韓国で「未分譲住宅の数が減少している」カラクリ

他の国でもそうですが、特に韓国では様々な社会問題に関わっている、というかその中心にある、マンション価格。住宅、韓国の場合はほとんどマンションですが、全体統計においてその「未分譲」物件が多すぎるのは、他の国でも問題になるでしょう。でも、未分譲が少し増えたことで、いちいちニュースになったりはしません。でも、韓国では未分譲物件はいつも結構な話題になります。前にも紹介したことがありますが、韓国ではマンションを買うと、「値上がりするに決まっている」ので、すべての問題がそこで解決されたことになります。約束された勝利のなんとかです。だから、人が集まるし、まず抽選で選ばれないと、マンションを買うことすらできません。こういうのを「請約」と言います。

買う権利を与えよう、といったところです。この請約で当選し、分譲権(買える権利)が手に入ると、これだけをプレミアム付きで取引する人も少なくありません。だから、ある程度のマンション団地で未分譲が発生するというのは異例であり、『人気がない』という意味になってしまいます。今回、ファイナンシャルニュースが未分譲物件の数に関する記事を載せましたが、その内容によると、「現在、未分譲住宅は約6万戸とされているが、実は10万を軽く超えており、分譲取り消しまで含めると、事実上の未分譲はもっと多くなる」とのことです。なぜ政府統計では6万なのに、実際は10万を軽く超えると言うのか。その理由として、記事には概ね2つが書いてあります。まず<<~>>で引用してみます。

 

<<・・全国の未分譲住宅10万世帯説が、浮上してきた。噂になることを懸念した建設会社が、自発的申告をせず、跳ね上がる工事費によって分譲の取り消しも増えているが、未分譲統計にはカウントされないからだ。このため、政府が集計した6万戸を超え、すでに10万以上に進入したという分析が出ている。自治体に未分譲申告をちゃんとしない事例は全国的に少なくなく、義務化などで統計数値の信頼性を高めるべきだという指摘が起きている。22日、業界によると、未分譲統計の正確性を高めるために、自治体は大騒ぎだ。実際、大邱市の関係者は、「契約日が過ぎれば該当事業主体に未分譲かどうかを直接確認している」と話した。他の全国自治体の雰囲気はあまり変わらない。ただし、建設会社がありのままに話さなくても、自治体が確認する方法はない(ファイナンシャルニュース)・・>>

 

引用部分にも書いてありますが、まる一つ目の理由。「『人気がない』と思われる可能性があるので、そもそも未分譲物件として資料を提出しない」からです。政府は自発的にデータ提出を受けてそれを管理していますので、不動産会社(プロジェクト総括の施行社、または建設を担当する施工社など)がデータを隠すと、それを明らかにする方法はありません。もう一つは、建設景気がいままでとは比べものにならないほど賃貸しているので、分譲を取り消す件が増えているからです。

どういうことかというと、現在工事中のAマンション団地があるとします。記事に書いてある実例で、慶尚北道の745世帯の団地です。でも、実際に分譲をしてみたところ、721世帯分が売れませんでした。だから、売れた分はすべて契約を取り消し、分譲そのものを取り消しました。工事を続けながら(記事には明記されていませんが、ローンなどがあるため、いまさらやめることもできないのでしょう)、不動産景気の回復を待って、再分譲を試みるとのことです。この場合、取り消しされたため、721世帯分の未分譲は、集計されません。

 

まず、いま韓国の未分譲物件がどれくらいあるのか。未分譲マンションは2月時点で6万4800戸とされています。なんと、2023年12月よりは増えましたが、2022年12月(68000)よりは減少しました。サブプライムのときには未分譲マンションは約16万5000戸で、当時の李明博政権が未分譲マンションを買い取って賃貸住宅として利用したりしました。このデータをもとに、「まだ大丈夫だ」とする主張も出ています。しかし、先の「資料を提出しない」を含めると現状でも10万は軽く超えるし、「取り消し」まで考えるとさらに増えるだろう、というのが今回の記事の趣旨です。実際、業界関係者たちがそう話している、とも。

もう一つ、未分譲が減ったのは、未分譲にカウントされるほど工事が進められていない場合が多い(すなわち、『土地』だけの状態が多い)からだ、という指摘もあります(これはソース記事の内容ではなく、3月17日CBSノーカットニュースの内容です)。未分譲が減っているのにプロジェクト・ファイナンス関連ローンが大幅に増加したというのは、『未分譲にカウントされるまでマンションを作ることもできないでいる』という意味だ、というのです。PFというのは、最初はブリッジローンとされる高金利・短期融資で資金を用意し、工事が始まってから、それよりは少し金利が低く、期間も長い、いわゆる「本PFローン」の乗り換えます(それでも金利は高いですが、ブリッジローンに比べると安い)。

 

しかし、最近はブリッジローン状態から工事もできず、本当になんとかして利子だけ返済しているところが多すぎで、未分譲にカウントされるほどのマンションを作ることすらできないでいる、と。不動産仲介業者イグァンス氏は、これを「分譲すらもできない土地の状態のまま、ただPFに縛られている」と話しています。いつも書いていることですが、これでまた急に何かが変わるとは思えません。でも、こういう話が多すぎます。なにかあればすぐ「◯月危機説」というのが出てきますし。記事内容もそうですが、ある意味、市場の信頼の問題でしょう。思えば、この前も金融機関の「エバーグリーン(実は回収可能性が高くないのに、満期延長や新規ローンを繰り返すことで、データ上では返済に何の問題もないように見せること)」を取り上げましたが、それも同じものではないでしょうか。

 

 

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