一部の韓国メディア、現金化解法案を『併存的債務引受』と報じる・・今日の局長級協議で議題にした可能性も

ちなみに、今日午前10時あたりから日韓局長級協議が開かれた・・とのことですが、もう午後になったのに関連ユースがほとんど目に付きません。『協議した』『議論したと思われる』などの記事だけです。「日韓外交当局が今日、ソウルで両国の外交懸案を議論する局長級協議を開催しました」、「両国は、今日の協議で現金化や安保協力など、両国の懸案を包括的に議論したと伝えられました」、「局長級協議は8月26日東京での協議から1ヶ月半ぶりです」ぐらいの内容だけです。

一つ前のエントリーでも書きましたが、例の駐日韓国大使の発言などで、『両国がそろそろスピードを出す』という予想が盛り上がっていましたが・・どうやら、期待していたほどの反応はなかった、といったところでしょうか。そもそも、局長級協議の日本側代表として参加した船越健裕アジア大洋州局長は、明日、キムゴン北朝鮮核問題担当首席代表と会談を予定しており、どちらかというと、そちらがメインになるでしょう。定期的に開いている協議だから、日程を合わせて1回の訪韓で済むようにしたのではないでしょうか。本エントリーを公開してから関連ニュースがまた出てくる可能性もありますが、もしなにかあったら明日の午前にでもお伝えできればと思います。

 

で、ここからはその関連記事で出てきた内容ですが・・いままで拙著や本ブログで、無数に『代位弁済』を取り上げてきました。文在寅政権でも、尹錫悦(ユンソンニョル)政権でも、いつも現金化解決案としてこの件が話題になったからです。あとで日本側に求償権を請求するのかどうかで、重鎮国会議員が産経新聞とのインタビューで『請求すると思うか(しない)』と話したりもしたものの、国会では『あとで請求する』が前提になっていたりもしました。そんなところ、聯合ニュースなど一部のメディアから「併存的債務引受」という言葉が出てくるようになったので、紹介します。内容的にはあまり変わっていませんが、(取材かなにかで)少しだけ具体的になった、といったところでしょうか。

国税庁ホームページから引用しますと、「併存的債務引受とは、引受人は新たに同一内容の債務を負担するが、債務者も依然として債務を負担し、債務者と引受人が連帯債務関係に入ることをいいます」、とのこと。韓国側の説明もほぼ同じで、「従来債務者の債務を免除しない状態で、買収人(※新しく引き受けた人)である第三者が債権関係に加入し、従来の債務者と同等の内容の債務を負担する債務引受方法」となっています。すなわち、日本側の企業が支払うことには何の変わりもなく、ただ『第三者』がその一部を肩代わりするという意味になります。その『第三者』には、政府は関わらない、とも。いままで知られてきた『基金案』が、それっぽい法律用語として具体化した、とでも言いましょうか。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・日韓外交当局が11日、ソウルで両国の外交懸案を議論する局長級協議を開催した。イサンリョル外交部アジア太平洋局長と船越健裕外務省アジア大洋主局長はこの日午前、ソウル鍾路区外交部庁舎で国長級協議を開いたと外交部が明らかにした。船越局長は、局長級協議のためにこの日午前10時頃に外交部庁舎に到着した。韓日局長級協議は、8月26日に東京で開かれて以来、1ヶ月半ぶりのことだ。前の協議当時と同様、今回の協議でも、核心懸案である現金化解決方案が集中的に議論されるものと観測される。

特に今回の協議は、尹錫悦大統領と岸田文雄首相が先月、ニューヨーク会合で「懸案を解決して両国関係を改善する必要性に共感し、そのために外交当局の対話を加速化する」ことを両国外交当局に指示した後に開催され、注目される。ユンドクミン大使は去る9日、駐日大使館に対する国政監査で、ニューヨークでの会談をきっかけに「両国関係が解氷しつつあると感じている」と明らかにしたことがある。韓国が模索してきた解決法に対し、日本側が意味のある反応を見せるか、注目される。

 

政府はこれまで4回にわたって開かれた民官協議会議論を通じて各界の意見を集め、いまは範囲を広げて国内での疎通作業を別途推進中だ。具体的な解法としては、債務者の債務はそのまま存在するが、他の第三者が新たに同じ債務を引き受ける「併存的債務引受」案などが挙げられている。外交部は、民官協議会の活動を通じ、政府予算で債務を買収(※引受)することは望ましくないという意見を集めたという。

この日の協議では、北朝鮮の核問題のリスクが高まる中、両国の安保協力を進展させる方案についても意見交換があるか注目される。北核首席代表でもある船越局長は、12日午前、キムゴン外交部平和交渉本部長と北核首席代表協議も進行する予定だ。両側の核首席代表は、北朝鮮の核・ミサイル脅威に対応するための両国安保協力と国際社会共助方案などについて議論するものと見込まれる(聯合ニュース)・・>>

 

いままでは単純に『代位弁済』『基金案』などとされていた政府公式案が、一部のメディアの記事とはいえ、少しずつ具体的に出てくるようになった・・かどうかの前に、中身は文在寅政権のときの『基金案』と同じです。核心内容において進展があるとは言えず、例の最高裁判決が『基本条約そのもの』、すなわち国家間の約束に関わるものであるという側面は、何一つ含まれていません。いままでの『日本の一貫した立場』とは、条約そのものに関するものであり、決して『肩代わりするからもうこれでいいだろう』なものではなかったはずです。しかも、いまのところ、徹底して『民間』を主体にしており、政府レベル、国家レベルで何かを修正したり進展させたりするという側面も、まったく見えてきません。

今回の局長級協議で本当にこの案が議題になったのかは、まだ分かりません。しかし、前の外相会談でも似たような内容を話したというニュースがあったし、何かの形で言及はあっただろうと思われます。さすがに、このような案で岸田総理の基本スタンスが揺れることはないと思いますが、なにがあっても、いままでの『日本の一貫した立場に基づいて』という言葉だけは、これからも守り続けてほしいと切に願ってやみません。

 

 

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