韓国で社会問題化している「4歳考試、7歳考試」・・年間2兆9千億円規模の「私教育」の現状

サギョユク(私教育)。学校など公教育以外、たとえば塾に通うとか、そんな教育を意味します。本ブログでも、結構前からピックアップしてきましたが、実は1980年代から、政府レベルで社会問題とされてきました。当時は塾に通うことより、大学生による個人指導のほうがメインでした。富裕層を中心に行われていたこの私教育は、当時「一握りの秀才」とされていた大学生たちの、授業料を稼ぐための数少ないアルバイトでもありました。3月15日にも同じテーマで書いたことがありますので、興味お持ちの方は、どうぞ。最近は民間の塾がメインで、そういうのを「学院(ハグォン)」といいます。日本では「学院」は「学校」と同じ意味だったりしますが、韓国では塾などを意味します。

もともと競争社会だから、でしょうか。それとも、1980年代に成長した人たちにとって、私教育が富裕層の特権だったから、「私教育」と「富裕層(出世)」がつながっている、そんなイメージでも出来上がったのでしょうか。いま韓国のし教育市場は、1年に29兆円規模まで膨れ上がりました。年齢もどんどん幼くなって、最近は「7歳考試」というものが問題になっています。医師などを養成する目的で(7歳にこんな話が出てくる時点ですでに妙ですが)できた、いわゆる高級学院の場合、入学テストがあります。就学前の、7歳の子どもが受けるこのテストを、7歳考試といいます。なかなかの難易度だ、と言われています。




 

この「7歳考試」は、早期教育を象徴する一つのキーワードになりました。「4歳考試」もあるそうですが、さすがにどういうテストなのかちょっと想像できません。専門家は、将来的に見ると、むしろ子の能力にダメージを与えるリスクがあると警告しているし、もはや人権問題として見るべきではないのか、という動きまで出ています。そんな中、この私教育が、0.75人まで下がっている韓国の出生率の原因だとする主張もあります。前からこの問題に取り掛かってきたOECD社会政策局エコノミスト、ウィレム・アデマさんです。イーデイリー(28日)にインタビュー記事が載ったので、今日はこの記事を紹介します。記事によると、去年の韓国私教育市場は29兆2000億ウォン。為替レートにもよりますが、2兆9千億円といったところでしょうか。3月の聯合ニュースなどの記事には、「『小中高校生で』27兆ウォンになった」、となっていました(サンプル調査)。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・「すごく競争的な韓国社会の学歴主義は、低出産を強くする要因として機能します」。経済協力開発機構(OECD)で30年間、労働・家族政策を研究してきたウィレム・アデマ選任エコノミストは、韓国の出生率が他のOECD国家に比べ特に低い理由として、過度の私教育を指摘した。高い私教育費支出による経済的負担と、終わることのない競争の環境が、青年たちに結婚と出産を躊躇させるということだ。未就学児童が有名学院に入るために受ける「4歳考試・7歳考試」という用語が登場するほど、私教育市場が過熱したことに対する、OECD専門家の思い忠告である。




 

OECD諸国の中で私教育に最も多くの金を使っている。ウィレム・アデマは最近イーデイリー戦略フォーラムに先立って進行したオンラインインタビューで、「韓国小中学生の私教育の参加率は80%に達する。安定的で所得の高い職業を得るために幼い頃から激しい競争を繰り広げているのだ」とし「OECD国家のうち韓国のように親が負担する私教育費用とその強度が高い国は、ほかにない」とはなした。アデマによると、韓国は子供教育費支出が多いため、出産しないか、一人だけ産むことが多いのに対し、日本の場合は子供を産むと2〜3人を持つ場合がより頻繁だ。

実際、教育部が先月発表した「2024年小中高私教育費調査」を見ると、昨年韓国の私教育費総額は29兆2000億ウォンで、前年比7.7%(2兆1000億ウォン)増加した。 2007年の私教育費調査以来、最高値だ。 1年間の学生数は8万人(521万人から513万人に)減ったが、親の財布から出た私教育費はむしろ増えたわけだ。学生1人当たりに使った月平均私教育費も47万4000ウォンで、前年より9.3%増えた。アデマは2019年、韓国の低出生をテーマに報告書を発表して注目された経済専門家だ。6月18~19日開かれるイーデイリーフォーラムの初日の基調演説者となる予定だ。彼は韓国の低出生の主な原因として、高い私教育費と住宅費用、長時間労働文化を挙げている。

労働市場の二重構造と大学の序列化など、根本的な問題を解決できない場合、出生率の回復は難しいだろうというのがOCEDが見た現状である。昨年、合計出生率は0.75人で、小幅に反騰したものの、依然として世界でもっとも低いレベルだ。アデマは公教育正常化を解決法として挙げた。彼は「私教育依存度を減らすために公教育を質的に改善し、より重要に認識させるような方案が必要だ。また、親の子育て休職と保育などを支援するシステムを維持し、発展させなければならない」と助言した(イーデイリー)・・>>

 




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