韓国で相次ぐ「日韓共同体」主張・・「日韓の国民年金を通算(社会保障協定)しましょう」とも

本ブログでも何度も書いていますが、韓国では「トランプ関税」あたりから、日韓経済共同体(という趣旨)という話が盛り上がっています。日韓・日中韓FTAがどうとか、CPTPPがどうとか(これについては本当に急に記事が増えたので、近い内にもう一回取り上げることになるかもしれません)、7月にはSKグループのCEOが日韓経済共同体を作ろうと話したこともあります。それからも、日本側の専門家が「もっと交流が必要だ」という趣旨で話たりすると、「日本側でも経済共同体主張に賛成している」というふうに報じられたり、いろいろありました。

今回は、トランプ関税などを理由に日韓は「運命共同体」という表現を使いながら、どちらの国でも10年間働くと国民年金がもらえる、両国の国民年金を通算(社会保障協定を締結)すべきという記事がありました。マネートゥデイ(14日)という経済メディアで、ソース記事はシリーズ記事のその3ですが、「その1」の題は「日韓は運命共同体」です。なんか、ものすごく読みたくないというか、そんな題です。これは「社会保障協定」というものは、たとえば「他国で働いた期間」を通算(韓国語記事では合算ですが、日本年金機構の表記通りにしました)して、年金などがもらえるようにする制度です。A国に「10年働くと年金がもらえる」制度があると過程します。そこで、B国がA国にシェシェして、A国と社会保障協定を締結しました。B国で5年間働いた人がA国に渡って、それから5年間働いた場合は、A国の国民年金がもらえるように(通算で10年)する、ということになります。




日本年金機構のホームページの説明によると、「保険料の二重負担を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止)」こと、「年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を通算することにより、年金受給のために必要とされる加入期間の要件を満たしやすくする(年金加入期間の通算)」になります。日本と韓国は、この協定を締結していません。いまのところ、韓国で9年、日本で9年働いても、年金をもらうことはできなくなっている、といいます。記事は、日本は求人が難しく、韓国は求職が難しいから(求人倍率が0.3~0.4の間です)、この協定を締結したりすれば、「日韓が共にトランプ関税や少子高齢化問題などを乗り越えることができる」としています。

しかし、記事をよく読んでみると、韓国から日本へ就業する話なので、そのまま日本に滞在して年金を受け取るようになるなら、結局は日本の年金が減ることになります。さて、「他国で働く」人はいつの時代にも一定数あると思いますが(私のような変わった人生もありますし)、本当に共同体がどうとか求人とか求職とかういなら、この議論には「韓国で働く日本人就業者」と「日本で働く韓国人就業者」のデータが必要です。しかし、なぜかソース記事には、後者(約7万5千人)は書いてあるのに、前者はありません。そこで、ちょっと」調べてみましたが、6月26日アジア経済によると、「韓国で働く日本人就業者は1万人未満」「日韓経済連帯はスローガンだけで終わるのか」とのことです。




外国人就業者基準で、日本の場合は韓国人就業者が3%程度ですが、韓国の場合は日本人就業者が1%未満(グラフによると2024年9千人)。「興味を示す」人は多く、ワーキングホリデーなどで来る人たちが多いものの、それがそのまま「雇用」として定着することは多くなく、この9000人という数は5年前からまったく増えていません。外国人就業者は増えているので、日本人就業者の割合も2014年1.3%から今は1%と、むしろ減っています。なんでこの重要なデータを載せなかったのかも疑問ですが・・これだけでなく他の主張も同じで、「日本にとってどれくらいの得になるのか」という側面は見えてきません。

繰り返しになりますが人それぞれ事情はあるでしょうし、勉強目的で働きながら滞在している人だっているでしょう。「会社に必要な人材」かもしれません。でも、一人GDPで勝ったとかG8にはいるぞとか言っているのに、どうしてこうも求職のために日本に来る人が多いのでしょうか。少子化で困っているのは韓国も同じのはずですが。最近の就業データも、17万人増えたのに、「60代以上」が35万人増えたとか、そうなっていました。じゃ、60代未満の18万人はどこに行ったのか、と。以下、<<~>>で引用してみます。

 

<<・・昨年基準で日本国内の韓国人就業者数は約7万5000人だ。20年間着実に増えた。韓国より先に少子高齢化で若者が不足している日本人は深刻な「求人難」を経験している。「就職難」の韓国青年たちには突破口になることができる。問題は、韓国と日本で合計10年を働いても両国どこからも国民年金を受けられないという点だ。このような問題を解決するために韓日両国が社会保障協定を改正しなければならないと専門家らは指摘した。12日、外交部によると、政府は現在合計41カ国と社会保障協定を結んでいる。社会保障協定は、協定締結国間で異なる年金制度を調整して、両国民に恩恵を与える条約だ。この条約は大きく「保険料納付免除」と「年金加入期間通算」の2つがある。

韓日は2004年2月の「保険料納付免除」協定を締結し、翌年4月に発効した。韓国国民が日本で働くとき、日本年金に別途加入し、二重で保険料を納付する問題を防止する協定だった。当時は韓日両国民がお互いの国で就職する場合が少なかったため、これだけでも大きな進展だった。しかし以後、韓日間の人的交流が大きく増えたにもかかわらず、両国は年金加入期間を通算する協定を追加で結んでいない。韓国と日本ともに10年以上保険料を納付すれば国民年金を受けることができるが、問題は両国通算にならないという点だ。例えば、両国を行き来しながら働く労働者が韓国で9年、日本で9年働いても、両側どちらからも国民年金の恩恵を受けることができない(マネートゥデイ)・・>>

 




ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。本当にありがとうございます。<THE NEW KOREA(ザ・ニューコリア)>という1926年の本で、当時の朝鮮半島の経済・社会発展を米国の行政学者が客観的に記録した本です。著者アレン・アイルランドは、国の発展を語るには「正しいかどうか」ではなく、ただ冷静に、データからアプローチすべきだと主張し、この本を残しました。どんな記録なのか、「正しい」が乱立している今を生きる私たちに、新しい示唆するものはないのか。自分なりの注釈とともに、頑張って訳しました。リンクなどは以下のお知らせにございます。

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