公式文書がなく、日本、EUのような「ファクト・シート」も存在しないと言われている、米韓関税交渉。本ブログでも何度か取り上げましたが、例の対米投資3500億ドルのことで、韓国側は「ほとんど(発言によっては約95%)はローンと保証で、実際に金が動く(直接投資)ものではない」というスタンスを堅持しています。文書化が遅れていること、自動車関税がまだ25%のままであること(米韓FTAで0%だったので、一気に25%増えたことになります)、そして米韓首脳会談の非公開会談の後の雰囲気が異例だったという指摘などなども、これと関係があるとみるべきでしょう。
韓国側の交渉団が訪米していて、いま帰国中だそうですが、今回もこれといった進展の話は聞こえていません。そんな中、ニュース1(10日)など複数の記事によると、韓国の金容範大統領府政策室長が、「日本と同じ条件(直接投資など)ではサインしない」と公言しました。そんな条件に納得できる国民はいない、という主張です。日本と同じ条件ではサインしないと言ってるけど、重要なのは「すでに日米がそんな条件で合意し、文書化した」ことでしょう。もし米国側が韓国側の主張を受け入れるなら、それは、明らかに韓国岳に特恵を与えたことになります。「サインしない」といっても・・発表の仕方で誤魔化すことはできるかもしれませんが、さて、どこまでできるのか。日本、EUなども合意後に異見が出ていたし、その内容についての批判も強いけど、ここまで話が合わない(しかも長引く)「合意」も珍しい気がします。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・米韓両国が7月末に妥結した通商交渉の後続措置を議論するため、韓国側の実務代表団がワシントンDCで米国側と協議を終えて9日(現地時間)帰国する。今回の交渉関連省庁によると、韓国側の実務代表団は7日、ワシントンDCに到着、8日の商務部および米貿易代表部(USTR)など米国側通商当局者と会って交渉した後、9日午前に韓国行の便に乗った・・・・今回の防米日程は、7月30日に妥結した米韓関税交渉の後続措置履行のための一環だ。当時、韓国は米ドナルド・トランプ政権は、韓国にかけた相互関税と自動車及び車部品関税を25%から15%に下げる代わりに、3500億ドル規模の対米投資と1000億ドル相当の米国産エネルギー購入などを約束したことがある・・
・・しかし、当時の交渉妥結が口頭合意の水準にとどまったため、韓国は依然として輸出主力品目である自動車に対して25%の高率関税が適用されている状況だ。一方、日本は4日、米国との了解覚書(MOU)水準の貿易合意を引き出し、今月16日から15%の自動車関税を適用されることが、確定した・・・・日本が先に関税率を実質的に下げることに成功し、米国自動車市場をめぐって競争中の韓国は急を要する状況になった・・・・米国は韓国が約束した3500億ドル規模の対米投資協力ファンドと関連して、運用方式、決定構造、利益配分案などの具体的な計画を要求していることが分かった。
韓国が提案した投資パッケージは、造船分野に1500億ドル、半導体など戦略産業に2000億ドルをそれぞれ投資する方式だ。投資は直接投資(equity)とローン(loans)、保証(credit guarantees)などで構成される。韓国は直接投資は全体の5%水準としており、残りの大部分は投資プロジェクトを間接支援する保証で満たし、実質的な負担を最小化する案を提示し、米国を説得している。しかし、米国は韓国がより高い割合で自国が指定した分野に直接投資することを強く要求していると伝えられた。
また、韓国は3500億ドルのうち1500億ドルは造船業「専用」投資金に分類しているが、米国はそれすらも応じず、全額に対する裁量権を主張することが分かった。投資対象選定をめぐる異見も相当だ。米国は自国が投資対象選定に主導権を行使するという立場だが、韓国はプロジェクト事業性に基づいて投資を決定し、国内企業も参加させたいと望んでいる。投資利益帰属問題も見解差が大きい。米国は投資利益の90%を自国が保有するという立場であるが、韓国は「利益の90%を米国に再投資する」という方式だと解釈している・・
・・4日貿易合意を妥結した日本の場合、対米投資で発生する利益は、投資金がすべて回収されるまでは両国が収益を半分ずつ分けることにしているが、投資金が回収されてからは、米国が収益の90%を取る方法で合意したことが分かった・・・・金容範 大統領政策室長は9日(韓国時間)、韓国放送記者クラブ招待討論会で・・・・「私たちに提示された文案は、(日本に提示された文案と)そんなに差がない。そのまま署名していいと思っている国民は一人もいない」と言った・・・・対米投資外国企業労働者に対するビザ発行問題も解決すべき課題として浮上した中、両側が主要議題で主張が合わず、米韓間の実務交渉は膠着したまま長期化する可能性もある(ニュース1)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。