トランプ大統領が、鉄鋼・アルミニウムに25%の追加関税をかけるというニュースがありました。半導体に関してもなにかの発表があるという話もでているし、関税に関する話題はしばらく続きそうです。そんな中、韓国でも関税に関するニュースが増えてきましたが、その中には、「結局は、中国関連『迂回路』議論をなんとかすべきだ」という主張もあります。本ブログでも2回か3回紹介したことがありますが、中国側が韓国を「対米輸出のための迂回路」として使う、いわゆる「タグ替え」(商品の『生産国表記が変わるだけ』のことです。この「タグ替え」件でもっとも記事を出しているのがソウル経済で、昨日(9日)には、日本のような外国からの投資を事前に審査する制度が必要だという記事を載せました。
記事によると、今年になってから、韓国に進出する中国企業が「1日に1社は進出している」とのことでして。FDI(Foreign Direct Investment、外国企業が経営参加、技術・資本提携などのために行う投資)も4年で3倍になり、去年の投資金額も2023年に比べて2倍になった、とも。中国と韓国の経済はそのつながりが広く、深いので、普通なら韓国としては喜ばしい(?)話のはずですが、最近の情勢、米中関係、特にトランプ政権の存在、そして中国企業の技術力上昇による競争を考えると、せめて日本のような事前審査は必要だ、という内容です。今回の記事の題には「中国の『輸出基地』化」という表現を使っています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・ドナルド・トランプ2期政権発足以来、中国企業の韓国進出が大幅に増加していることが分かった。その中には、韓国内市場を直接ターゲットにしている中国企業もあるが、多くは、米国の輸出関連措置を迂回するために、ある種の避難所として選んでいるというのが専門家たちの指摘だ。9日、産業通商資源部によると、今年に入って外国人直接投資(FDI)を申告した中国系企業は40カ所に達することが分かった。新年に入って一日に一社のペースで中国企業の投資が実現したわけだ。この期間、中国最大の祭りである春節があったことを勘案すれば、実際の投資速度はより速い。実際、中国系企業のFDI企業の申請件数は2020年に181件に過ぎなかったが、昨年は521件で、4年で2.9倍も増えた。
投資金額から見ても、昨年、中国の対韓国FDIは67億9400万ドル、約9兆9000億ウォンで、1年ぶりに2.5倍急増した。専門家たちは、中国の資本投資は嬉しいことだが、こうした投資がドナルド・トランプ大統領の通商圧迫手段として使われないように、あらかじめ制度を整備しなければならないと指摘する。パクキスン成均館大学中国大学院教授は、「米国の措置を避けて、ある種のロンダリングする外国投資企業が今後はさらに多くなるだろう」とし「韓国に投資しても迂回輸出が難しくなるよう、制度を細かく整える必要がある」と話した・・・・チャイナマネーが国内市場に本格的に入り、韓国がドナルド・トランプ米大統領との貿易交渉の過程に対する懸念の声が多い。トランプ大統領が米国の隣接国であるカナダとメキシコを相手に、「ニア・ショアリング(近接国に生産基地移転)」まで制限したように、今後は中国の投資自体を根拠にする可能性があるからだ。
中国資本はすでに私たちの周りのどこからも体感できる。7日に(※「ソウル経済」記者さんが)訪れた大田の半導体・ディスプレイ生産会社であるA社が、その代表的な事例だ。氷点下10℃に達する寒さの中、働く職員はほとんど韓国人だったが、この企業は昨年、中国企業が持分90%以上を買収して所有者になった。工場近くの小商工人たちも「中国企業になったなんて全く分からなかった」と話した。一種のロンダリングがなされたわけだ。この工場で生産する製品には「メイドインコリア」のタグが付いて海外に輸出される。
問題は、対応するための方法が現在としてはあまりない点だ。外国人投資が技術流出や安保に問題をおよぼす可能性があると判断された場合、職権で調査できる条項が外国人投資促進法施行令にあるにはあるが、それは持分投資方式にのみ、制限的に適用される。中国企業がグリーンフィールド(海外企業が投資国に生産施設や法人を直接設立)投資方式で生産施設を拡充するときは適用できないという意味だ。関連規定が導入されたのは2008年だが、実際にこれを活用して外国人投資を制限したのはたった3件に過ぎない。
業界によると、日本はすでにこのような問題を解決するために外国人投資に事前審査制度を導入している。事前申告を義務化し、外国政府の情報収集に協力す可能性のある企業なら、それを「特定外国投資家」に分類して、措置を取る方式だ。事実上、中国を意識しての措置だという分析が出ている。産業部のある関係者は、「いままでは単に外国人投資を最大限誘致しようとするのが政策方向であり、別途の事前点検制度を備えていない」とし「通商の環境変化を勘案して改善案を検討中だ」と話した(ソウル経済)・・>>
ごもっとも、な意見ではありますが・・ただ、大手メディア、与党または野党などが積極的に指摘している問題なのかというと、そうではありません。トランプ政権の関税関連で多くの懸念が出ているものの、いまのところ衆論は「FTAを結んでいるので、大した問題はないだろう」です。
ここからはいつもの告知ですが、久しぶりに新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。新刊は自民党と韓国」という題です。岸田政権・尹政権になってから、「関係改善」という言葉がすべての議論の前提になりました。果たして、本当にそうなのでしょうか。いや、それでいいのでしょうか。じゃ、同じ路線でないのは、たとえばこれから日本政府の路線変更があった場合は、それは「改善」ではないのでしょうか。そんな疑問に対する考えを、自分なりに、自分に率直に書いてみました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
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