昨日もお伝えしましたが、国家間の何かの「合意」の後に、その解釈に両方から意見の差が出てくるのは、よくあることです。しかし、今回の米韓関税合意の場合、いくらなんでもその「差」が大きすぎます。3500億ドルという規模なのに、米国側はそのほとんどが直接投資に関するものだと思っているし、韓国側は「直接投資は5%だけ」としています。いくら期限ギリギリだったとはいえ、これによく合意できたものだな、としか思えません。日本やEUとは異なり、なぜファクト・シートのような文書が何もないのか、わかる気もします。この前の米韓首脳会談でも、韓国では当初「米国側からこれといった(関税合意の詳細に関する)圧力もなく、もうすぐ合意文書が作成されるだとう」と報じていました。
しかし、合意文書などはありませんでした。韓国政府はこれを「合意文書が必要ないほど良い会談だったから」としています。まだ李大統領が米国にいたとき、現地時間25日に政府スポークスマンが直接話した内容です(26日文化日報など)。そんな中、聯合ニュース、KBSなどによると、米国のハワード・ラトニック商務長官が、現地時間11日(11日に公開された)、メディアとのオンラインインタビューで韓国側に対し、「彼らも日本を見ているだろうと思う(日本が見えないのか)。なんで署名できないのか」、「協定を(関税交渉においての米国側の主張を)受け入れるか、関税を払うか、それしかない」と話しました。
ラトニック長官はまた、「李大統領がホワイトハウスに来たとき、貿易関連で私たちがなにも話さなかった。それは、彼が署名しなかったからだ」と話しました。圧力が『なかった』わけではなく、李大統領が署名しないので、そもそもその話をしなかった、ということになります。「なかった」というのは共通しているのに、ニュアンスがずいぶん異なります。特に、長官は「柔軟さを期待するな」「日本はもう署名したから、柔軟さはない(別の内容で署名できるわけではない)」と話しました。すでに似たような内容で日本が認めたので、韓国だけ別の内容にはできない、そうする理由がない、ということでしょう。また、ジョージア州工場のことに対しても、「もう本当にお願いだからちゃんとしたビザを取得してくれ。問題があるなら私に電話すればいい。適法な手続きを踏め、もう以前のようなやり方ではできない」と話し、記事内容だけで判断すると、かなり批判的でした。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・ハワード・ラトニック米商務長官が11日(現地時間)、現在膠着状態になっている米韓の関税及び貿易協定と関連して、米国と大きな枠組みで合意したとおりに受け入れるか、それとも関税を払うべきだと圧迫した。ラトニック長官はこの日、米CNBC放送インタビューで「韓国は(李在明)大統領が(ワシントンに)来たときに、署名しなかった。彼がホワイトハウスに来て、私たちが貿易について議論しなかったことを知っているだろう。それは、彼が文書に署名しなかったからだ」と話した。ラトニック長官は「私は、彼らが今、日本を見ていると思う(※初めて読んだときにはどういうことか分かりませんでしたが、『日本が署名したのが見えないのか』という意味だと思われます)。だから柔軟性はない」とし「日本は、契約書に署名した」と付け加えた。彼は「韓国は、その協定を受け入れるか、関税を払わなければならない。明確だ。関税を出すか、協定を受け入れることだ」と強調した(聯合ニュース)・・>>
<<・・ハワード・ラトニック米商務部長官は、米国当局の大規模な取り締まりによるジョージア州工場事態に関連して、韓国企業が米国に労働者を派遣するには、適切なビザを受けなければならないと促しました。ラトニック長官は、現地時間11日に公開された米オンラインメディアアクシオスとのインタビューで、「私たちは現代が工場を建てるのが好きだ。素晴らしい仕事だ」と評価しました。ただし、ラトニック長官は「彼らは労働者のために適切なビザを受けなければならない。労働ビザ(working visa)を受けなければならない」とし「彼らがしたことは、観光ビザに入って、そのまま工場で働いたものだ」と主張しました。このような発言は、中には合法的なB-1ビザ(出張などに活用される短期商用ビザ)所持者も含まれていたことを見落としたものと見られます。
ラトニック長官は「ICEがすることが、海外投資誘致業務を難しくするのではないか」という質問には、「それはない」と答えました。それと共に「私は韓国側に電話し、『頼むからちゃんとしたビザ(right visa)を受けてくれ。ビザを受け取るのに問題があれば私に電話すればいい。私がクリスティ・ノーム(国土安保部長官)に電話してきちんとしたビザを受けるのを手伝うから』と話した」と伝えました。ラトニック長官は引き続き「しかし、間違ったやり方で仕事をしないでほしい。昔のやり方でやってはいけません。トランプ大統領は、あなたがちゃんと仕事をしてほしいと願っている。労働者を連れてきたいなら、適法な手続きをすることだ。これ以上、規定を避けて通ることはできないだろう」と話しました(KBS)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。