韓国の大手銀行5社、信用が低いとされる人たちの口座を1年間で28.9%も無くす・・『ノンバンクに行け』という意味

いままで、『民間の債務によって支えられてきた経済の現状』をお伝えしてきましたが・・そこには一つ、「多くの人が、銀行(第1金融圏)からローンが組めなくなって、ノンバンク枠に『流され』つつある」という前提が必要です。第1金融って初耳だという方々のために簡単に説明いたしますと、韓国には第1・題2・題3金融圏というものがあります。第1金融圏は、普通の銀行です。あと、農協中央会も第1です。第2金融圏は、貯蓄銀行、信用協同組合、単位農協などのことで、銀行と同じ仕組みではありますが、実はノンバンクです(貯蓄銀行の場合、銀行と書いてあるのに銀行ではありません)。第3は貸付業者のことです。他に種類が無いので、各メディアは第3金融圏ではなく普通に「貸付業者」と書きます。

第2は、第1より金利は高いけど、貸し出しが受けられるハードルが低めです。第3は、第2より金利が高く、ハードルは低いです。それでも借りられなかったら、違法金融業者のところにいくしかないでしょう。いま『A社から借りてB社のローンを返済する』、韓国で言う『回して防ぐ』状態の家計債務問題。もっとも重い部分は、各金融機関のリスク管理です。すなわち、金利引き上げなどで、元利金の回収などにリスキが生じ、『ハードルを上げる』しかなくなったわけです。だから、第1金融圏を利用できなくなった人が増えて、言い換えれば第2金融圏においだされる人が増えて、同じく第2金融圏を利用できなくなった人たちが増えて、第3を利用するしかない人たちが増えます。

 

しかし、もはや上限金利(20%)では利益が出せなくなって、第3は事実上の『新規貸出停止』状態で、第2もものすごく慎重になっている、いままで紹介してきた家計債務問題の核心は、そこにあります。同じ理由で、カードローンの限度額が減り(これもカード会社のリスク管理です)、金利20%ギリギリのキャッシングサービスやリボルビングだけが増えていくという、そんな内容もエントリーしました。ここで、『第1金融圏(普通の銀行)』は、信用が低い(リスクが高い)とされる人たちを、どれぐらい『カット』したのかというのが、重要になってきます。

範囲はかなり絞られていますが、それに関するデータがあったので、今日、紹介したいと思います。『信用が低く、担保無し(信用ローン)』、ここでいう信用が低いというのは、ソース記事によると、ナイス信用評価会社という会社の基準で664点以下のことです。韓国には、誰にも「信用点数(旧・信用等級)」というものが付いています。延滞したりすると、点数が下がります。1点から1000点まであって、点数が低いと、金融取引で不利な条件(金利が高くなる、など)になったり、取り引きそのものが制限されることもあります。664点となると、高くはないけど、そこまで低いというわけでもありませんが・・とにかく、ニューシースなど複数のメディアの記事によると、韓国で5大銀行とされる5行の大手銀行が、彼ら664点以下+担保なしの人たちの口座の28.9%を無くしたことが分かりました(2022年1月~10月、2021年同期比)。

 

数で見ると、そこまで多くありません。口座数で12,931個から9,189個になりました。さすがに範囲が絞られているし、これぐらいの点数で5大銀行でローンが組める人が、そう多いわけではないからです(多分、ローンを受けた時点では今より点数が高かったのではないか、と思われます)。しかし、%で見ると、尋常ではないことが分かります。それに、10月までとなると、中央銀行の金利引き上げの中でもっとも話題になった10月(0.5%p)、11月(0.25%p)の引き上げ分は、まだ反映されていないと見るべきでしょう。日本で言う普通口座のようなものなら、わざわざ口座そのものを無くす必要があるのでしょうか。これは、ローンなどの取り引きに使われていた口座のことだと思われます(これは私見です)。もっとも分かりやすいのは、「銀行側が、満期延長に応じなかった」ではないでしょうか。『5大』以外の他の銀行と、ネットバンクまで全部含めても、同じ基準で17.4%の口座が消えました。こちらは中央日報(1月10日)の記事によると、全体で見ると「金額では23兆3千億ウォンから19兆5千億ウォンに16.1%減少」、とも。

 

さて、彼らはどこへ行ったのでしょうか。これからの取り引きという意味でもそうですが、もし、ローンの満期延長ができなかったなら、返済のためにどこでお金を用意したのでしょうか。第2金融圏に「1ランク」下がったか、第3金融圏まで行ったのか。それとも、そこを超えた世界に行ったのか。この流れをちゃんと把握することは、家計債務問題をちゃんと見つめるために必要だと思われますが・・なぜか、関連したデータがなかなか出てきません。経済活動人口が約2800万人なのに、公式に確認された多重債務者(3ヶ所以上の金融機関からお金を借りた人)だけで452万人。また私見ですが、同じ流れが第2金融圏でも起きているでしょうし、第3金融圏ではすでに「事実上、新規貸出は無し」というニュースがありました。

にも関わらず、『流された』人たちがどれぐらいいるのか、関連した数値はなかなか目につきません。最近もハウスプア(マンションを買って、その元利金の返済に困っている人たち)についての記事は無数に出ていますが、「実際に住宅を購入した人たちは、所得のどれぐらいを返済に使っているのか」に関するデータは公式には出ておらず、クッキーニュースというメディアが独自に「約60%を使っている」と分析した記事だけです。これは、個人的に、家計債務関連で『知りたかったデータ』だと思っています。去年12月26日にエントリーしましたので、未読の方はお読みください。多くの記事を読んでいるので、私が混乱しているだけかもしれませんが、なんというか、『かゆいところに手が届く』データは、なかなか目につかない、そう思う今日この頃です。ちなみに、中央銀行総裁は、公式ブログで「家計の債務(返済)能力はそこまで下がっていない」と主張し、13日にまた金利引き上げがあるのではないか、と予想されています。

 

 

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