韓国紙「対中牽制に参加したから、米韓通貨スワップの常設化を要求しよう」

米国のジャネット・イエレン財務長官の訪韓(19日)関連で、またもや、米韓通貨スワップ関連記事が増えてきました。今回は専門家だけでなく、国会議員など政治家たちも積極的に通貨スワップを主張している、とのことでして。

関連記事の中でも特に気になるのが、ニュース1など複数のメディアが報じている、『米韓首脳会談の前に、通貨スワップを(政府ではなく国会レベルで)議論しようとして、失敗した』とする内容です。与党である「国民の力」政策委の議長のソンイルジョン議長は、バイデン米国大統領が去る5月に首脳会談のため訪韓した際、首脳会談の前に、非公開で韓米通貨スワップ再開を推進するための会議を推進したものの、実現できなかったと話しました。12日の記事なので、こちらを先にします。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・ソン議長はこの日、KBSラジオとのインタビューで、「事実、バイデン大統領が訪韓したとき、私が立ち上がって、アメリカ大使、駐韓アメリカ商工会議所、韓米協会などの方々と直接会議をしながら、バイデン大統領が訪韓したときに、尹大統領の力になるために、(※米韓通貨スワップ関連の)会議を推進したことがある」と述べた・・・・理由は明らかにしなかったが、不発だったと思われる。ソン議長は「ところが、通貨スワップは、秘密とする部分があって、会議はできなかった」とし、「通貨スワップを推進しているとハッキリ後悔するのも、どうかとおもった」とした・・>>

 

さて、どうでしょう。どんな会議を、どんなレベルで行おうとしたのかは分かりませんが、会議してうまくいかなかったのではなく、『会議そのものができなかった』というと、これは大使を含めて米国側がNOを示したと見ていいでしょう。これを「大統領の力になろうとした」とわざわざ発表するのもどうかとは思いますが。でも、こんな状況であるにもかかわらず(5月から何か変わったとも思えません)、今回、またまた米韓通貨スワップ関連記事が溢れています。

特に、最近はちょっと大人しくなったかなと思っていた、「常設化」関連記事が増えてきました。米国は、日本と常設通貨スワップしているから、韓国もそんな『権利』はもらって当然だ、という趣旨の記事がほとんどです。その中でも、韓国経済の記事を一つ紹介します。もう米国の対中政策において韓国の存在は日本と同じレベルまでなったので、堂々と常設通貨スワップを「『要求』しよう(記事の題の直訳)」、という内容です。「中国牽制に参加した(してやった)」から、「米国に経済的な支えとして通貨スワップ常設化は当然だ」、というのです。

 

<<・・ジョー・バイデン大統領訪韓の時も、韓国は米国が提案したアジア・太平洋経済フレームワーク(IPEF)に参加し、韓国企業の半導体、バッテリーなど戦略的に重要な産業の莫大な対米投資を約束し、米国が構想しているグローバル安保サプライチェーンに重要な一軸として、米国の重要な経済安全保障同盟であることを確実に示した。米国が推進している対中政策において、日本とともに、韓国は東アジアの重要な拠点であることは言うまでもない。特にバイデンが訪韓するとすぐにサムスン電子半導体工場を先に訪れたように、韓国は半導体など重要な資産を供給している。

 

しかし、このような韓国の『韓米同盟を選択したこと』は、無償で行われるものではない。特に、中国の反発がある。中国は韓国輸出の23%を占めている第1の輸出市場で、2万8400社余りの韓国企業が867億ドルを投資している国だ。ロシアにも韓国企業653社が31億ドルを投資している。韓国も相当な覚悟が必要なのだ。これだけでなく、韓国は米国の金利引き上げラッシュで外国人投資資金が相次いで流出し、外国為替保有額が減少している。上半期の貿易収支赤字は103億ドルで、1997年の為替危機当時91億6000万ドルの赤字を上回り、上半期基準の歴代最大規模を記録するなど、警告が続いている。韓国は韓米通貨スワップが必要なのが実情だ。

米国は、日本とは常時無制限の通貨スワップを締結し、同盟を保護している。米国は、同盟国として認められている英国、ユーロ圏、スイス、カナダ、日本などと常時無制限の通貨スワップを提供し、経済安全保障を支持している。経済が安定してこそ、同盟としての役割もできるのだ。韓国も東アジアで米国の隊中政策で重要な同盟として浮上しているだけに、日本と同じ常時通貨スワップを強く要請しなければならない>>

 

尹錫悦(ユンソンニョル)大統領が当選した直後から、韓国メディア及び専門家たちの意見には、「すでに日韓・日米関係は『復元された』」とする前提がありました。本ブログでも紹介しましたが、選挙の後すぐ、「尹氏が当選したのに、なんで日本は佐渡島の金山の世界遺産登録をやめないのか」というニュアンスの記事が載ったりもしました。米国に対してもこの流れは(日本ほどではないにせよ)同じで、すでに米韓関係、米韓同盟は復元済みだ、ということになっています。もうちょっと変わった書き方をするなら、『尹政権を選んだこと事態が、日米に恩を売ったのだ』とする、そんなスタンスです。

 

しかし、それは違います。そもそも、現実では復元も出来ていませんけど、もし復元できたとしても、『復元しないといけない』状況なら、その原因を提供したのはどこか。復元が必要な状況を作ったのが『どこの国』なのか、それについては、どのメディアも、どの専門家も指摘しないでいます。米国に対してもそうですが、日本に対して特にそうで、『復元』『戻す』などを語りながらも、韓国側は必ず何かのプラスアルファ、追加の利を得ようとします。今回も、本文には「強く要請」となっているものの、題は『要求しよう』になっています。この堂々とした姿勢は、そんな利得を『当然のもの』と考えてこそのものでありましょう。まずは、『復元する責任がどの国にあるのか』をしっかり認めなければ、米韓、日韓関係が変わることはないでしょう。

 

 

・以下、コメント・拙著のご紹介・お知らせなどです
エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。

 ・様のおかげで、こうして新刊・準新刊のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2022年6月1日発売)からですが、<日本人を日本人たらしめているものはなにか~韓国人による日韓比較論~>です。アマゾンページに書いてある、「私はただ、日本が好きだから、日本人として生きたいと思っています」本書の全てを表していると言えるでしょう。そんな本です。 ・新刊<「自由な国」日本「不自由な国」韓国 韓国人による日韓比較論 (扶桑社新書) >は、日本滞在4年目に感じた「日常」と、ラムザイヤー教授論文騒ぎにまつわる、日韓の対応の差などをまとめました。2021年発売版に、相応の追記を致した新書版です。 ・国に蔓延する対日観、『卑日』について考察した<卑日(扶桑社新書)>も発売中です。なぜ今の韓国に、日本に対する『卑』が必要なのか。それを自分なりに考察、率直に書きました。・刊・準新刊の詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。旧「インフォメーション」もこちらに統合してあります・当に、本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。