「独立国・朝鮮」という儚さ

いわゆる植民地近代化論(朝鮮は日本に併合されたおかげで近代化できたとする主張)に対し、韓国で有名な論客チン・ジュングォン氏はこのように主張しています。

<・・最近イ・ヨンフン教授が書いた「反日種族主義」が、韓日外交葛藤を背景に、10万部以上売れた。いわゆる「植民地近代化論」の提唱者である著者は、当然、反省しない日本政府に向けられた韓国人の反感を理解できていない。だから韓日紛争の原因を、韓国人、遠くはシャーマニズム信仰にまでさかのぼる韓国人の文化的DNAのせいだと主張する。この論理も、その原型は、日本の右翼のものである。現在「反日種族主義」は、日本社会で主に韓国人への人種的偏見を強化することに活用されている。

 

 

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イ・ヨンフン教授が所属する「落星台研究所」は、安秉直(アン・ビョンジク)教授が作ったものである。アン教授は「植民地の下で資本主義の発展は不可能である」とする、「植民地反封建社会論」の主唱者であった(この理論の実践的結論はもちろん反米自主化闘争である)。

しかし、日本の植民地・朝鮮でも資本主義の発展はあったし、米帝の植民地・韓国でも資本主義は飛躍的に発展した。この明白な事実の前で彼の理論は崩れてしまう。この場合は、単に「植民地の下でも資本主義的発展は可能である」と認めればいいだけのことだ。しかし、彼は反対の『極』に駆けつけ、「植民地だったからこそ、資本主義的発展が可能だった」と言い始めた。

 

 

これがいわゆる「植民地近代化論」である。近代的な技術と資本が入ってきた植民地社会だからといって発展できないはずはない。しかし、民族主義の理念に捕われた彼らは(初期の安秉直のように)、日本とアメリカが発展を阻害して、韓国が半封建社会にとどまっているという非現実的な認識を持っていた。植民地近代化論者は、民族主義史観の盲点を攻めてくる。彼らは、日本植民地時代に生産性の向上と人口増加などの発展が行われたという事実を、いくつかの資料で「実証」した後、そこから奇妙な結論に飛躍する。「日本が植民地支配を通じ、韓国の近代化に寄与した」。だからこれを認め、感謝しろということだ。

 

民族主義史観は、学問を理念に従属させた。しかし、「植民地近代化論」がその代案になれるものではない。植民地近代化論者は、朝鮮の封建的生産性と日帝下の近代生産性を比較したりする。しかし、これは正しい方法ではない。その比較が妥当になるには、独立国・朝鮮の近代化と植民地朝鮮の近代化を比較しなければならないだろう。しかし、前者はただ「仮定」としてのみ存在するので、比較では実証が不可能である。実証主義者たちに実証することができないのは、それずなわち存在しないことである。植民地近代化論者が、多くの場合、日本の植民地が朝鮮にとって祝福だったと極端な主張まで駆け上がるのは、これと関連がある・・(ソース記事:週刊東亜、外部リンクにご注意を)>

 

 

最近、韓国でよく聞く「『反日種族主義』こそが種族主義(原始的民族主義)に囚われた史観である」主張の1つです。この中から、韓国が植民地近代化論をどう思っているのかがわかってきます。「併合だったお(´・ω・`)」と言ってしまえばそこで終わるので、それ以外にします。

 

・『残された資料』による実証的アプローチを極端に恐れています。これは、前に紹介した「文化的証拠」を大事にする流れとコインの裏表みたいなものだと見てもいいでしょう。旧ブログの頃から何度も引用した記事ではありますが、京郷新聞1975年3月13日の記事「新しい民族史観の定率が急がれる」を読んでみると、ソウル大学文理学科キム・チョルジュン教授は「植民地近代化の排泄物にすぎない文献考証学者らは、歴史学を文化全体を認識するための道具ではなく、単片的な資料を考証すればいいものだと勘違いし、それを科学的な認識だと主張している」と主張しています。いまも、韓国の学者たちは「反日種族主義に反論するのは、敵に塩を送るようなものだ」というスタンスを取っています。これらは5月にエントリーしたことがあります

 

・「自力で近代化・独立国になれた朝鮮」、強いて言うなら『きれいな朝鮮』の可能性にこだわり、比較したいならそちらと比較せよ、とします。これは、『日本さえ無かったら全てがうまく行ったはずだ』とする、韓国の反日思想の中核の1つであり、分断を日本の責任だとする主張とも繋がっています。ただ、引用した記事をよく読んでみると、「きれいな朝鮮は、歴史上存在しなかったから、実証では比較が不可能だ。だから実証主義者たちにとってその『きれいな朝鮮』は存在しない」となっています。これだと、「存在しない」のが「存在しない」になってるだけなのに、なにをどうしろと言うのでしょうか。存在しないものを証明せよ、とでも言うのでしょうか。こんな態度だから「存在しない」半万年の歴史が信じられているのでしょう。

 

余談ですが、<「反日」異常事態>では、本ブログでも紹介したことがある、『相手を悪いやつだと言うと反論される負担があるから、相手は劣っているやつだと言えばいい』とする韓国社会の妙な考え方を、『卑日(日本を見下す)』と繋げて考察しています。詳しくは「紹介エントリー」を画像つきで書き直しましたので、よかったらお読みください(宣伝)。

その「相手は劣っているやつだと言え」を未来統合党にアドバイスしたのも、この論客さんです。最近、韓国で大人気です。ただ、本ブログのスタンスがいつもそうですが、この人の『全ての主張』を否定しているわけではありません。左派寄りでありながら文大統領に対して批判的な意見を出しているところなどは、自分なりに高く評価しています。

 

 

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拙著のご紹介

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・現在の最新刊「反日」異常事態(2020年9月2日発売)>ですいわゆるK防疫として表出された、韓国の反日思想の本性である『卑日(日本を見下す)』とその虚しさについて主に考察しました。詳しくは新刊紹介エントリー(いつも本ブログ入り口ページの上から2番目に固定されています)をお読みください。

・<高文脈文化 日本の行間>は、私が日本で暮らしながら感じた『日本語』に関する本です。

・<なぜ韓国人は借りたお金を返さないのか>は、韓国社会の「借りたお金を返さない」心理と日韓関係の現状の類似点を考察した本となります。

他のシンシアリーの拙著については、書籍紹介ページをご覧ください。ありがとうございます。

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