韓国、金利引き上げにより、融資の満期延長に失敗する人が続出・・実例として、わずか1年で銀行から受けられる貸し出しの限度額が1300万円減少

最近、基準金利の引き上げによる副作用を、複数の韓国メディアが様々な側面から取り上げています。いわゆるハウスプア、ジョンセ保証金、プロジェクト・ファイナンスの危機、不動産価格の下落、もちろん、約1800兆ウォンとされ、国内外から問題視されている家計負債の側面も。本ブログも頑張ってこれらの情報をできる限り重複しないように(全体的にはどうしても似たような内容になりますが、せめてそれぞれ別の側面をお見せする形で)エントリーしてきましたが、それらの内容を書きながら、一つ気になることがありました。「これ、受けられる貸し出しの『限度』が減るのでは?」です。

どういうことかといいますと、1年前に銀行から1億円の貸し出しを受けた人がいるとします。1年後に満期延長を申し込んだら、「8000万円までしか貸出できないので、2千万円は返してください」と言われる、そんなシチュエーションです。人とシチュエーションにもよりますが、あまり考えたくない場面でもあります。その2千万円は、どうするのか。いわゆるサグミュン(私的な金融という意味で、『ヤミ○ン』のことです)に行くしかない、と。マネーSヘラルド経済が、この件を実例付きで記事にしていますので、長く説明するより、該当部分を引用してみます。住宅担保などもあり、この手のニュースにしては、決して悪くないポジションの人の例となります。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・例えば、昨年末、年8000万ウォンを受け取る会社員が、信用(担保なし)でローン5000万ウォンを保有したまま、住宅担保ローンを最大限まで受けたとすると、限度はDSR40%適用された2億4170万ウォンを受け取ることができた(※DSRとは、年間総所得において、年間元利金の総償還額が占める割合のことです。普通の金融機関では、これが40%までしか貸出を受けることができません)。この時、利息は住宅担保30年満期で1031万4112ウォン、信用ローンで250万ウォンが発生し、合計1281万4112ウォンとなる。

しかし、今年末の住宅担保ローンの金利が8%、信用ローンが9%に上がる場合(※すでに、それぞれ7%台、8%台になっています)、住宅担保貸出の限度は1億790万ウォンまで減少する。金利が上がったので、返済しなければならない元利金が増え、総額としての貸出の限度が減ってしまったからだ。この場合、利子は住宅担保30年満期で859万9426ウォン、信用ローン450万ウォンで、計1309万9426ウォンだ。 1年前より、受けられる貸し出しの限度は1億3380ウォンも減ったのに、元利金は28万6314ウォン増加したことになる。銀行関係者は、「米国が4連続で基準金利を0.75%ポイント上げる『ジャイアント・ステップ』を行うと、利息はさらに増えるだとう」、「無理してローンを受けた人は、金利引き上げの影響をもろに受けることになるだろう」と話した(マネーS)・・>>

 

じゃ、この場合、この会社員さんが受けられる貸し出し額は、2億4170万ウォンから1億790万ウォンに、1億3380万ウォン減少しました。これは返済するしかありません。いや、これ、何も知らないで満期延長のために銀行に行った人なら、その場で言葉を失うことでしょう。記事は『新しく家を購入した人』の話でこの会社員の事例を紹介していますが、ということは、このローンは家を買うためのものでしょう。多分、買う予定の家をそのまま担保にしてのもの、ということでしょうが・・その家の価格が下がったり、売ろうとしても売れなかったりした場合は、なおさらです。でも、それでも、ちゃんとした銀行でローンを組んで悩んでいるこの会社員の場合は、まだまだマシです。普通の銀行(第1金融圏)で貸し出しが受けられなくなった人たちは、貯蓄銀行など「第2金融圏」にいくしかありません。ハードルは低いですが、利息が高いところです。

 

でも、そこでもうまく行かなかったら、貸付業者に行くしかありません。ここは、家計負債などの統計には入らないものの、一応、合法的に営業している会社です。そこでもうまく行かなかったら、サグミュンしかありません。ここからヘラルド経済の記事ですが、このような状況下で、国会議員たちが出す案は、『法律で決める最高金利(上限金利)を低くすればいいだろう』というものです。しかし、それは逆効果です。貸付業者も、ハイリスク・ハイリターン(ちょっとリスクのある人たちを相手にするけど、利息が高いのでその分の利益が出る)だからやっているだけでして。上限金利を引き下げると、貸付業者(合法なところ)は、もう誰にもお金を貸さなくなるだけ。サグミュンに追い込む結果にしかならない、という指摘です。

 

<<・・上限金利をさらに下げなければならないという法案が、5件も発議されている。これらの法案はすべて上限金利を12~15%水準に下げなければならないという内容である。上限金利を下げるのは、脆弱な階層のためだというが、逆説的に、さらに融資が受けられなくなっている。金融監督院の2021年下半期の貸付業実態調査結果によると、昨年12月末基準、貸付業者の融資残高は14兆6429億ウォンだった。このうち、担保融資が741億ウォン増え、信用ローンの割合48.0%を超えた。信用融資の割合が減ったということは、担保が用意できない人たちに対する融資が減少したという意味になる。

貯蓄銀行も同じだ。個人信用ローン3億ウォン以上を扱った貯蓄銀行のうち、同じレベルの信用を持つ人でも、3月末には4ヶ所が『貸し出し不可』をしたが、8月末には11ヶ所が不可だった。信用ローンの取り扱いそのものを中断した貯蓄銀行も増えている・・基準金利引き上げにより、調達費用が上昇し、損失を最小化するためには貸出の金利を上げなければならないが、上限が20%になっているため、ローンの対象を選ぶしかなくなったのだ・・・・ジョソンモク金融研究院長は、「上限金利を引き下げるというのは、人気のための政治的な発言にすぎない」という。ジョ院長は、さらに下げようとすると、貸付業が存在する趣旨そのものが無くなると指摘した。「上限金利を下げれば下げるほど、サグミュンはさらに力を増すこととなり、貸付業もアンダーグラウンドに入るしかない」と話した(ヘラルド経済)・・>>

 

一時、上限金利がものすごく高いことで(40%台でした)有名でした。いまは日本と同じレベルで20%になっていますが、これを12~15%まで下げるべきだ、とする声もあるということですが・・家計債務の構造、例えば全体の規模や多重債務者の多さなどが日本とは全然違うため(日本の場合OECD平均値より少ない方です)、いまは上限金利をむしろ上げることになっても、合法的に調べられる範囲内で貸し出しが受けられるようにするのは先決だ・・という主張です。この手の話、旧ブログの頃からずっと書いてきましたが、何も変わっていないようです。そういえば、朴槿恵大統領が『サグミュンなどの陽性化(合法化)』を掲げたのも、結局は同じ理由でした。

 

 

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