中国外交部、今度は「韓国政府は『3不1限』を公式に宣誓した」と発表・・政府レベルで『1限』まで言及するのは初めて

「もうやだこの会談」とでも言いましょうか。中国の攻勢が止まりません。ついに、中国外交部(外務省)スポークスマンが、『韓国政府は、3不1限を正式に宣誓した』と公言しました。韓国外交部は「現政権ではなく前の政権(文在寅政権)のことだ」としていますが、中国側は『政権』ではなく『韓国政府』である点を強調しており、また、『1限』まで言及しています。

前から中国『側』は同じ主張をしてきましたが、『政府(外交部)』レベルで3不1限を言い出したのは、初めてです。いままで中国政府は3不(3NO)、すなわち「THAAD追加配置しない、日米韓軍事同盟は無し、米国のミサイル防御システムに入らない」について話したことはあっても、1限(既存THAAD運用を制限する)については、官営メディアが言ったり、中国側の専門家たちが既成事実として話すだけでした。5月の米韓首脳会談のあと、韓国尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、既存THAAD運用の正常化の手続きに着手したばかりです(後述しますが、進展はこれといってありません)。

 

中国の官営メディアや、そこにインタビューが載る専門家というのは、事実上、『中国政府が言おうとしていることを、民間レベルで代わりに言う』役割だったのでしょう。しかし、それでも、今まで政府が直接『1限』について言及したことはありません。それが、中国外交部スポークスマンによって初めて公言されたわけです。しかも、京郷新聞など各紙の報道によると、韓国側が3不1限を守ると『正式に、政治的宣誓をした(原文ママ)』、と。各メディの記事、文章によっては、「宣言」「宣布」「約束」としている場合もありますが、宣誓って、何か、上と下の関係というか、そんなニュアンスです。

韓国政府は、そんなこと言ってない、前政権のことを言っているだけで、とさっそくコメントを出しました。しかし、本当に『約束』『合意』のものなら、次の政権が受け継ぐのは当然です。まず、これが本当に合意・約束なのか、それとも韓国側の主張のように立場表明にすぎないのか、それをハッキリしないとならないわけですが・・ここまで両方の意見が違うと、検証すら難しいかもしれません。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・中国政府は、韓国が、すでに配置済みの既存THAAD(高高度ミサイル防衛システム)の運用制限を意味する「1限」を、対外的に約束したと主張した。これは韓国政府のサード基地の運用正常化に反対するという立場だと解釈され、既存の「3不政策維持」要求から、さらに強くなった主張である。汪文斌(ワンウォンビン)中国外交部スポークスマンは、10日の定例ブリーフィングで、サード問題と関連して、前日、韓中外交長官会談で出てきた「安保懸念」と「適切な処理」という表現(※これについては昨日のエントリーを御覧ください)はどういうものなのか、とする質問に、「米国が韓国にサードを配置したのは、明らかに中国の戦略的安全保障的に問題があるもので、中国は韓国側に何度も懸念を表明した点を指摘したい」と答えた。

ワン・スポークスマンは「韓国政府は、対外的に3不1限の政治的宣誓を、正式に行った」とし「中国側は韓国政府のこのような立場を重視し、韓国側に了解し、中・韓両側は段階的に、安全に、サード問題を処理してきた」と明らかにした。韓国がいわゆる3不に加えて1限まで『約束した』という趣旨の主張をしたのだ。3不は、サードを追加配置せず、米国ミサイル防衛(MD)体系に参加せず、韓米日軍事同盟を推進しないという韓国政府の立場を意味する。1限は、ソンジュ地域に機配されたサードの運用を制限するという意味だ。中国政府が最近、3不は韓国政府の約束だとし、ユンソンニョル政府にも政策維持を要求したが、公開的に1限まで韓国政府の約束だと主張したのは、今回が初めてだ。これは、前日開かれた韓中外交長官会談で、中国側が韓国政府のサード基地正常化推進に反対するという立場を伝達した可能性を示唆する(京郷新聞)・・>>

 

あくまで各記事のアップロード時間による比較ではありますが、これは、朴振(パクジン)長官が、「3不(3NO)は、約束や合意ではない」と記者懇談会で話した、数時間後のことです。韓国政府は、「それは以前の政権(文在寅政権)が話した内容であり、今回の会談で現政権が話したことではない」としながら、中国側の発表に反論しました。でも、反論もなにも、この件だけは、すぐに『行動』として示すことができます。米韓首脳会談(5月)の直後から、ユンソンニョル政権は『既存THAAD部隊の正常運用』を強調しました。

当時、各メディアは、米韓首脳会談に対する後続措置の一つとして、既存のTHAAD基地の運用が正常化されると報じました。国防部は、「そう難しい話ではない」とも話しています。5月23日のソウル経済によると、<<・・国防部が、在韓米軍のTHAAD基地正常化に速度を出す見通しだ。21日、韓米首脳会談で、ジョー・バイデン米大統領が韓国に対してミサイル防御(MD)能力を含む米国の『拡大抑止(※Extended Deterrence、米国が他の国に対し軍事的に対応するという意味)』公約を確認したことによる、後続措置だと解釈される。イ・ジョンソプ国防部長官は23日、ソウル龍山国防部庁舎内の記者室を訪問し、『基地正常化は当然しなければならないこと』、『今までは(文在寅政府が該当問題処理を)うまくやらなかっただけ。もう早いうちに出来る。あまり難しいことはない』と付け加えた・・>>、とのことでして。

 

さぁ、ここで、既存THAAD正常化をパーっと実現すると、韓国政府自ら証明できるのです。1限などは存在しない、中国の言ったことは間違っている!と。「難しいことではない」と長官が言ったわけですし、やればいいでしょう。そう、これで証明できます。やればいいのです。でも、最近のユン政権のスタンスからして、期待薄・・としか思えません。

ちなみに、その「難しいことではない」としていた基地運用の正常化ですが、環境影響評価などはまだ始まってもいません。環境影響評価を推進するためには、「公務員や専門家など10人規模の協議会」を構成する必要がありますが、その中には「住民代表」が必ず含まれなければなりません。それを利用し、市民団体が協議会の構成に参加しないでいるためです。結局、国防部は「住民代表を推薦してほしい」と該当地域(星州郡)にお願いしている状況です(詳しくは7月11日の過去エントリーを参考にしてください)。こんな状況ですから・・1限が合意なのかどうかを語る前に、何もできそうにない、そんな気もします。

 

 

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