韓国中央銀行、物価上昇率5%台の中で基準金利を「現状維持」・・総裁は「道路に霧が濃すぎで、とりあえず車を停めただけです」と意味深な発言

約1年半の間、7回も連続で金利を引き上げてきた韓国銀行(中央銀行)が、ついに金利を現状維持しました。3.5%です。中央銀行総裁は「今年末、物価上昇が3%台まで下がるなら、金利を引き上げる必要は無いだろう」「景気のために物価を放置したわけではない」としながらも、「金利引き上げの基調が終わったとは考えないでほしい」「運転中に、霧が濃すぎで、いったん車を停めただけ」とも発言しました。金利引き上げが終わったという予想を、強く牽制しているニュアンスです。

これについては各メディアがいろいろ見解を出していますが、家計財務の返済負担を考えてのものだと肯定的に報じるところもありますが、国民日報などは「いま物価上昇率が5%だが、本当にこれが3%まで下がるのか」、「(総裁は景気のために物価をほうっておいたわけではないとしているが)そこまで言いながら金利を引き上げなかったのは、その分、景気沈滞が問題になっているという意味ではないのか」と見ています。また、18日にお伝えしましたが、大統領自ら『銀行は公共財』『銀行がお金パーティーをやっている』などと発言したことと、無関係ではないでしょう。以下、各紙、<<~>>が引用部分となります。

 

<<・・基準金利の引き上げが、1年半ぶりに止まった。 最近、輸出不振など景気鈍化が深化し、物価よりは景気浮揚を優先したのだ。しかし、「一時停止」の可能性が高い。米国中央銀行が年内に2~3回の基準金利引き上げを予告した状態であり、しかも、依然として高い5%台の物価上昇傾向を考慮すると、金利引き上げ基調は再び再現される共産が大きい。

韓国銀行金融通貨委員会(金通委)は23日、通貨政策方向決定会議を開き、現在の年3.50%の基準金利を現状維持とした。2021年8月から先月まで1年6ヶ月間続いた基準金利の引き上げが止まったのだ。基準金利連続引き上げ記録も、7回連続で止まった。韓銀は物価上昇率が来月から4%台とやや低くなり、今年末3%前半に下がる流れを予想して、現状維持を決定した。イ・チャンヨン総裁は金通委会議後の記者懇談会で、「このまま(物価の流れが)行けば、あえて金利を上げて緊縮的に行く必要がない」と説明した・・

 

・・しかし、李総裁は「今回の現状維持を、金利引き上げ基調が終わったという意味だと思わないでほしい」と強調した。また、最終金利のレベルと関連しては、「(総裁を除く金統委員6人のうち)5人は『当分3.75%の可能性を開いておかなければならない』という意見だった」と話した。緊縮基調が維持される期間を6ヶ月と予想したことについては、「6ヶ月ときまったわけではなく、物価上昇率が長期目標である2%水準に行くことが確認されれば、(引き下げ可能性を)議論するだろう」とし「それまでは時期尚早」と付け加えた・・>>

引用部分にはありませんが、総裁は「いままででもっとも不確実な状況での判断だ」「景気のために物価を犠牲にしたとか、そういうわけではない」「車を運転する際、霧が広がり過ぎで、霧が消える時を待ってから、行くか行かないか決めるべきではないか」と話しました。どうでしょうね。車を停めるにも相応の場所などを考えないとならないわけですが。とにかく、米国Fedは金利引き上げをこれからも続けるのではないかと予想されています。このままほうっておくことができるのでしょうか。

 

また、尹大統領自ら、「銀行は公共財だ」「銀行が金パーティーをやっている(荒稼ぎを楽しんでいる」と話しながら、銀行はもっともっと庶民層・脆弱層に配慮しなければならないと公言したことも、今回の金利決定の理由ではないでしょうか。前から何度も同じ趣旨を書きましたが、韓国では「返済負担が大きくなったのは銀行のせいだ」とする社会雰囲気があります。それに合わせたものにも見えます。大統領のこの発言で、ローン金利などはさっそく下がる傾向を見せています。

ただ、専門家たちの間では「福祉の領域を、金融の領域に背負わせている」という指摘も出ています。政府は「政府の問題ではなく銀行の問題で、財政を動かすのも政権ではなく銀行だ」という雰囲気を作ろうとしているけど、『福祉は政府の仕事だろうが」という反論が出ているわけです。中央銀行の今回の決定も、無関係ではないでしょう。こんな中で基準金利を上げると、いろいろカオスになりますから(いまも十分そうですが)。

 

 

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