経済学教授、韓国銀行の外貨保有高を懸念・・「いざというときに使える分が少ない」

米国の金利引き上げ、通貨安、物価高。そんな中、もう数ヶ月も続いている、米韓、または日韓通貨スワップ関連の話題。バイデン大統領、イエレン財務長官の訪韓の際には本当に大きな話題になっていましたが、ご存知、これといった成果は報じられていません。最近は「通貨スワップは必要ない」という意見を出す人が増えてきましたが、それならイエレン財務長官訪韓の前に言ってほしかったところであります。もちろん、その前から持論として通貨スワップにこだわる必要はないと一貫して主張する人たちもいますけど。

逆に、専門家の中には、『現在の外貨保有高において、すぐ使える(現金、またはすぐ回収できる)分がどれぐらいあるのか』について話す人たちもいます。それこそが重要であり、例えば、『2008年にも外貨保有高には余裕があると言われていたが、日米との通貨スワップが無かったら、どうなったことか』などの指摘です。今日は、カリフォルニア大学の経済学教授出身で、現・淑明(スクミョン)女子大学校経済学名誉教授であるシンセドン氏の、ソウル経済寄稿文を紹介します。教授は、1997年は言うまでもなく、2008年も、台湾やインドとは違い、韓国は通貨スワップの分に頼るしかなかったとしながら、こういう現象は『すぐ使える分』に問題があるから、と指摘しています。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・2022年6月現在、韓国の外国為替保有額は4383億ドルだ・・・・外国為替保有額がいくら多いといっても、急迫した状況で利用できない外貨資産なら、それは何の役にも立たない。「利用できない資産」というものは、帳簿上にのみ存在するだけで、使うことができないからだ。そんな資産があるのか、と思われるかもしれないが、実際に、存在する。1997年に国際通貨基金(IMF)問題が発生した当時(※韓国ではこの時期そのものを『IMF時期』『IMF事態』などと呼びます)、韓国の公式外国為替保有額は204億1000万ドルだったが、利用可能な外国為替保有額は88億7000万ドルに過ぎなかった。

国内銀行の海外支店に預けておいた金は、韓国銀行からすると外国為替保有額の一部だったが、ほとんどが不実な運用によるもので、すぐに回収できない資産だったのだ。当時、IMF緊急救済金融規模が160億ドルだったことから、国内銀行が海外店舗預金​​だけよく管理していたとしても、IMF事態を予防できた、あるいはIMF救済金融の規模をはるかに縮小できたことだろう。外国為替保有額が大きかったにもかかわらず、その運用において問題が発生したのは、2008年も変わらない。

 

2008年の金融危機発生直前の2007年、外国為替保有額は2618億ドルで、名目GDPの22.3%に達した。それにもかかわらず、米国・日本とそれぞれ300億ドルと200億ドル、合わせて500億ドルの中央銀行通貨スワップをするしかなかったのは、韓国の外国為替保有額がほとんど債券中心で運用され、緊急な流動性を調達できなかったためだと判断される。 2007~2008年、韓国の外国為替保有額が2000億ドルをはるかに上回ったにもかかわらず、米国・日本及び中国の中央銀行との緊急流動性スワップ契約を締結したのは、現金性(※現金のように使える)資産の割合が7~8%に過ぎず、残りの92%以上を国債・公債あるいは社債株式の形だったためだ。台湾やインド、サウジアラビアは、米国や日本との通貨スワップを締結しなかった。保有した外国為替保有額で外国為替流動性問題を自主的に解決できたという防証だ。

このような経験に照らしてみると、外国為替市場を安定させるために第一に、名目GDP比の外国為替保有額の規模を増やさなければならない。現在の24%から今後20年間で40%台に、8000億ドル以上になるようにすべきだ。次に、緊急なときに使える預金の割合を大幅に上げなければならない。現在5%水準で少なくとも30%、金額では2000億ドル以上に上げなければならない(ソウル経済)・・>>

 

さて、どうでしょう。15日にも、世宗大学キムデジョン経営学部教授の見解を紹介したことがあります。その際、キム教授が指摘したのも、今回と同じ趣旨でした(詳しくは、過去エントリーも参考にしてください)。「短期外債比率は34%と非常に高い」、「日本・米国が通貨スワップ締結に応じていない」、「韓国銀行の外国為替保有高は現金が不足しており、運用も問題ばかり」、「国債36%、政府機関債21%、会社債14%、MBS13%、株式7.7%、現金4%」、「2021年、韓国銀行は韓・トルコ通貨スワップにより、1兆ウォンを超える損失を見た。韓銀は外国為替保有高21%を危険性の高いモーゲージ債権に投資しており、損失リスクが非常に高い」、などなどです。

米国、日本との通貨スワップ関連主張は、そもそも「問題が起きない」に越したことはないので、通貨スワップで『市場を安心させよう』という意味もあります。そう考えると、できるならやっておいたほうがいいでしょう。なにせ、ここまで(この記事のようなことを)言われているわけですから。にも関わらず、後になって「必要ない」と主張するのは、さすがにどうかな・・って気がします。いろんな側面で『李明博(イ・ミョンバク)政権に似ている』と言われている、尹錫悦(ユンソンニョル)政権。確か、李明博政権が2008年からでした。あのときのような状況になると、尹政権はどんな対応を見せるのか。注目されます(またもやマニュアル的な終わり方ですみません)。

 

 

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