韓国には、「米国も中国も、韓国には強く出ることができない」とする主張があります。だから米国だけではなく、中国とも経済的な関係を強化する、いわば『経済は経済、安保は安保』的な主張です。その論拠になっているのが、半導体とバッテリーです。「超技術格差」などの言葉が、セットで出てきたりします。韓国の技術力が無いとグローバルサプライチェーン再編などできないから、経済安保ではなく、『経済は経済、安保は安保』として別々に見ても問題ない、と。
しかし、反論もあります。半導体においての中韓関係が、すでにそういうものではない、というのです。本ブログでもよくエントリーしていますが、半導体は中国と複雑に絡み合っている構造なので、これで米国と中国両方との関係を維持していくというのは、経済安保という側面からはありえない、そもそも経済安保とは、経済と安保を別々に捉える概念ではない、という内容です。個人的に「同盟という義理だけで動くわけにはいかない」とした韓国半導体企業関係者の話は、とても印象的でした。脱中国と簡単に言うけど、もうそんな段階ではない、という趣旨でした。
しかし、最近、「あれ、ひょっとしてバッテリーも同じじゃない?」という記事が目立つようになりました。代表的に取り上げられるのが、韓国の主要輸出品目である正極材(韓国では陽極材と言います)です。陽極材輸出は最近、毎年7割を超える増加率で、今年も上半気だけで58億ドルの貿易黒字を出しました。しかし、聯合ニュースによると、その88%である51億ドルが、中国側に原材料代金などで流れていった、とのことでして。バッテリー全般でも、中国メーカー(CATL+BYD)のシェアは50%を超えており、韓国側(サムスンSDI+LGエネルギーソリューション+SKオン)のシェアは、すでに20%台まで下がっています。2日前に「日本をベンチマークしよう」という声を紹介しましたが、その背景でもあります。しかも、これも本ブログで2~3回取り上げましたが、最近、中国と韓国のバッテリー企業の合作企業が相次いでいます。米国のインフレ抑制法を迂回するための中国の動きに、韓国企業が参加する形になっています。こういう現象も、結局は半導体と同じく『共同体』になるだけではないのか、という指摘も出ています。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・韓国貿易協会が5日に出した「米国インフレ抑制法(IRA)施行指針が韓国のバッテリーサプライチェーンに及ぼす影響」報告書によると、今年上半期、韓国の二次電池正極材輸出額が74億9千万ドルで昨年同期より66%増加したと明らかにした。韓国の正極材輸出は2019~2022年、平均77.7%急増した・・・・しかし、輸出が増えるほど原料となるリチウムと前駆体輸入が増加する貿易構造が定着し、リチウムと前駆体輸入の大部分を依存する中国に対する貿易収支も低下している。今年上半期のリチウムと前駆体貿易赤字はそれぞれ50億9千万ドル、21億7000万ドルだった。 対中国貿易赤字はそれぞれ30億ドル、21億1000万ドルに達した。リチウム貿易赤字の59%、前駆体貿易赤字の97%が中国から出た。上半期正極材輸出で58億1000万ドルの貿易黒字を出しているが、その約88%に相当する51億1千万ドルがリチウムや前駆体など原料化合物を投入した中国へ流れたわけだ(聯合ニュース)・・>>
複数のメディアによると、最近数ヶ月で発表されたものだけで、中韓バッテリー合作が相次いで発表されており、その金額は5兆ウォン(約5000億円)を超えています。韓国バッテリー業界の大手であるLGエネルギーソリューション、SK・オン、サムスンSDIの全てが含まれています。韓国バッテリー企業のシェアは、一般的にこの3社の合計シェアで推定します。聯合ニュース(先のとは別記事です)によると、2年前まで30%を超えていましたが、今年上半気には23.8%まで低下しました。中国のCATLとBYDの合計シェアは52.5%まで上がっています。中国側との合作で原材料をサプライチェーンを安定させることで、状況が好転できると思っているようですが・・これもまた、『構造的な』絡み合いを強めるだけでしょう。
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