尹大統領「米韓首脳会談で合意した『外国為替市場の安定のための協力』を深く議論してほしい」 ・・しかし、 イエレン長官は通貨スワップに言及せず

外相会談ばかり気にして、なにか忘れているような・・と思ったら、進撃のイエレン財務長官が訪韓していました。朴振(パクジン)外交部長官の岸田総理 表敬訪問は、「関係改善の意志を伝えた」ぐらいしか記事が出てないので、今日はイエレン財務長官の訪韓、通貨スワップ関連の情報をエントリーしてみます。

政府側からするとまた違うかもしれませんが、少なくともメディア側が今回のイエレン財務長官訪韓関連でもっとも記事を出していたのは、通貨スワップです。「米韓首脳会談のとき、通貨価値関連で『協力する』と話したので、それを具体的に実行するときが来た」、「韓国が米国側に立って対中政策に同調しているから、日本と同じく常設通貨スワップを結ぶべきだ」、などなどです。もっとも最近の過去エントリー(「対中牽制に参加したから米韓通貨スワップの常設化を要求しよう」)を一つリンクしますので、未読の方は参考にしてください。

 

しかし、結論からすると、大統領自らイエレン長官に会って、それらしい話(スワップとは言ってませんが)をしたにも関わらず、今回も米韓通貨スワップはありませんでした。本当なら、各メディアが「なぜだ!」と騒いでもおかしくない状況ですが・・米韓首脳会談のときと同じく、必要以上に良い方向に解釈する記事が主流となっています。

「通貨スワップの可能性を開けておいた」、「通貨スワップに準ずる内容だ」、「通貨スワップの議論を始めたものだと思われる」、などです。例えば朝鮮日報の場合、「チュギョンホ副首相兼企画財政部長官は19日、『韓米両国が必要時(外貨)流動性供給装置など多様な協力案を実行する余力があることに認識を共有した』とし『外国為替問題に対して先制的に適切に協力していくことに合意した』と明らかにした」としながら、「通貨スワップの可能性を開けておいた」と、ものすごく肯定的に報じています。米韓首脳会談のときに、すでに似たような内容を両首脳が話しましだ。あのときも、各メディアは「通貨スワップについての調整を始めるという意味だ」などと、今回と同じ流れの記事を書いていました。

 

ただ、全てのメディアがそうだという意味でもありません。一部は、「大統領まで出てきて、結局スワップはなかった」など、もう少し率直な記事を載せています。例えばEBN産業経済は「当局の首長が出たが、通貨スワップの知らせは無く」という記事で、「尹錫悦(ユンソンニョル)大統領と外国為替当局首長(※韓国銀行総裁のことです)がジャネット・イエレン米財務長官との会同したが、具体的な通貨スワップ議論には進捗がなかったと見られる。安全装置とされている韓米通貨スワップに関して、イエレン長官がこれといったメッセージを出さなかったからだ」と書いています。

記事によると、ユン大統領が「両国首脳間の合意(※米韓首脳会談)の趣旨により、経済安全保障同盟強化の側面で、外国為替市場の安定のための多様な方式の実質的な協力案を両国当局間で深く議論してほしい」と話したとのことですが・・普通に両国が協力しあいましょうという内容ならともかく、見方によっては、「前に会った時にそう言ったじゃないか。それを早く実質的なものにしてほしい」と、ちょっと急いでいる(急かしている?)ような、そんな感じがします。

 

通貨スワップに反対する人たちは、「そんなことをすると『何か問題があるのか』という疑問を巻き起こす逆効果しかない」としています。本当にそうなら、大統領がイエレン財務長官にこんな話をし、それがここまでクローズアップされるのも、ちょっと不自然ではあります。イエレン財務長官は、韓国の企画財政部のチュ長官とも会談しました、そのことでも、国民日報は社説で、『通貨スワップは議題にもならなかった』としながら、先リンクした過去エントリーと同じく、「米国が損をすることがあっても、価値同盟である韓国のために通貨スワップを結ぶべきだ」と主張しています。これはちょっと引用してみます。<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・韓国側の関心事項である韓米通貨スワップ締結は、公式議題に含まれなかった。両国は「必要に応じて流動性供給装置など多様な協力案を実行する余力がある」とマニュアル的な立場だけを確認した。通貨スワップに対する韓国の関心が大きいだけに、米連邦準備制度議長出身のイエレン長官が一助してほしい・・・・もちろん、通貨スワップに対する両国の利害関係は必ずしも一致していない。米国も物価上昇率が41年ぶりに最高水準だ。ドルの弱さと輸入物価の上昇を招く通貨スワップ締結は容易ではないだろう。

しかし、価値同盟を叫びながら利益だけを取り、相手が希望する事項から目をそらすことは、正道ではない。シンハクチョルLG化学副会長はイエレン長官の訪問に合わせ、「米国内のバッテリーサプライチェーン投資額が2025年までに110億ドルほどになるだろう」と話した。去る5月、ジョー・バイデン米大統領訪韓の時は、現代車が105億ドルの対米投資計画を出した。韓米首脳は当時「外国為替市場動向に関して緊密に協議する必要性を認識した」と発表した。いま、(※米国は)同盟国に、その結果を見せる時が来たのだ>>

 

さぁ、どうでしょうか。以下は個人的な考えにすぎませんが・・米韓首脳会談のときも、韓国側が「通貨スワップがだめなら、それっぽい内容を入れてほしい」と頼んで、米国側としては、マニュアル的な内容だから入れてもいいかな、と思ったかもしれません。それで出てきたのが、「市場動向に関して緊密に協議する必要性」という曖昧な表現でしょう。米国側も、まさかあとになって「実行してほしい」と言われるとは、思わなかったのでしょう。次の更新は、17時頃になります。

 

 

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