米国、関税交渉で「在韓米軍の対中牽制」について韓国政府の同意を要求か・・最終的にどうなったかは確認されず

本ブログでも数回取り上げましたが、韓国で大きな話題になっている「在韓米軍の柔軟さ」問題、続報があったので紹介します。柔軟さ、現代化、役割拡大など表現は様々ですが、基本的には在韓米軍を「北朝鮮以外の対象」に体操するためにも動かすという意味です。韓国では在韓米軍は「韓国の専守防衛のための存在」ということになっていて、中国との関係も考え、この流れに反対しています。今回の件も、話題になっているといっても、多くは「どうしよう」と懸念する内容です。これは、別に条約に明記されているわけではなく、韓国側がそういうことだと解釈していたことで、いままで何度も米国側から「いやそうは書いてないやろ」という指摘がありましたが、政権の旗色に関係なく、これだけは政府公式に「対北ONLY」ということにしてきました。

しかし、最近になって、シンクタンクなどではなく米国政府が公式にこの問題を要求したというニュースもあり、なにより時代がすでに変わっていることもあって、またまた多くの記事が出ているわけです。特に、日本側が朝鮮半島を含めたいくつかの戦区を「ワンシアター(一つにつなげる)」構想を米国側に伝え、事実上米国側も同意したというニュースもありましたが、こういうのも「在韓米軍の現代化(?)」を促す流れだと見ていいでしょう。そんな中、聯合ニュース(ワシントン・ポストの記事が元で、会員記事ですが「Trump expands use of tariffs to reach national security goals」という題です)によると、この前の米韓関税交渉で、米国側がこの問題を条件の一つとして出した、とのことでして。




元記事は、最終的にどうなったかまでは確認できないものの、米国側が関税交渉の合意のための条件の一つとして、在韓米軍現代化の内容を確実にするための措置(韓国政府が相応の内容をちゃんと発表する)を要求したことは確認された、とのことです。個人的に、十分ありえる話ではないのか、と思っています。いまのところ韓国政府による発表などはありません。作っている最中かもしれませんし、「措置」が別のものに変わった可能性もあります。どうであろうと、この流れが止まることはないでしょう。李在明大統領が今月、訪米する前に、先ず日本を訪問し、石破茂総理と首脳会談を予定している、と多くのメディアが記事を載せています。その議題に(公表されるかは分かりませんが)この問題も入っているのではないか、そんな気もします。関税交渉の前にも高官が日本に来ていましたし(笑)。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・米国トランプ政権が、在韓米軍の戦略的柔軟性に対する韓国の明示的同意を望んでいる情況が米国メディアに報道され、今後の韓米首脳会談またはそれ以後、韓米安保協議においてこの問題が重要議題として浮上するのかが注目される。戦略的柔軟性とは、韓国軍との共助のもとに対北朝鮮抑制を主目的にしてきた在韓米軍の活動範囲を、対中国抑制などのために拡張できるようにする、という意味だ。トランプ政権が8~9月中に予想される新たな国防戦略発表を控え、在韓米軍の戦略的柔軟性拡大を追求するという観測は、これまで着実に提起されてきた。




キングスリー・ウィルソン米国防総省の広報担当者は8日(現地時間)、韓米間で議論されている「同盟現代化」が「朝鮮半島とその越えに対する、信頼できる抑止力を確保」するためのものだと明らかにしたのも、結局は、在韓米軍の役割または活動範囲の拡大を想定した発言だと思われる。そんな中、米国の有力紙ワシントンポスト(WP)は9日、米国が韓米貿易交渉局面で、韓国に戦略的柔軟性に対する公開的同意要求を検討した状況を報道した。

WPは、韓米貿易合意の関連米国側の初期の草案に、「対北朝鮮抑制を続けるとともに、対中国抑制をより良くするために在韓米軍態勢の柔軟性を支持する政治的声明を韓国が発表する」という内容が、韓国に要求する事項の一つとして上がっていたと紹介した。関税を他国の政治・経済・安全保障関連譲歩を得るための手段として積極的に活用するトランプ政権が、韓国との交渉で得られる要求事項のリストを、政府レベルで整理するとき、米国国防部や国務部または国家安全保障会議(NSC)でこのような要求をしようと提案したと見られる。

先月末、韓米間で関税率の引き下げを含む貿易合意が出るまで、実際に米側が戦略的柔軟性に対する韓国の同意を要求したかどうかは確認されていない。それでも明らかなのは、戦略的柔軟性に対する韓国の明示的な同意を得る方案が、米国政府内部で提起されたという点だ。したがって、この問題が今後の韓米首脳会談などで具体的に浮上する可能性がある(連合ニュース)・・>>

 




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