いつものことではありますが、また日韓FTAの話が(韓国で)盛り上がっています。日本はCPTPPがあるので、韓国がCPTPPに加入すれば(できれば)いいじゃないかという話ですが、正式加入手続きもせず、日韓FTAを主張しています。日韓が手を組めば、米中の「2強」構図を揺らすことができ、EUよりもすごいブロック経済圏ができる、というのです。前にも、尹錫悦政権で「経済領土1位を目指す」とかそういう政策を紹介したことがあります。FTAなどを結んでいる国々の経済規模を合わせた数値のことです。2024年7月3日に韓国政府が発表した「力動経済ロードマップ」というものがあります。誰も覚えていませんが、力動経済というのは、尹政権の経済関連スローガンでした。創造経済、包容経済(政府が何でも責任を持つ)など似たようなスローガンが各政権にありましたが、創造経済以外はあまり流行りませんでした。
で、その発表内容を見てみると、書いてあるのは「FTA」がメインです。韓国がFTAを結んでいる国をすべて合わせると、世界経済の85%になる、とのことです。これを、政策ブリーフィングでは「経済領土85%で世界2位」としながら、シンガポール(87%)を超えて1位を目指す、とかそう言っていました。数値(比較)好きなのはわかるけど、この「FTA対象国とGDP合わせた」数値を、領土というのはさすがにどうかな、としか。いまはシンガポールが1位で、FTA増やして1位を目指すという内容でした。以下、ソウル経済の今朝の記事ですが、ものすごく長いので、導入部と最後の部分だけ<<~>>で引用してみます。ちなみに、今回も「日本にとってのメリット」は具体的に書かれていません。
<<・・日韓修交60周年を迎え、両国がこれまでの葛藤を乗り越え、一段階さらに成熟した協力関係に進むべきだという主張が力を得ている。米中対立が激化するなど、既存の貿易秩序が揺れる状況で、素材と部品が強い日本と、生産が強い韓国がパートナーシップを成し遂げれば、欧州連合(EU)より強力な経済ブロックで影響力を発揮できるという分析だ・・・・18日、与党所属の一部の議員たちが、最近、国策研究機関である「対外経済政策研究院(KIEP)」に、日韓FTAの妥当性を分析した資料を要請したという。これらの議員たちは、政府が推進している包括的・漸進的環太平洋経済同伴者協定(CPTPP)とは別に(※随分前から推進するとは言っていますが、正式の加入手続きに入っていません)、日韓FTAも検討してみる価値があるという立場を伝えたという。
これまで日韓FTAは両国の古い感情のために推進が難しいという「現実論」が多かったが、政治家たちを中心に、少しずつ認識の変化が現れているのだ。実際、両国の国内総生産(名目GDP)を合わせれば約8300兆ウォンに達し、米国と中国に続く全世界3位規模だ。高所得(1人当たりGDP4万ドル以上)人口だけが1億7500万人に上る。消費力だけ見ると米国・EUに負けない超大型市場だ。現在、韓日両国が共に加入した域内包括的経済連携協定(RCEP)は市場開放度が低く、限界が大きい。財界で市場開度が高い両国間FTAがより効果的だという分析が出てくる背景だ。しかし、日韓FTA議論は2003年12月ソウルで1次交渉を開いた後、04年11月5回の会議を最後に21年目中断された状態だ。
チェビョンイル梨花女子大学国際大学院名誉教授は「私たちの市場が狭いため、これを突き抜けていくには日本という新しい経済領土が必要で、日本も私たちが必要だ」と強調した・・・・呂漢久(ヨハング)通商交渉本部長(※李在明政権で新しく任命された通称本部長で、米国との関税交渉などもこの人がリーダーになると思われます)は、任命前、ピーターソン国際経営研究所先任委員として活動していた時期に、「関税問題はもちろんアラスカLNG事業投資問題で韓国と日本が戦略的に協力しなければならない」と主張した。業界関係者は「韓日が真心で協力できるなら、7鉱区も電撃開発できる」とし「希土類の対中国依存度を下げるために、共に海外資源開発を推進することも可能だ」と話した(ソウル経済)・・>>
李在明政権の公約推進など(いわゆるジェムビディア、国民ファンド、朝鮮半島南部の再生エネルギー送電システムなど)もそうですが、結果良ければなんとやらといったところでしょう。しかし、日韓関係についての内容になると、記事などで「真心」「さらに進む」などの言葉を見るたび、「あ、これはやめたほうがいい」と、思う・・というか、「反応」が来ます。これ、私だけでしょうか。ちなみに、私の場合、「正しい」という単語にもっとも強く反応します。
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年3月2日)<THE NEW KOREA>です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。 ・準新刊は、<自民党と韓国>です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。 ・既刊として、<Z世代の闇>も発売中です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。 ・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。