日米韓共同訓練、日米は「対中」、韓国は「対北」・・専門家『日米と同じ戦略的利益を目指すことはできません』

6日に行われた日米韓共同練習が、大きな話題(?)になっています。野党の共に民主党が強く反対しているのもありますが、日本と一緒に軍事訓練を行ったという側面が強調されているためです。しかし、この手の共同訓練、実は2011年から『遭難船舶の捜索など』のために行ってきたもので、2016年からはミサイル警報訓練が追加されました。朝鮮日報によると、文在寅政権でも実施されました。2016年からだと朴槿恵政権・文在寅政権となりますが、各政権ともに『北朝鮮ミサイルの早期警報のため』という名分にはどうしようもなくOKした、とも。ただし、文在寅政権では、北朝鮮が怒るかもしれないから(多分)、訓練そのものを非公開にしていました。

あくまで『有事の際』を前提にした米韓共同訓練は実起動なしでシミュレーションだけにしてきた文政権でも、一応、この警報訓練は行ったわけです。前にも何度か書いたことがありますが、国内では『完全に米国側に舵をきった』『米韓同盟はアップグレードした』ということになっているし、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領がアップグレード、価値同盟、そんな言葉を強調していることもあって、なんというか、いままでにない新しい措置でも取っているかのように報じられる側面がありますが、実は尹大統領が米韓同盟関連でやっていることは、『部分的な復元』にすぎないわけです。以下、まずはちょっとだけ朝鮮日報から引用してみます。

 

<<・・これまで実施された日米韓3国連合訓練は、捜索・救助、ミサイル検知・追跡(警報)、対潜水艦など大きく3つの分野からなる。このうち、捜索救助訓練は、遭難した船舶の捜索や救助は2011年から実施されている。ミサイル探知・追跡訓練は、北朝鮮が弾道ミサイルを相次いで発射し、3国とも必要性に共感、2016年6月に始まった。文在寅(ムン・ジェイン)政権だった2018年以降もほぼ毎年実施されたが、北朝鮮を気にして訓練が行われたことを公開しなかった。場所は日韓の海域で実施したことが多い。文政権の時も日米韓訓練が数回実施されたのだ。訓練は主に仮想の北朝鮮ミサイルを三国のイージス艦が追跡し、情報を共有する方式でなされた(朝鮮日報)・・>>

 

このように、訓練そのものは前から行っていたものに対して騒ぎが起こっているだけでも妙な展開ですが・・問題は、尹政権もまた、日米とは別のところを見ている点です。本件は、メディアが右側なのか左側なのかで報じる内容がまったく異なりますが、ある程度共通する部分もあります。それは、これ以上米韓または日米韓での安保強化(訓練の強化など)は『中露を刺激する』おそれがあるので、それだけは避けなけれなならない、日米と戦略的観点を完全に同じにしてはならない、という主張です。日本で言えばNHKのような立場である、KBSの記事ですが、元国防部スポークスマンが出てきて『日米と戦略的観点を共にしてはならない』と話すとは、なかなか印象的です。

 

<<・・(※今以上に)日米韓三国軍事協力が強化されるなら、私たちには具体的に何を得て、何を失うことになるのでしょうか。日本との軍事協力を拡大すれば、北朝鮮の軍事的脅威に対する迅速な対応に役立つという分析があります。海上自衛隊は、機雷を除去する小海戦と対潜戦ではアジア最高と言われています。また、北朝鮮による有事の際、日本にある国連軍司令部の7つの後方基地から、兵力と装備の支援を受ける海上交通路を安全に確保できるとされています。私たちはまだちゃんとした軍事偵察衛星を持ってないのに、日本は8つの偵察衛星を保有している点にも、注目しなければなりません・・

・・問題は、日米韓三国協力を見る観点と、期待している利益が、異なるという点です。韓国は北朝鮮核抑止を中心とした、対北朝鮮での共助に重点を置いていますが、米国はインド太平洋戦略の強化と、対中牽制に、日本は対中牽制と防衛力増強などに焦点を当てています。【ブ・シュンチャン/元国防部スポークスマン「日米の戦略的利益と、韓国の戦略的利益を同じものだと考えて戦略を樹立するのは、かなり大きな域内安全保障不安を引き起こす可能性があるし、そして、中露と完全に対立してしまう可能性だってある・・」】

 

【リュ・ソンヨプ/21世紀軍事研究所専門委員「互いに協力が必要ではあるが、問題は、その協力の条件です。広開土大王艦に対して哨戒機が近接飛行した(※レーダー照射問題)事例、そんな事例が挙げられます」】。 北朝鮮の軍事的脅威に対抗した日米韓の対応も素早くなっていものの、今月16日の中国共産党党大会と来月8日米国中間選挙を控え、事実上、『新冷戦』の国際秩序を活用した北朝鮮の戦略的挑発が続くのではないかという懸念も大きくなってあります(KBS)・・>>

これはこれで戦略的曖昧さ(あえてどちらかに傾かず、両方から得をする)かもしれませんが・・半導体などもそうですが、いまの、そして今までの立ち位置がどうなっているのか。すなわち『状況の一部』たる考えがかけているのではないか・・いつものことですが、今回もそんなところでしょう。

 

 

 

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