韓国は、米国との関係、中国との関係において、妙な表現を使います。どちらかの味方をしないという意味で「戦略的曖昧さ」とも言うし、「安保は米国、経済は中国」とも言います。「等距離外交」もその1つで、読者の皆さんも韓国関連ニュースなどで一度は目にされたことがあるでしょう。いわばバランス外交のことで、どちらかに偏らない、そういう意味で、韓国では有名なフレーズとなっています。
この前、中国からヤンツェチー(楊潔篪)中国共産党外交担当政治局員が訪韓したときには、中国側のメディアは「今回の訪問は、今後高官たちの往来のための道を造成するものであるだけでなく、中国が韓国の中国関連懸案に対する客観的な態度を高く評価していることを示す」、「韓国は日本とは異なり、大きな枠組みでの友好関係と地理的特性などを考慮して、片方だけを選択していない」、とするなど、韓国の態度を肯定的に評価しました。
リンクした過去エントリーにもありますが、特に印象的だったのは、中国専門家が「米国はコロナ19の中国責任論、香港保安法、ウイグル自治族問題などを提起し中国を誹謗したが、韓国は米国の圧力にもかかわらず、どちらか片方に味方せず、中国との友好を維持した」と評価している部分です。
それから韓国の統一部長官が、『韓米同盟は冷戦同盟』と話す(これは中国の主張とまったく同じです)など、韓国は明らかに『中国寄り』を示しました。そんな中でも、韓国は「等距離外交だけど、なにか?」というスタンスを崩しませんでした。韓国内でも、韓国が明らかに中国に寄りつつあるという認識は、左派にも右派にも共通しているのではないでしょうか。その評価は陣営によって分かれるでしょうけど。
ですが、米国を訪問した韓国のチェ・ジョンゴン外交部次官が、米国に到着した直後、「等距離外交ではない。韓米同盟が基本だ」と話しました。韓国が米中の間でコウモリモードなのは目新しいことでもありませんが、ちょっと露骨すぎないでしょうか、これ。以下、ソウル経済の記事から、部分引用してみます。
<・・チェ次官は(※ダレス空港で、記者たちの質問に答える形で)「中国と関連し、米国は、私たちを少しでも引き入れようとするだろう。どんな立場なのか」という質問に「引き入れるって何の意味か分からないが、大韓民国と米国は同盟間」、「同盟の関係というのは、私たちの外交安保の根幹」と答えた。「私たちは、米国の同盟であると同時に、中国に近接して経済的に非常に密接な関係」という説明を付け加えた。
チェ次官は「(米国が)どのようなビジョンとロードマップを持っているか、よく聞いて、私たちの意見を、話せるなら話す」とし「同盟同士、そのように疎通するものであり、一方的に傾くとか、そんなマスコミの表現は間違い」と話した。「米国と中国との間の、等距離外交のことを言うのか」という質問に、「等距離ではない」とし「韓米同盟が基本だから」と強調した・・>
ソース記事も引用部分以外で触れていますが、このチェ・ジョンゴン氏、最近文在寅大統領によって抜擢された人ですが・・何かあれば在韓米軍のせいにする文正仁(ムン・ジョンイン)大統領特別補佐官と同じ、『自主派』と呼ばれる人物です。いままでも、南北が独自に交流すべきだと主張してきました。そんな人が、こんなときに、『等距離外交じゃない。韓米同盟が基本だよ』と話す。ただのコウモリ外交か、そうしないといけない雰囲気なのかは分かりませんが、説得力は一切感じられません。米国側も、表面的には「そうですともそうですとも」と言うかもしれませんが、信じるのでしょうか。こんなの。それに、韓国外交部、次に中国側の人たちに会った時、何をどう言うつもりでしょうか。中国側は、それを信じるのでしょうか。中国の場合、そもそも「韓国を信じる」という選択は最初から無かったでしょうけど。
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