訪米した日本・韓国の国会議員団、日本は「台湾問題が心配」、韓国は「インフレ抑止法で韓国を例外に」・・米国側は「インフレ抑止法は議会の問題」との反応

本ブログでも2~3回お伝えしましたが、米国のインフレ抑止法関連で、韓国側の反応がヒートアップしています。すでに産業通商資源部長官自ら『WTOまで持っていくことも、積極的に考えている』と国会で公言しており、外交部は米国大使館の公使を招致し、抗議しました。しかし、訪米していた国会議員団が米国側と話した結果、米国側は『いまのところ、できることはない』との反応を示した、とのことです。

各メディアは、『後頭部』を主張し、同じ趣旨の記事を連日で掲載しています。ネットメディアの場合には、中国のほうがまだマシだ、という記事を載せているところもあります。これまた、似たような文章を何回か書いた記憶がありますが・・もちろん『全て』のメディアというわけではありませんが、ほとんどのメディアは、「尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、始まってからすぐ、完全に米国側についた」を前提にして記事を展開してきました。その影響もあるのかもしれません。

 

それとも、バイデン大統領の訪韓、及び会談の内容より、『日本より先に』という側面が強調しすぎた影響でしょうか。米韓合同軍事演習が再び実起動訓練になるなど(前の文政権ではPCシミュレーションだけでした)ある程度の変化はありますが、それはあくまで復元、しかもその一部。中国関連で積極的な動きを見せない、大統領候補だった頃から言っていたクアッド加入がうまくいかないなど、米韓関係の根本はまだまだ不安定だったにもかかわらず、この『米国側』論調は、いまだ続いています。最近になって、ペロシ議長の件などで、一部のメディアがこの論調に疑問を提起しているだけです。

そんな中、インフレ抑止法が、各メディアには『隙をつかれた』『信じていたのに』などとしか映らなかった、といったところでしょうか。以下、時事ジャーナルマネートゥデイニューシースから引用してみます。それぞれ、全般的な雰囲気、外交が米公使を呼んだこと、そして、訪米中の議員団がこの件を話したものの、これといった成果はなかった、ということが書かれています。ちなみに、日本議員団も一緒に訪米中でしたが、日本側は主に台湾関連の件を相談した、とのことです。

 

<<・・米国国務省の招請でワシントンDCを訪問した与・野党議員たちが、米政府にインフレ抑止法について強い懸念や遺憾を表明したと明らかにした。ジョンジンソク国会副議長をはじめ、与・野訪米議員団は25日(現地時刻)、韓国の電気自動車に対するサ◯ツ的な規定の問題(※◯はベです)に対する国内の懸念の声を強く伝えた」と明らかにした。ジョンジンソク副議長はインフレ抑止法について、「これは韓米自由貿易協定(FTA)と世界貿易機関(WTO)規定からして問題がある」とし「バイデン大統領の訪韓当時、現代自動車は105億ドル規模の天文学的な対米投資計画を発表したのに、直後に米国でこのような措置が出てくるとは、国民は後頭部をたたかれた迎えたと思っている」と話した(時事ジャーナル)・・>>

<<・・韓国外交当局も、水面下で、米側の官僚を呼ぶなど、対応水位を高めたという。外交部はインフレ抑止法を置いて「ロビーをする時間すらなかった」という反応を出しており、政府がWTOなど紛争手続きを公式化するのか、それとも外交的解決策を探るのか、注目される。まず政府内では「すべての可能性を検討中」という反応が出ている・・・・去る24日にはイミヨン米韓経済外交局長が駐韓米大使館公使を呼び強く抗議したと伝えられた。イ局長は11日にも米側と面談したことがある・・

・・外交部当局者は、本部レベルで米政権側と協議する事案について、「一番重要な北米地域で完全に組み立てなければならないという要件が、あまりにも明確であり、米側がそこに対して柔軟性を発揮するのは難しいようだ」とし、「米財務部長官が権限を持つ、バッテリー部品要件、重要な鉱物の方はまだ具体的な事項が決まっていないため、一応、有利な方向に作られるよう努力をしている」とした(マネートゥデイ)・・>>

 

ただ、ニューシースが <<・・「米国政府当局者らは韓国議員団との面談で、「今の状況をよく知っていてし、注視している」としながらも、「議会の決定なので、すぐにこの場でこれといった解決策を出すことはできないので、その点を理解してほしい」という立場を表したことが分かった・・>> としているなど、米国側の反応はパッとしないものだった、とのことです。それもそのはず、2つ前のエントリー(4強外交関連)でもお伝えしましたが、電気自動車補助金支援対象において、韓国にだけ例外を適用するのは難しいという意見が主流となっています。

 

先の時事ジャーナルの記事もまた、「ユン政権は官民合同対応チームを構成して米国との交渉に乗り出そうとしているが、米国は来る11月中間選挙を控えており、当面は対策のしようがない」としています。『~選挙さえ終われば~』パターンがここでも出てくるとは、ちょっと意外です。また、同記事によると、今回の訪米は、日米韓三角同盟の強化のため、米国務省が日本と韓国の議員団を同時に招待して行われたものだったとのことです。しかし、一緒に米国を訪問した日本の国会議員団は、主に台湾問題に対して話していた、とのことです。インフレ抑止法で困っているのは、日本も同じでしょうけど、それを話す『場』については考えていた、ということでしょうか。

韓国側が主張しているのは、もちろん見方にもよりますが、中国側が喜びそうな内容でもあります。そう考えると、なおさらですね。わざわざ引用はしませんが、一応、一部の(あまり知名度は高くないところですが)メディアは『これなら中国のほうがまだいいのでは』とする論調を出すところもあり、また、一部の左側メディアが『やはり、片方にだけ頼るのはリスクがある』とする主張を増やしています。

 

 

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