しない」と話しました。
今日、議員総会があるそうですから詳しくはそこで発表されるかもしれません。ただ、この発表内容だけで考えると、いわゆる責任総理制のことではないのか、とされています。国務総理が責任をもって国政を行う、というものですが・・野党だけでなく専門家たちは、「法律的にそんなことはできない」と指摘しています。KBSの報道(昨日)によると、「憲法上、大統領が職務を遂行できなくなった場合、国務総理が代行できる」とはなっているけど、そこにはある前提が必要です。それは、「闕位」と「事故」の場合のみ、です。ここでいう闕位とは、弾劾による罷免などで、言葉通り大統領が職務を遂行できる権限をなくしたときのことです。
事故とは、重い病気、または国会で弾劾案が成立し、最終的に憲法裁判所の判断が出る前の間(前に盧武鉉大統領、朴槿恵大統領がそうでした)、などです。現在、韓国の検察はユン大統領を内乱の「立件対象」として捜査している、と報じられています。内乱と外患(外国と内通して外患とされる事態と起こした、など)に限っては、現職大統領でも刑事訴追を受けます。ただ、非常戒厳令を出したことが内乱なのか?については、意見が分かれています。こんな状況だから「事故」にあたいするのではないか、という見方もありますが・・「憲法で言う事故とは、そういうものではない(いまでもやろうとすれば職務を遂行できる)」という意見が多いようです。また、朝鮮日報によると、こんな中、野党は弾劾案を「無限に出します」と宣言しました。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・共に民主党はユン・ソクヨル大統領の弾劾訴追案が去る7日議決定足数未達で廃棄(表決無産)されたが、通過するまで無限繰り返すという方針を定めた。同一人に対する弾劾訴追議決は会期に一度しかできないため、会期を約一週間単位で細かく分けて「毎週水曜日弾劾案発議、土曜日表決」を行うということだ。すぐに来る11日、ユン大統領弾劾案を再度発議し、14日の表決に乗り出すとした。共に民主党が「弾劾案無限発議」攻勢を繰り広げ、「早期大統領選挙」の局面を作ろうとする理由は、李在明代表の司法リスクと無関係ではないという分析が出ている・・・・結局、「弾劾による早期大統領選挙」が、李在明代表が執権するのに最も大きな問題とされる司法リスクを一気に解消する案だからだ、と言われている。政治関係者は「李代表が裁判結果(※の確定)によって次期大統領選挙に出馬できない状況が来る前に、できるだけ早く大統領選挙日を確定しようとしている」と話した(朝鮮日報)・・>>
<<・・ハンドンフン代表とハンドクス首相は、尹錫悦大統領が退陣前まで国政に関与せず、首相と与党が緊密に協議し、国政に支障ないように取り組んでいくと言いました。これが、法的根拠はあるのか、問題が何なのか・・・・憲法は、国務総理を名・実共に政権のNo.2子として規定しています。大統領を補佐し、大統領が職務を遂行できない場合、首相がその職務を代行するようにしています。しかし、重要な前提があります。大統領が闕位状態だったり、事故により職務を遂行できないときに限定しているのです。「闕位」は、大統領が亡くなったり、辞任したとき、弾劾され、新たに大統領を選出しなければならない場合、です。「事故」とは、大統領が職務遂行が難しいほど重い病気だったり、国会で弾劾訴追案が可決され、職務が停止されるなどの場合に該当するというのが、一般的にな解釈です。
しかし、今の状況がまず闕位ではなく、だからと言って内乱関連で捜査を受けなければならないとしても、職務遂行が難しいとまで見ることができるかは疑問です。また、一部で議論されている「責任総理制」は、首相が実質的に権限をどこまで行使できるのかという概念であり、そもそも憲法には出てこない用語です。一部の法曹人たちは、大統領が首相に政治的な約束などで権限を委任することが可能であるという見方もあるが、この場合でも、いつでも大統領が権限委任を撤回して再び行使できるとします。たとえ政治権の大妥協で首相に行政府を指揮監督する権限が与えられても、国家元首として外交活動や軍統数権といった権限まで持つのは難しい、という指摘です(KBS)・・>>
<<・・ユン大統領の国政支持率が11%となり、就任以後もっとも低い値になった。60代以上(※60代以上、70代以上)以外の全年齢で、一桁の支持率になった。保守が強いとされる地域である大邱・慶尚北道での支持率も20%を超えなかった。非常戒厳の宣布・解除、野党の弾劾余波などが反映された結果として解釈される。今回の調査は、尹大統領の非常戒厳宣布の後、弾劾案表決の前の時点で進行されたものだた。国民日報が9日創刊36周年を迎え、韓国ギャラップに依頼した世論調査(6~7日全国18歳以上男女1014人対象)で「ユン大統領が職務をよく遂行していると見るか」という質問に11%だけがそうだと答えた。 「遂行できていない」という回答は86%だった。 「どちらもない」という回答は1%、「知らない・回答しない」は2%だった(国民日報)・・>>
あと、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は「自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
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・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年12月22日)<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・準新刊(2024年5月2日)は、<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・既刊として、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中(2023年12月21日)です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。