「日本の賃金未払いは、事実上、韓国の100分の1です」・・労働専門研究員が見た、日本と韓国の賃金未払い

別に意図して「似たような案件」を連続で書いているわけではありませんが(前のエントリー書きながらデータを調べていたら、今回の記事がヒットしました)、今回は賃金未払い関連となりました。いままで、韓国の賃金未払いが最大規模になったという話は何度かしてきました。2022年6月4日の朝鮮日報の記事に載っている「2017年~2021年までの5年間の未払い賃金が7兆ウォン。同期間の日本の未払い賃金に比べると14倍規模」は、関連データの中でも特に有名です。今回は、賃金労働者の数まで考えた場合、『金額基準で、日本の100倍(詳しくは98.6倍)になります』という分析を紹介します。

もっとも重要なのは、経営者の倫理意識である、というのが今回の分析の結論です。日本の労働政策研究・研修機構というところの、オ・ハクス特任研究委員の分析で、毎日労働新聞というメディアに掲載されています。オ研究員は、「私が調査した同友会会員企業に、賃金未払いがなかった。企業経営が難しい場合、経営者は、報酬を自ら大幅に減額し、労働者の賃金を支払う」、とのことでして。記事はこのようなことを「倫理」や「責任」と表現しながら、このようなものがあってこそ、賃金未払い問題も解決に向かうだろうとしています。以下、<<~>>で引用してみます。韓国に関する部分は本ブログでも何度も取り上げているので、日本関連メインで引用してみます。

 

<<・・昨年、韓国の賃金未払いが1兆7845億ウォンで、最高額を記録した。日本の場合、2021年度の賃金未払いは約516億ウォン(52億円)で、単純計算で韓国の2.89%に過ぎない。日本の賃金労働者は6114万人で、韓国2145万人の2.85倍に達する。労働者数まで勘案すれば、韓国の賃金未払いは日本の約100倍(正確には98.6倍)だ。日本の賃金未払いのうち、賃金債権保障法により、政府が使用者に代わって当該労働者に支払った金額が36億円で、全体の69%に達する。ただ、賃金債権保障法により支払った金額が、全体の滞納賃金にすべて含まれるかどうかは確認できないという。

日本で賃金未払いが最も多かった年は2012年で277億円だった。 前年東日本大震災が起き、日本企業の経営状況が思わしくなかった影響だと見られる。その後、減少し続け、現在に至っている。賃金未払いで労働者の不利益を最小化するために労働基準法(韓国で言う勤労基準法のようなもの)を改正し、2020年4月、賃金請求権消滅期間を既存の2年から5年に延長したが、当分は3年を適用する。雇用労働部(※韓国)は、昨年、賃金未払いが前年比で大幅に増加したのは、景気要因とともに、滞納事業主義が法を守らなかった側面、社会的な寛大さ(※良い意味ではなく、そういうものが社会的に通用するという意味です)などが複合的に作用したと分析した・・

・・日本は、なぜ賃金未払いがこんなにも少ないのか。なにより、経営者の高い倫理意識が挙げられると私は思う。それを垣間見ることができる経営者団体、中小企業家同友会を紹介する。2005年から筆者が調査している中小企業家同友会は、大企業に偏った経済政策を是正し、中小企業の存立と発展、社会的地位の向上を図り、従業員の人格尊重、労使協力による生産性と生活向上を追求する ため1947年に結成した。その後、各地域で同友会が結成され、現在は47の都道府県全地域にわたって約5万の会員企業がある。同友会でバイブルのようにされる冊子がある。<中小企業労使関係見解>だ。

 

そこに最初に出てくるのは、経営者責任として「何より実際に働く労働者の生活を保障するとともに、高い士気を持って労働者の自発性が発揮される状態を確立する努力が決定的に重要だ」と明らかにしている内容だ。また、労使関係の対等性原則とともに、賃金も社会的な水準、企業の支払能力、物価動向を考慮して誠意をもって問題を解決することを周知している。筆者が調査した同友会会員企業は、賃金未払いが無かった。企業経営がうまくいかない場合、経営者の報酬を自ら大幅に減額し、労働者の賃金を支払った。また、新規会員を中心に経営指針の作成と発表を行い、その過程でなぜ経営をするのかについての自分の信念を明らかにし、同僚経営者から評価を受ける。「労働者をお金を稼ぐ道具として見るか」のように、労働者に対する考え方と態度をチェックする。そのような過程を経て経営者の責任がどれくらい重要かを悟るようになる。賃金未払いは想像もできない(毎日労働新聞)・・>>

 

日本とて、いつまでも民間の『倫理や責任』だけを強調するわけにはいかないでしょう。それ『だけ』で完全解決できる問題ではないからです。しかし、このテーマで関連エントリーをいくつも書いてきたこともあり、率直に「見事なものだな」としか言いようがありません。最後に、韓国の賃金未払い関連だと、国際新聞(5月1日)などによると、「勤労提供の対価である賃金を受けられない労働者が急増している。今年1月~3月の賃金未払いは5718億ウォンに達する。昨年同期間より40.3%上がった。上半期だけで1兆ウォン突破は見えてきたといえる。いままでで最大だった昨年の1兆7845億ウォンを上回るのも時間問題だ」、となっています。引用部分にも指摘されていますが、少なくない数のメディアが、「なにかあれば、とりあえず賃金未払いから考える経営者が多い」、「そういうのが社会的に受け入れられている」と指摘しています。明日は1日休みをいただきます。次の更新は、日曜(19日)の11時ころになります。

 

 

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