権力者への牽制か、時代遅れの『連座』文化か

ここ数日間、韓国でもっとも話題になっているのは、保守派候補尹錫悦（ユン・ソクヨル）氏の奥さん、キム某氏の電話通話内容です。いまはまだネットに大まかな内容が出回っているだけですが、今日、テレビで電話の録音ファイルが放送される予定です。

ユン候補も、共に民主党の李在明（イジェミョン）候補も、家族による問題で、支持率を落としました。尹候補は法治を、李候補は公正を強くアピールしていたので、「家族不正がこんなにあるのに、どこが『法治』で『公正』だ」という不満が表出されたわけです。

政治化や財閥など、「権力者」の家族・親族による不正問題が韓国でここまで大きな話題になるのは、単に『自分より豊かな人が羨ましいから』という浅はかな側面が強いです。でも、一面ではありますが、「法治や公正を大事にするなら、身内をかばうばかりしないで違法的な部分にちゃんと対応しろ」という声もあります。キム某氏の場合も、提起されているいくつかの疑惑の中には、違法に関わる件もあります。

それに、韓国社会の『慢性的な問題』にやられてきた人たちの怒りと見ることも出来なくはありません。血縁（親族）、地縁（故郷が同じ）、学縁（同じ学校）の3つは韓国社会で人の出世を決める超重要要因であり、実際、大統領や有名政治化の側近や親族による不正が後をたたない状態です。特に記憶に残っているのは、旧ブログのときに紹介した、李明博大統領の親族・側近の不正をまとめた記事です。記事いっぱいに広がる（？）不正の数々は、なかなか壮大でした。『ナッツ回航』など、財閥家の人が傲慢すぎる態度を取ることも、珍しいことではありませんし。

ただ、だからといって韓国社会の『家族叩き』を肯定したくはありません。まず、先入観による部分が強すぎます。金泳三（キムヨンサム）氏や李会昌（イ・フェチャン）氏の息子の兵役問題、チョ・グク氏の娘さんの学歴などがそうで、『兵役免除に違法的な部分があった』をちゃんと指摘する声ももちろんありますが、基本的には『大金持ちの子だから！』というものにすぎません。本ブログでは前から「『スプーン階級論』などは、自分自身や社会の問題への不満というより、自分の親への不満の現れだ」と書いてきましたが、韓国では『大金持ちの子供』が世界でもっとも幸せな存在だとする認識が強く、だからこそ、悪いとする先入観が強いです。彼らは悪さをするに決まっている、というか、悪さをしてくれないと困る、そんな皮肉さがあるわけです。

今回のキム某氏の録音ファイル、ネットに一部が出回っていたので読んでみましたが、『夫が大統領になったら～（新聞社名など）～は、ぶっ潰してやる』『保守は、お金もらって、誰も問題を表面化しない』など、なんか、性格の悪い人が騒いでいる感じのもので、『違法』とか、そういう感じはしませんでした。まだ放送で公開されたわけではないので言い切ることはできませんが、『ここまで話題になることか、これが』としか。まるで、詳しく何の問題かはしらないけどとりあえず弾劾しよう、とする動きにも似ています。

韓国社会の『家族不正』叩きには、権力者の暴走に対する、ある程度の牽制効果があったかもしれません。しかし、最近になってはそれ『すら』も無くなり、ただ叩くことができそうならそれでいい、そんな流れになってしまった、そうしか思えない、今日この頃です。最後に、ネットに出回っている内容には『うちの夫はバカだけど私の言うことよく聞くから捨てないでいる』もあります。これだけは尹候補のコメントが気になるところです。いつも思いますが、うまく書けませんでした。申し訳ありません。