韓国で流行っていた「ギャップ投資」とは・・「あのマンションを買ってからあなたに貸します。だから伝貰保証金を先にください」

伝貰戦隊カエセンジャー、新作です。あくまで発表内容を信じれば、の話ですが・・個人的に今回の経済・金融関連問題は、1997年(IMF期)のようにはならないけど、経済の『内部』において長く、広く、そして深く影響を残し、なかなか終わらないだろうと見ています。その中でも、貯蓄銀行など第2金融圏と、保証金を預かって家を貸す伝貰(ジョンセ)、この2つのシステムにおいては、いままで経験したことのない(懐かしいフレーズです)ほどの限界が訪れるのではないでしょうか。この2つの関連情報が特にきになる所以です。

月々の支払いである「ウォルセ(月貰)」ではなく、まとまったお金を保証金として預けて家を借りるジョンセ(伝貰)システム。韓国特有のシステムですが、これはもともと『大家が入居者からお金を借りる』のバリエーションの一つです。その利子を支払わない代わりに、家を貸すわけです。だからこの保証金を家計債務の一種として(個人間取引なので別枠になるでしょうけど)統計を作って管理すべきだという指摘もありますが、公式集計はありません。800兆ウォンとも、1000兆ウォンとも言われています。

 

さて、問題は、この保証金は入居者が出ていくときに(普通は2年契約です)返さないとならないわけですが、普通は大家がこれを使ってしまい、新しい入居者から保証金をまた預からないと、前の入居者の分を返すことができない、そんな状態になったりします。去年12月22日にも伝貰関連エントリーがありましたが、韓国銀行の分析として、「去年末から伝貰価格(保証金の金額)が10%下落するだけでも、大家の11%は、新しく金融機関からローンを受けないかぎり、入居者に保証金を返すことができなくなる」との予測を出しました。

これはこれで興味深いデータでしたが、家の価格と連動するのが一般的なので、去年末データ比で10%ならすでに下落しているだろうし、ここでいう「ローンを受けて用意する」というのは、全額ではなく、「下落分(10%分)」のことです。どうも『実際の場合』、すなわち「(下落分だけでなく)保証金全額をすでにどこかに使った」という部分がかけている、そんな気がしました。そこで、中央日報が、「保証金はどこかに使った」を前提にしての調査を行いました。同じ面積の物件で最近3ヶ月の伝貰保証金相場を調べ、それが契約当時(2021年データ)より値下がりしていると、『新しい入居者からもらって、前の入居者に返す』ができなくなるんじゃね? という心の曇った発想の調査です。

 

記事は、「今年に契約満期になるソウル市の伝貰」と確認できる13万2,017世帯の件においてこのようなやり方で調べたところ、37,774世帯、すなわち28.6%が「保証金が返せない」と集計されました。先のデータより、ずいぶんと増えています。特に、もうレギュラー出演している「ヨンクル」ですが、他人からもらった伝貰保証金を利用して家を購入するヨンクルのバリエーション、『ギャップ投資』もまたこの問題に関わっています。

たとえば、5億ウォンのマンションを購入するとします。でも2億ウォンしか用意できません。そのとき、(まだ家は買ってないけど)「この家、3億ウォンで伝貰に出します」とし、希望する入居者から3億ウォンの保証金をもらいます。それを合わせて、5億ウォンで家を買います。これをギャップ投資といいます。彼らの場合、伝貰保証金が下がると、返すことは不可能だと言われています。以下、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・ソウル西大門区のあるマンションに伝貰で暮らす40代オ某さんは、契約満了日を3ヶ月余り控えて、悩みが多い。オ氏は2021年に6億ウォン台で伝貰契約を結んだが、最近は相場が4億ウォン台まで下がった。オ氏は「大家が2億ウォンほどを追加で用意しなければ保証金を返してもらうことができないのに、大家はそんな余力がないという」と話した。実際、4日、中央日報が国土交通部のシステムを通じて今年伝貰満期のソウルのマンション13万2017件を全数調査した結果、このような経験をする可能性があるのは3万7774世帯(28.6%)だった(※2021年データ)。

2021年の伝貰契約当時の保証金が、最近3ヶ月以内に同一面積で契約された伝貰保証金の最高額より、高いか、同じ契約件を集計したものだ。 最近3ヶ月以内に契約がないため、相場を測定するのが難しい2万4542件は除外しているが、最近の下落傾向を考慮すると、4万件を超えると推算される。また、今後も伝貰が10%下落したら、全体の39.6%である5万2,251世帯まで増える。

 

特に、2021年に「ギャップ投資(投資目的で伝貰保証金まで含めてマンションを買うこと)」に乗り出した、いわゆるヨンクルは、保証金がまともに返済できない可能性が高い。実際、西大門区(35.3%)、城北区(35.2%)、金泉区(32.9%)などヨンクルの買収が相対的に活発だったソウル外郭地域で、このような割合が高かった。ある不動産業界の関係者は、「文字通りヨンクル(※全てをかき集める)したから、保証金を返すために追加でお金を用意するのは、ほとんど不可能な状況」と説明した。専門家たちは、このような状態の大家は、急いで家を処分する可能性も大きく、相場より低い価格で売りに出すと予想している。 ソ・ジンヒョン京仁女子大学MDビジネス学科教授は、「住宅価格の急落のスイッチとして作用する可能性がある」と指摘した(中央日報)・・>>

理想と現実のギャップばかりが広がっていく、といったところでしょうか。ギャップ投資なだけに。こんなものが広がれば広がるほど、金融機関はリスク回避のための措置を取るでしょうし、それは「本当に困っている人たち」を制度圏(合法)の外側においだしてしまう・・そう思うと、単に個人だけの問題だろうか、そんな気もします。

 

 

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