韓国、平均年利229%の世界に流る人が急増し、ついに政府が「10万円まで生活費を貸し出す」案を検討

最近、上限金利について書くことが多くなりました。家計債務がGDPを超えており、国際金融協会IIF基準だと世界1位、国際決済銀行BIS基準だと世界3位(4位から3位になりました)。経済活動人口が約2800万人なのに、公式に確認された多重債務者だけで452万人。こんな状態だと、いわゆつサブプライムローンが拡大します。金利が高くても借りないとならない人たちが増え、相応のリスクがあっても彼らにお金を貸し出す業者の関係が広がるわけです。

しかし、高い金利を受け取るのはわるいことだとする、視野のせまい政策のもと、韓国は上限金利を下げてきました。2002年66%から、どんどん減って、去年7月からは20%になりました。しかし、「本当に後がない人たちは、『給料が上がる』のを望んでおらず、『いまの仕事が続けられること』を望んでいる」という言葉があります。本当に家計債務で困っている人たちが望むのは、上限金利が引き下げられるのではなく、なんどか制度圏内で(合法的な形で)、金利が高くても何とか相手してもらえる、そんな業者を必要としていました。

 

上限金利を低くしたことで、そんな業者たちがどんどんいなくなりました。利益が出せなくなったからです。12日にもエントリーしたばかりですが(追記はしていませんが、本エントリーと同じテーマですので、未読の方は参考にしてください)、いわゆる第3金融圏、貸付業者からも貸し出しが受けられなくなった人たちが、平均金利229%、場合によっては5200%超えの「サチェ(私的な債)」「サグミュン(私的な金融)」の世界に流れていく、それが家計債務の『弱い環』たちの現状です。

いま、上限金利を超えた分はどうなるのかと言いますと、『契約そのもの』が無効となるわけではありません。上限金利を超えた分に関してだけ、なにかの措置を取るようにしています。たとえば、超えた分は、元利金返済としてカウントしたりしています。余った分は返還請求もできます。違法金融業者に対する罰則は、3年以下、または3000万ウォン以下。

 

野党は、これを修正し、『利子の分全体について』無効にすべきだとしています。あのイ・ジェミョン氏が主張している法案の核心です。上限金利(20%)を超える分だけ無効にするのではなく、利子全体について無効とし、払った利子の分は全てを元金の返済とする、というのです。それ以外にも、いろいろ強化されています。しかし、野党内部からは、『そんなことをしたら、また同じ結果になる(サチェ、サグミュンからも相手されない人たちが増えてしまう)』という理由で、反対の声も結構出ていて、いまのところ法案が成立するかどうかは分かりません。

政府や与党からは、2つの案が動いています。一つは、ヨーロッパの一部の国のように、上限金利を市場平均金利と連動させる案です。SBSなど関連報道によると、この場合は上限金利も27.9%あたりまで上がるということですが、ただ、家計債務全体額が大きすぎで、これもまた反対の声があります。もう一つは、政府が100万ウォンまで生活費を貸し出す「貸付政府(?)」案です。これを審査するだけでものすごく手数がかかりそうですが・・しかも「延滞の有無に関係なく」とのことでして。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・最近、基準金利が急速に上がり、中~低信用者から制度圏(※合法)金融の外に流される問題が加速しています。貸付業者(※第3金融圏、ここまでは合法となります)が、高騰した調達金利とリスク管理強化のため、信用の低い人たちへの貸し出しをを縮小・中断しているからです。上限金利に近い金利で貸出を受けてきた人たちは、もう市場からはみだされている状況です。施行令を改正し、市場連動型(※上限金利を市場金利と連動させること)を導入した場合、上限金利は年27.9%内で弾力的に調整できるとみられます。

金融委は、このために市場連動型上限金利制度を採用している欧州諸国の事例などを調べています。たとえば、フランスでは、上限金利を前期の市場平均金利の133%、イタリアは市場平均金利の150%までと定義しています・・・・一方、金融委はサグミュンに集まる脆弱層を保護する案も検討中です。金融委は来年、庶民金融振興院を通じて、100万ウォン限度内で緊急生計費などを貸し出すなどの政策で、庶民金融を拡大する予定です。サグミュンを利用するおそれのある層を対象に、延滞の有無を問わず、少額を貸し出す政策になる見通しです(SBS)・・>>

 

声を出して「いや、そういう問題じゃない」と言いたくなりますが・・ついに貸付業者ならず、あの文政権でもやらなかった『貸付政府』を目指す尹政権。なかなかのものです。いろいろな意味で。というか、これどういう基準でやるのでしょうか。どうやら、返済可能性はそう重視していないようですが・・対象にならなかった人たちから、また批判が出てきて、またそれに応じて政策を練って・・そうなるのでしょうか。意識して書いたわけではありませんが、一つ前の雇用率関連とまったく同じ政策にしか見えません。

 

 

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