トランプ大統領「大きな進展」・・日米関税交渉、「中国製品の迂回」も議題か

いま書いているのが、4月17日10時頃です。現時点で、関税交渉のために米国を訪問中の赤沢亮正経済再生担当大臣が、トランプ大統領との会談を終えました。約1時間も続いたとのことですが、閣僚同士の会談はまた別にある、という報道もあります。トランプ大統領が直接参加したのは直前まで予定になく、しかもかなり異例の対応です。会談後の赤沢大臣の発言も、意外と普通で、良い合意をできる限り早期に成立させた、という内容です。トランプ大統領もSNSに「大きな進展だお(A Great Honor to have just met with the Japanese Delegation on Trade. Big Progress)」と投稿しました。まだスタート直後というのはありますが、いまのところは、思ったより「良い意味で普通」です。

TBSに会談後の赤沢大臣の発言が載っているので一部だけ引用しますと、「私からは総理のメッセージとして、日米双方の経済が強くなるような包括的な合意を可能な限り早期に実現したいとの考えを伝えました。トランプ大統領からは国際経済において、米国が現在置かれている状況について率直な認識が示されました。また、米国の関税措置についてもですね、率直に述べられつつ、日本との協議が最優先であるというご発言がありました。その上で、両政府間で協議を続けていくことを確認をしたところです」(TBS)、などです。事前から「今回は話を聞くだけ」としていましたが、さて、どこまで『聞く』ことができたのでしょうか。




今回の会談、まだ閣僚同士の会談内容は報じられていませんが、複数のメディアが「中国製品の迂回輸出を防ぐ」ことが議題になるだろうと報じています。前に本ブログでも「タグ替え」などの単語とともに「FTAを利用し、中国が迂回輸出のための対韓投資を拡大している」と何度かエントリーしましたが・・そういう動きももちろん重要です。ただ、もう少し別の形として、複数のメディアが「押し出し輸出」と呼ぶ迂回輸出も存在します。これは、米国に送るための迂回ではなく、中国側が「米国に売れなくなっても、他国(たとえば日本など)へもっと安い価格でもっと大量の製品を売ればいいもんね」と、日本など他国に薄利多売輸出を増加させる、そんな『迂回』のことです(場合によっては迂回でもなくただの物量作戦ですが)。

あまった在庫を「押し出す」ようだとし、韓国メディアはこういうのを押し出し(ミロネギ)輸出とよく言います。今回の会談で議題になるものは、多分、両方だと思われますが、前者の場合は中国からの投資を事前に審査する制度などで対応するとしても(このような制度が日本にはあり、韓国にはないと言われています)、後者の場合、いままで日本でも似たような制度は聞いたことがありません。

 

グーグルAIさんの情報によると、この前、米国側が「800ドルまでの輸入品は関税免除」ルールを5月に廃止します。いわゆる米国で800ドル以下の輸入品に対して、一般的に関税が免除される「デミニミス(de minimis)ルール」というのがありますが、中国からの輸入品については、2025年5月2日からこのルールが適用されない、とのことでして(EMSの場合、貨物価格の30%または1件あたり25ドルの関税がかけられる)。これで、中国から直接発送する低価格ショッピングモールの製品が、大きな影響を受けると予想されています。一例ではありますが、日本、韓国などにも似たような措置を要請するのではないか、そんな気もします。




すでに大きな話題になっていますが、エヌビディアのAIアクセラレータ「H20」の輸出が、許可制になりました。H20は中国輸出のためにあえて多少低スペックで作られたもので、SKハイニックスだけでなくサムスン電子もHBM(広帯域メモリ)を提供していました。エヌビディアだけでなく、サムスン電子にも大きな影響があるだろうと言われています。このような流れも、どんどん強くなるでしょう。この件、日本もいろいろ片付ける部分が多いかもしれませんが・・韓国の場合はもっと多いはずですが、いまのところ、この点を懸念する関連記事は見当たらず、朝鮮日報など複数のメディアが「韓国の訪米団もトランプ大統領に会えるだろうから、これはチャンスだ」という記事を出しているだけです。

始まったばかりの関税交渉。全般的に、というか世界そのもの、決してよろしくない状況ではありますが、日本にとって少しでも良い結果になることを願います・・と、ここでいつもよりさらに申し訳のない告知ですが、今日も更新『も』これだけです。このシーズンは、毎年、京都にお礼参りに行ったり、韓国に墓参りに行ったりするので休む日も多く、それまでは頑張って更新するつもりでしたが、今日もこれだけになりました。珍しく、風邪を引いたようで・・明日からは「良い意味で普通」に更新できるようにします。




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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  ・様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・しい説明は、固定エントリーをお読みください。・当にありがとうございます。