もともと「そういう傾向」はありましたが、政治が特に「親」と「非」派に分かれたのは朴槿恵大統領の頃だったと思っています。ある政策に対して政党内で異見があるとかそういうレベルではなく、はっきり「親朴派(大統領支持派)」と「非朴派」に分かれるようになりました。それからは親尹や非尹に分かれました。これが、当時の与党(今は「国民の力」)の力をかなり弱体化させました。共に民主党にも李在明大統領(当時政党代表)に対する「非」派はかなり多かったですが、いまはほとんど声が出せずにいます。2023年、「非明」派は党の方針に逆らい、李在明代表の逮捕同意案に賛成しました。しかし、それから予想外の裁判結果により李代表が華麗にカムバック、非明派は党内で一気に力を失いました。今も、前の尹錫悦政権に比べると、与党内の「非・大統領派」の主張はほぼゼロ状態です。
ただ一つ、李大統領に対して「非」というほどではありませんが、李大統領の政策に反発する勢力があります。あまり有名な単語ではありませんが、彼らを「同盟派」と言います。米韓同盟など米韓関係の重要性があるかぎり、他の政策でもそれを考えるべきだと主張する人たちです。この前、産業部長感が「3500億ドル対米投資の場合、25%のまま4年耐えてもいいという見解があるが、金額や関税率そのものより米韓関係を考えるべき」と話したことがありますが、こういう意見が同盟派になります(※産業通商部長官が同盟派の人なのかどうかは未確認ですが、こういう意見が『そういうこと』とされるという意味です)。
同盟派の反対は、「自主派」と言います。同盟なしで自主国防が実現できる国がどれくらいあるのかを考えると、自主の反対が同盟になっている時点ですでに違和感がありますが、21日、李大統領が「外国軍隊がなければ自主国防が不可能だと考えるのは、屈従的な思考だ」、「強力な自主国防の道を開く」話してから、党内で「自主派」の声が強くなっています。大統領が在韓米軍を明らかに評価下げしながら「外国軍隊」と表現したこともそうですが、大統領になる前に彼らのことを占領軍だと言ったこともありますし。
新刊にも書きましたが、彼が本当に言いたかったのは「北朝鮮は違う(ソ連軍は解放軍だった)」でしょう。聯合ニュース(26日)などによると、金大中・盧武鉉政権で統一部長官だった丁世鉉さんが、外交安保関連セミナーで「同盟派のせいで大統領が前に進めないでいる」など、いわゆる自主派の声を強めました。2016年8月16日朝鮮日報によると、丁元長官は「(THAADを撤回するなどのことで米韓同盟が弱体化し、それが経済的な側面にまで発展した場合には)私たちは中国と組めばいい」と話したことがあります。自主派と言いつつ、中国に対してはそうでもない、といったところでしょうか。ちなみに、引用部分にもありますが、「外国軍隊がなくても自主国防できる」というのは、盧武鉉大統領の持論でもありました。この前、李大統領の「実用」は、実は盧武鉉大統領の「均衡(バランス)」と同じだと書いたことがありますが・・やはり安保領域でも、同じのようです。以下、<<~>>で引用してみます。
<<・・丁世鉉 元統一部長官が、米韓同盟を基盤とした外交路線を主張する「同盟派」を、「大統領がまったく前に進められないよう、足を引っ張っている勢力」と批判し、政府外交・安保ラインの人的改革を主張した。丁元長官はこの日、国会で開かれた外交安保統一諮問会のセミナーに諮問委員として参加し、「いわゆる同盟派が多すぎる」と述べた。元長官は「米国が望まないなら何もできないという考えを持った人々が大統領の周辺にいる。こうなると、文在寅政権シーズン2になる(※彼らの間では、文政権の南北関係の破綻は米国や日本に責任がある、ということになっています)」とし、セミナーに出席した民主党指導部などに向けて「大統領側近の改革が必要だ」とした。
金大中・盧武鉉政府で統一部を率いた丁元長官は、「金大中政権や盧武鉉政権でも、大統領周辺にいわゆる自走派があれば前に進むことができ、同盟派が大統領の至近距離にいれば何もできなかった。今もそうなっている」と考えを明らかにした。元長官のこの日の発言は、外交官出身で、いつも韓米同盟を強調してきた魏聖洛 国家安保室長を意識したものだという解釈も出ている。丁元長官は、南北関係を中心に外交・安保路線を設定しようとする「自走派」の代表的人物と挙げられる。自主派にはイ・ジョンソク国政院長、イム・ドンウォン元統一部長官、ソ・フン前国家安保室長、共に民主党パク・ジウォン議員などが挙げられる・・・・丁元長官は最近、SNSにも「国防費をこんなに多く使っているのに外国軍隊がなければ国防ができないという認識を批判していた盧武鉉大統領のことが思い浮かばれる」と書いた(聯合ニュース)・・>>
ここからはいつもの告知ですが、新刊のご紹介です。いつも、ありがとうございます。今回は、<韓国リベラルの暴走>という、李在明政権関連の本です。新政権での日韓関係について、私が思っていること、彼がいつもつけている国旗バッジの意味、韓国にとっての左派という存在、などなどを、自分自身に率直に書きました。リンクなどは以下のお知らせにございます。
・皆様のおかげで、こうして拙著のご紹介ができること、本当に誇りに思います。ありがとうございます。まず、最新刊(2025年8月30日)<韓国リベラルの暴走>です。韓国新政権のこと、日韓関係のこと、韓国において左派という存在について、などなどに関する本です。・準新刊は<THE NEW KOREA>(2025年3月2日)です。1920年代、朝鮮半島で行われた大規模な社会・経済改革の記録です。原書は1926年のものです。・既刊、<自民党と韓国>なども発売中です。岸田政権と尹政権から、関係改善という言葉が「すべての前提」になっています。本当にそうなのか、それでいいのか。そういう考察の本です。・詳しい説明は、固定エントリーをお読みください。・本当にありがとうございます。