韓国、8月の経常収支は4ヶ月ぶりの赤字に・・政府は楽観しているものの、一部のメディアが『市場の見方はそうではない』と指摘

朝から、ほぼすべてのメディアが経常収支関連ニュースを出しています。8月の経常収支が、30.5億ドルの赤字になった、とのことでして。去年同月には74億4000万ドルの黒字でした。日本の場合は貿易収支や経常収支関連ニュースがそこまで大きく報じられませんが(なんというか、関心が高くない雰囲気です)、韓国ではいつも貿易収支・経常収支関連が大きな話題になり、特に貿易収支はトップニュース扱いです。日本とは違い、貿易収支に依存する部分が大きいからです。

最近、数ヶ月連続で貿易収支が赤字になったことで、多くのメディアが専門家の意見を引用し相応の危機感を持つべきだと指摘してきましたが、当局や中央銀行側は『問題ない』というスタンスで、その論拠は「外貨保有高に余裕がある」と「経常収支が黒字だから」でした。それらの発言が、また『早すぎた』とでも言いましょうか。これから引用する記事本文にも書いてありますが、今回の通貨安が、前のように『輸出に良い影響を与える』という指摘が、まったく出なくなりました。日本の場合は通貨安が「得になるのかならないのか」そのものが議論になっています。

 

前にも『租税日報』という租税専門メディアの記事を紹介したことがありますが、日本は31年連続で世界最大の債権国であり、5月時点で日本の対外純資産は411兆1841億円ですが、これは前年同期比で15.8%も増加した数値となります(詳しくは9月26日の過去エントリーにて)。対外純資産世界2位のドイツより、約100兆以上も多い数値です。記事はこれを「円安により、海外資産の価値は上がっており、日本側が為替レートに積極的に介入しない理由の一つでもある。海外資産が多いため、ドルで受け取る利子と配当の価値が高くなり、海外不動産価格も上昇するからだ」と見ています。日本が米国、ヨーロッパなどに行った海外投資だけで3兆ドルだそうですから・・ま、そうもなりますね。

とにかく、このように、『貿易以外で得られるもの』が違うのが、韓国で貿易収支に関する記事が盛り上がって(?)いる理由だったりします。もちろん、ただの政権批判のために載せる場合もありますが。そんな中、いままで当局・中央銀行が『大丈夫』の論拠の一つとしていた経常収支が8月に30.5億ドルの赤字になり、多くのメディアが一気に記事を載せたわけです。珍しく、聯合ニュースも『危機説が広がる可能性がある』『もっと重く見るべきだ』とする記事を載せました。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・対外状況悪化が続く中でも経済の支えになっていた経常収支が、再び赤字になった。エネルギーなど原材料の輸入増加で商品収支が2カ月連続で赤字を記録し、輸送や旅行などの悪化でサービス収支まで赤字に転換した。すでに今年の財政収支は赤字だと言われている中、月別基準ではあるが、経常収支まで赤字になり、「双子赤字」(財政収支と経常収支が赤字)の懸念が高まっている・・・・経常収支赤字は外貨需給に影響を及ぼし、通貨安傾向を見せているウォンとドルの為替レートをさらに動かし、最近浮上している「危機説」を拡散させるのではないかと懸念されている。

すでに2次追加経済予算基準で、今年の管理財政収支は110兆8千億ウォンの赤字が見込まれている。コロナ19以後、政府支出が増え、財政収支は2019年から今年まで4年連続で赤字が予想されている。このような中、韓国経済の支えになってきた輸出が揺れ、8月経常収支さえ赤字に転換し、危機説が拡散する可能性があるという懸念が出ている・・

 

・・韓国銀行は8月経常収支赤字転換は貿易収支赤字の影響による一時的なもので、9月に入って貿易赤字が大きく縮小しただけに、経常収支は再び黒字を示す可能性が高いと見ている。対外条件不確実性が大きく、月別では変動性が大きいだろうが、今年年間では黒字基調を維持し、双子赤字が続くようにはならないという説明だ・・・・しかし、一時的とはいえ、今回の経常収支赤字を軽く見てはならないという指摘も出ている。まず「キング・ドル」(ドル高)の状況での経常収支の悪化は、ドル需給に不均衡を引き起こし、ウォンの通貨安をさらにふかくする要因になりえる。

為替レートは先月約14年ぶりに1,400ウォン線を突破した。経常収支赤字により、国内に入ってくるお金よりも出ていくお金のほうが多くなると、通貨価値はさらに下落することになり、これはまた為替レート変動の要因となる。対外負債が増え、元金の返済と利子の負担が大きくなり、これは国家全体の信用等級にも影響を及ぼす。世界経済が不安定になる場合、経常収支が弱い国家ほど、外国資本の急激な流出が発生する可能性が高い。

 

ジンサンモク経済首席秘書官も今年8月のブリーフィングで、経常収支が外貨需給に直接影響を与えることができると指摘したことがある。外国為替当局は先月、ドル売り介入に乗り出し、なんと196億6千万ドルも外貨保有高が減少した。以前のように、為替レートが輸出の増加につながらない状況において、輸入価格の上昇により、ただでさえ高い国内物価がさらに上がり、これが消費減少につながり、全体的な景気後退を招く可能性があるのだ。政府は、中長期的に経常収支の安定的な黒字構造を構築するという立場だ(聯合ニュース)・・>>

引用はしませんが3日(発表前ですが、ほぼ予想されていたようです)、韓国日報も『大丈夫だとしていた論拠の経常収支が赤字になりそうだ』という趣旨の記事を載せました。外貨保有高と経常収支を論拠にしていたのに、外貨保有高は減っているし経常収支も赤字になったから、それは、確かに記者さんたちも呆れるでしょう。

 

 

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