日本でも同じ話が出ていた気もしますが、韓国でも「とにかく安く」路線が活発で、しかも、早くもそれが「このままだとうまくいかない」と指摘されるようになりました。一例として、韓国では、いわゆるEコマース・・簡単に言えばオンラインショッピングサイトなどのことですが、その市場でTEMUやSHEINなど中国勢がまさに躍進を続けています。各メディアが書く記事からは、「国内市場が焦土化された」などの表現がよく見られます。低価格がメインですが、どうやらそれが海外では「もうピーク過ぎたのでは」と思われているようです。
韓国内でも、関連した事案として、7月にはいわゆるティメップ事態がありました。同じ親会社をもつティモンとウィメップというEコマースサイトが、急に(売る側に対する)代金支払いと、(買う側に対する)返金などを中断し、大きな騒ぎになりました。8月25日韓国日報の記事によると、いまだ未精算の金額は1兆3000億ウォン、代金がもらえなかったなど、巻き込まれた会社だけで4万8000社だという発表がありました。影響はまだまだ続いており、特に最近よく報じられる自営業者問題においても、少なくない影響を及ぼすことになるでしょう。この会社が問題になったのは、親企業の資金作りのためという側面もありますが、もっと根本的な理由は、低価格競争です。割引クーポンなど、ただでさえ安く設定されている価格を、さらに無理して下げようとしたわけです。
TEMUの場合も、実は低価格路線がもうピーク過ぎではないかという指摘が出ており、8月26日(現地時間)、米国で親会社であるPDDの株価が28%以上も急落しました。で、ここでちょっと笑えなくて笑っちゃう話ですが、時差はあるものの同じ26日(こちらは日本時間)の朝、Smart FLASHの記事(日本語)によると、NHKはこの会社を「革新的」と紹介していました。クッキーニュース(8月29日)が「超低下路線の限界」とする題の記事を載せているので、合わせて紹介したいと思います。限界というのは、まだちょっと早いでしょうけど、低価格競争の「現状」と言えば、確かにそれはそうかもしれません。以下、各紙、<<~>>で引用してみます。
<<・・8月26日に放送された『おはよう日本』(NHK)の内容が注目を集めている。この日の特集では、中国企業が運営する格安通販サイト「Temu」と「SHEIN」が取り上げられ、革新的だと紹介されたのだが――この特集に、多くの批判が寄せられている。「『おはよう日本』では『中国発の“越境EC(電子取引)”の急拡大の要因と課題』と題して特集を組みました。Temuに関しては価格の安さを強調し、同社の広報コメントも紹介するなど、大絶賛でした(THE FLASH、日本語記事です)・・>>
<<・・超低価格を掲げて韓国市場で勢いに乗っていた中国イーコマースプラットフォーム(Cコマース)にもブレーキがかかった・・・・4~6月期最大実績を出した中国テムの親会社ピンドゥオドゥオ(PDD)の株価が下落した。29日、関連業界によると、PDDの株価は30%近く急落し、2022年以降最大の下落幅を示した。PDD経営陣が実績発表の場で今後の売上圧迫が避けられないとし、株価が急激に下がったのだ・・・・去る26日(現地時間)ブルームバーグ通信によると、この日PDD米国預託証書は前取引日より28.5%急落した。これは2018年ニューヨーク証券市場上場以来、1日基準で最大の下げ幅だ。業界競争が過熱さいているうえに、収益性の下落を見込んだ経営陣の発言などで、投資家の不安感が大きくなったという分析だ。PDDの売上高は971億元(約18兆ウォン)で前年比86%増加し、最大実績を収めた。しかし専門家らの推定値(約999億元)にはやや及ばなかった・・・・テムだけでなく、アリババも純利益が減るなど、中国イーコマース業界の低迷は現実化している・・
・・欧州連合(EU)は、オンラインで購入した低価格商品に対する関税の抜け穴をなくす措置を議論中だ。米国では、配送品免税基準を既存の800ドルから10ドルに下げようという提案が出た。10ドルは現在中国の配送品免税基準だ。ここに内需低迷による困難も加わっている。中国内の消費心理も凍りついた状況だ・・・・ただ、専門家はこのようなテムの下向きが長くは続かないと見込んだ。パク・スンチャン中国経営研究所所長は、「テム株価が多く下がったが、時価総合基準で見るとアリババよりテムがより多い水準」とし「株価による影響が長期的な成長に大きくはならないだろう」と話した。一方、「委託販売方式の進化などのテーマは戦略的な生存のための大きな変化を経験している。アリババやテムなど中国内のイコマース企業間の競争も激しくなるしかないだろう」と展望した(クッキーニュース)・・>>
韓国内では、まだまだ低価競争が収まる気配はありません。ただ、韓国内でもその成長については、そこまで肯定的な話は聞こえてこなくなりました。数年前まではネット先進国ならではのことだとか、商売の改革だとか結構記事になっていましたが。毎日経済(8月27日)によると、キム・ミョンジュ韓国投資証券研究員は、「国内景気が不振であり、オンラインで低価格品目を購入しようとする傾向は持続するだろう。ティモン・ウィメップ事態が間接的に消費者の信頼度に影響するだろうが、どうなるかは見守らなければわからない」としています。
本エントリーにコメントをされる方、またはコメントを読まれる方は、こちらのコメントページをご利用ください。以下、拙著のご紹介において『本の題の部分』はアマゾン・アソシエイトですので、ご注意ください。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2024年5月2日)<Z世代の闇>です。いまの韓国の20代、30代は、どのような世界観の中を生きているのか。前の世代から、なにが受け継がれたのか。そんな考察の本です。・準新刊(2023年12月21日)、<韓国の絶望、日本の希望(扶桑社新書)>も発売中です。「私たち」と「それ以外」、様々な形で出来上がった社会の壁に関する話で、特に合計出生率関連の話が多目になっています。・既刊として、<韓国人として生まれ、日本人として生きる>(2023年7月29日)も発売中です。2023年、まさに心願成就、帰化できました。その際の、自分なりの持論に関する本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。書きたいことが書けて、私は幸せ者です。それでは、またお会いできますように。最後の行まで読んでくださってありがとうございます。