皆さん、大王クジラプロジェクトを覚えておられますか。2024年6月、尹錫悦大統領が前面に出て、朝鮮半島の日本海側、迎日湾というところから、ガス田・油田が発見されたと発表しました。これを後に大王クジラプロジェクトと呼ぶことになります。ただ、本ブログでも何度か取り上げましたが、それから「調査した会社が無名」「不利な資料を公開しないでいる」「政治的な圧力が強すぎる」などなどが相次いで報じられました。一部のメディアは「多数の海外企業が参加するために並んでいる」「日本が緊張している」などとよくわからない記事を載せたりしましたが、日本ではほとんど報じられず、S&Pが「可能性は低く、アジアの他の国々の間でもあまり話題になっていない」という報告書を出すなど、そのギャップは相当なものでした。
そして、今年2月、尹政権が事実上ゲームオーバーになっていた頃、試錐(ボーリング)結果、経済性はないということになりました。当時、個人的に「すごいな」と思ったのが、そんな状況下で政府が新しく「ゴブリンシャークプロジェクト」を発表したことです。ボーリング結果が出たのとほぼ同じタイミングで、大王クジラプロジェクトで油田の可能性(有望構造)を発見したと主張した「アクトジオ」社が、その近くの対馬海盆の方に、新しいガス・油田の可能性を発見したとし、韓国政府(産業通商資源部)もこれを「ミツクリザメ(ゴブリンシャーク)」プロジェクトと名付け、強調していました。案の定、まったく話題になりませんでしたが。
で、それからサメさんがどうなったかはわかりませんが、大王クジラプロジェクトは、事実上の廃棄が決まりました。予算がゼロになったからです。ソウル経済(1日)は記事で、「事実上の廃棄の手続きに入った」と報じています。政権交代も大きな理由でしょうけど、当時の盛り上がりをリアルタイムで更新していた私としては、とんでもない虚無感です。尹政権が「偉業」としていた、大王クジラプロジェクトとチェコ原発輸出。どちらも盛り上がりに比べて支持率にはあまり響きませんでしたが・・
ついこの前、李明博政権のUAEバラカ原発が、累積収益(韓国側にとって)赤字になり、尹錫悦政権のチェコ原発受注も、米国の会社と「原発1基建設費用の約10%」を与えるなどの合意をしたことが明らかになりました。本当、何だったのでしょうか。引用部分に「保証」の話が出てきますが、これも一つ前のエントリーの内容と繋げているとも言えるでしょう。以下、<<~>>で引用してみます。 ※今日の更新はこれだけです。次の更新は、明日(3日)11時頃になります。また、プレジデントオンラインに記事がのりましたので、よろしければお読みください。新刊の内容の一部です。
<<・・産業通商資源部が来年度予算案を今年より21.4%増やした最大規模に編成した。3500億ドル規模の対米投資約束を履行するための貿易保証基金出捐額も大幅に増えた。ただし尹錫悦政権の核心事業だった「大王クジラプロジェクト」事業は、事実上廃棄手順を踏むことになった・・・・政府は貿易保険基金出捐額を今年800億ウォンから来年6005億ウォンに、650.6%も増額することにした。貿易保険公社の保証規模を大幅に増やし、韓国企業の海外進出を全面的に支えるということだ。これを含む来年度の通商・対応強化予算は今年より7013億ウォン(67.8%)増えた1兆7353億ウォンとなった。
産業部第一次官は「出捐額増額は、韓米関税交渉当時約束した3500億ドル規模の投資と関連がある」とし「3500億ドル規模の投資は持分投資やローン、保証方式で行われるが、保証部分では貿易保険基金が役割を果たさなければならないためだ」と説明した。ただし、次官は「まだ交渉が完了したり、投資方式が最終的に確定されたわけではない」と話した。政府はまた産業全般に人工知能転換(AXIS)を拡大させるための予算として、来年に計1兆1347億ウォンを割り当てた。
今年より約2倍増えた規模で、このうち特にフィジカル人工知能(AI)開発予算は今年2149億ウォンから来年4022億ウォンに大幅に増額となった。産業部側は「サプライチェーン全般に製造AIを普及させ、2030年までに自律製造AI工場を500個以上構築するだろう」と話した・・・・政府は尹錫悦政権の核心事業だったガス田開発事業、別名「大王クジラプロジェクト」には予算を編成しなかった。次官は「大王クジラ事業予算は今年政府予算の中に反映されていない」とし「事業放棄の有無についてはエネルギー室で検討している」と話した(ソウル経済)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。