韓国の半導体事業の最大の問題は、電力不足か・・海上風力発電は目標値の100分の1にとどまる

いつもよりちょっと長めですが、ご理解願います。韓国電力公社。KEPCOともいいます。韓国最大の公企業で、事実上、唯一の電力会社です。詳しくは唯一の送電(配電)会社。発電部門は6社の子会社に分割となりましたが、配電部門においてはいまだ1社体制で、価格入札制度(PBP)すら未定のまま、すなわち価格競争が存在しません。ご存知、公社は売れば売るほど赤字になる価格で電気を供給、家庭にも各企業にも、事実上の「経済政策」または「補助金」のような存在でしたが、赤字も累積し、債務は200兆ウォンを超えるようになりました。これは、単に一企業の赤字というわけでもありません。

赤字をなんとかするため、政府保証付き債券を大量に売り、他の企業の債券が売れなくなり、多くの企業の現金流動性に問題をおこしています。一般的に韓電債(ハンジョンチェ)と呼ばれ、一部のメディアは債券市場のブラックホールとしています。最近はちょっと控えめになりましたが、今年になってから韓国では半導体市場に関する記事が大幅に増え、その多くは「日本、米国、台湾の半導体協力・サプライチェーン再編」についてのものでした。チップ4(のはず)なのに、どうみても3カ国中心でできているし、韓国が参加したところで、詳しくどういう役割を果たすことになるのか、なかなか見えない、そんな内容でした。

 

税収不足により、日本、米国、EUのような補助金などは出すことができません。財政関連で最近話題になっているのが、各自治体に「公務員の給料も払えない」ところが増えてきたというニュースです。韓国は他の国に比べて「国税」に比べ、「地方税」が少ないのが特徴です。日本の場合は税金において地方税の比率が全体平均で35~40%あたりですが、韓国は20~25%、現在約23%にしかなりません。243個ある自治体のうち、地方税だけでは公務員の人件費も払えない自治体が104箇所もあります。少子化や高齢化も理由だと言われていますが、韓国経済(24日)によると、中央政府の支援だけ頼りにして、地方政府は何かのバラマキ政策ばかり出していて、中央政府が支援したところで財政に余裕はなく、さらに支援が必要になる」、とのことでして。適当な仕事で高齢者雇用ばかり増やしている政府も大差ないでしょうけど。法人税や不動産関連の税収はどんどん減っており、少子化や高齢化のための支援も増やさないといけない状況。しかも、巨大な野党の存在。半導体支援が簡単に成立するはずもありません。

 

ユン大統領は(ほとんどは民間資金で)620兆ウォン規模の半導体メガクラスター政策を発表したものの、まっさきに『電力、どうしますか』という専門家の指摘が出てきたのも、こういう背景があるわけです。また、送電網を増設しようとしても、住民たちが「都市開発による不動産価格急騰」と同じレベルの補償を主張したり、野党が反対したり、様々な理由が出ています。ある意味、韓国半導体産業の最大の問題は、日米台協力でも中国の技術発展でもなく、自国の電力問題である、とも言えるでしょう。朝鮮日報は「200兆ウォン債務の企業の、送電網を2万km増やすという夢(21日)」という題の記事を載せ、東亜日報(週間東亜、25日)は「電気が無いので622兆ウォンのクラスターも回せない」という記事を載せるなど、最近になってまた関連記事が増えてきました。「やはり、結局は送電事業も民営化して、実際に1社体制をやめるしかない」との話が出てきますが・その案には、巨大野党が反対しています。SBS(SBSBiz、5月20日)によると、『電気料金が高くなる』という理由です。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・東の方の海岸には石炭発電所が8つある。ただ、電気生産ができないでいる。送電網が足りないからだ。海岸の石炭・原子力発電所団地で生産する電気を首都圏に運ぶ高圧直流送電線は、もともと完工目標時点が2021年だったが、2026年に延期された・・・・問題はその補償規模だが、土地という財産を見る住民の視点が変わった。公共事業補償は公示地価、実取引価、鑑定家など法的根拠のある公的基準で行われる。一方、住民たちは土地の潜在価値を見る。どこかで産業団地ができ、どこかで新都市ができ、大当たりした、そんな話を聞いてくる。送電鉄塔が入ったら、そのような期待はできなくなる。公社が出す補償レベルに満足するはずがない・・

・・文政権は、太陽光・風力の拡張初期段階だから、数年間は問題ないと思ったのだろう。目標はかっこよく立てておいて、長期的履行方案は考えてなかったのだ。文在寅政権は海上風力を2030年までに12GW(標準原発12基設備容量)まで拡充するという意欲的な目標も掲げた。文大統領は2021年2月、シンアン海上風力投資協約式に参加し、「本当に胸がおどるプロジェクト」とし、発電機を1000基建てて、世界最大の海上風力団地を建てるとした。しかし、現在稼動中の全国の海上風力は、その目標値の1%水準にとどまっている。10%ではない。1%だ(朝鮮日報)・・>>

 

<<・・京畿南部半導体メガクラスター造成のため、2047年までにサムスン電子、SKハイニックスなど民間企業が投入する資金規模は622兆ウォンだ。最近、半導体クラスターの電力需給問題がまた話題で、このように莫大な資金を投資しても、今後完工された生産施設の稼働ができなくなる可能性もあるとされている。半導体クラスターが必要とする大規模の電力を充当するには、海岸など地域から電気を引き寄せなければならないが、送・配電網をはじめとする電力インフラがとても不足しているという指摘だ・・

・・専門家は、半導体クラスターの電力供給問題に政府がより積極的に対応する必要があると強調している。イジョンファン・サンミョン大学システム半導体工学科教授は「米国、台湾などでは補助金を注ぎ、電力インフラ構築を支援して海外半導体企業を誘致している」とし「一方、私たちは韓電が企業に『収益者負担原則』を出している。送・配電システム構築費用を、企業に負担させる状況だ」と話した。教授は引き続き「半導体で基本中の基本である電力問題を、今になって議論することそのものが問題なのに、ここに全面的支援もないなら、国内企業はもちろん、海外企業も(造成される半導体クラスターを)選択する理由がなくなる」とし「半導体産業成長に関する政府の意志が重要な時点」と付け加えた(週間東亜)・・>>

 

記事によると、サムスン電子の社長出身の国会議員が、半導体で勝つためには「イン・ス・ジョンが必要だ」と話したそうです。人(イン)、水(ス)、電(ジョン)です。人材、水源、電力。いままでは、半導体関連学科は超人気コースで、いつも特例入学(優秀な人は入試無しで入学できる)枠だけで競争率がすごかったものの、最近は優秀な人材が「医師王におれはなる」と医科大学ばかり目指し、半導体関連は特例入学関連の枠が未達になっているというニュースもありました。確か、本ブログでも紹介したことがあります。水はあるのかどうかわかりませんが。

 

 

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