韓国各紙、「弔問外交使節団」で話題・・しかし、専門家は「それで岸田政権の方向性が変わるとは思えません」

一つ前のエントリーもそうでしたが、いわゆる弔問外交が話題になっています。安倍元総理への弔問が、日韓関係に変化をもたらすことになる、と。中央日報聯合ニュースKBSなど、ほぼすべてのメディアがこの件で記事を出しています。しかし、中には、『日本側はあくまで弔問として受け入れるだけで、政策が変わるとは期待しないことだ』と冷静なアドバイスをする人もいます。

まず、この件でもっとも肯定的な記事を出しているのは中央日報です。安倍元総理が亡くなったことで、不本意ながらシャトル外交が復元されたというとんでもない題の記事で、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が「弔問使節団」(記事を読みながら『また使節か』と思ってしまいました)を構成しているとしながら、こう報じています。

 

<<・・尹大統領は8日には安倍元首相の奥さんである安倍昭恵夫人に弔電を送り、慰労の意を伝えた。また、使節団派遣とは別に、近いうちに駐韓日本大使館側が設けた焚香所(※焼香所のこと)を訪れる予定だ。弔電→弔問→使節団など多角的に行われるこのような追悼日程は、韓日関係改善に対する尹大統領の意志が反映された結果と解釈される。

外交消息筋は「大統領職引受委員会の時にユン大統領が韓日政策協議団を派遣して岸田文雄日本首相に親書を送ったのが、韓日関係改善の始まりのための作業なら、今回の追悼日程は両国関係と信頼を回復する分岐点になるだろう。苦しいときの友人こそが本当の友人という言葉のように、国家的な悲しみを慰めるのは、隣国として当然のことだ」と話した・・>>

 

本当に当然だと思っているなら、題でシャトルがどうとかは言わないはずですが。シャトル外交の復元は、尹さんが候補だったときから主張していたことでもあります。どうしても『これで一つなんとかなった』という流れにしたいのでしょうか。

聯合ニュースの場合、「弔問使節団派遣の主目的は哀悼のためのものではあるが、国務総理が訪日するだけに、これを通じて韓日関係に対する最高位級で意見交換が行われる機会になるものと見られる。訪日時点はまだ流動的である」としています。記者さんも、書きながら、さすがに気になったのでしょうか?誰も聞いてないのに「主目的は~」とか。

 

ただ、3つの記事ともに、『そううまく行くか』という専門家の意見を紹介しています。記事の主な趣旨は外交~外交~なものですが、KBSは「参議院選挙で圧勝した自民党が、安倍元首相の遺産である改憲推進を予告しており、各懸案も現在進行形であるだけに、すぐに目立つ変化を期待するのはむずかしいという観測もあります」としながら、国立外交院日本研究センター責任ジョヤンヒョン教授の言葉を紹介しています。

「日本としては(弔問を)歓迎するだろうけど、いろいろ懸案があるので、関係を本格的に動かす材料にするには、足りないのではないでしょうか」、と。控えめに言っていますが、『弔問として歓迎するだろうけど、それ以外の意味を期待するほどではない』という意味です。KBSと中央日報の該当部分は、引用してみます。

 

<<・・「岸田首相は、国家間の約束を守らなければならない」という見解を総理就任後も何度も明らかにしたことがある。イホンモ教授は、「日本政府は、韓国側に解決策を要求している。韓国政府が解決策を出さない限り、日本政府の既存の​​態度は変わらないと思う」と見通した。さらに、安倍元首相の追悼の雰囲気が、参議院選挙以降も相当期間続く可能性が大きい状況で、岸田首相が短期間内に政策転換を図るとは思えない、との見方もある。イ教授は「すぐに韓日関係が好転するとは思えない」とし、自民党を支持する層を気にしなければならない岸田首相が、懸案で容易に譲歩するのは難しいだろう、という見解を提示した・・(KBS)>>

<<・・イチャンミン韓国外大融合日本地域学科教授は、「安倍元首相と同様に岸田首相も韓国が解決策を提示しなければならないという立場なだけに、早急な協議を望む韓国と、熟議する過程のない解決策を警戒する日本の温度差が、大きくなる可能性がある」とし、「特に日本は、過度に速いテンポでの韓日関係改善の動きを見せるユン政権に、かなり負担を感じている状況だ。安倍元首相のことで混乱している中、韓国が「急いで」関係 を回復しようと言うなら、逆効果になることもありえる」と話した・・(中央日報)>>

 

妙なのは、専門家とされる人たちがここまで言っているのに、記事のメインテーマは弔問外交を肯定的に捉えている点です。弔問しに来るという人たちに対して、本当にこんなことはあまり書きたくありませんが・・もし「手を差し伸べる」パターンの考えを持っているなら、それはただの失礼でしかありません。

あと、最後に、あまり話題にはなりませんが、尹大統領と文在寅前大統領が弔慰を示し、相応の哀悼メッセージも出したのは多くのメディアが報じていますが、朴槿恵氏が昭恵夫人に弔慰を示したことはあまり報じられていません。文化日報によると、『赦免されたばかりという立場もあるので、目立たない形で、昭恵夫人に哀悼メッセージを伝えた』となっています。

 

 

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